女優の上野樹里さんの3年ぶりの主演映画「お父さんと伊藤さん」(タナダユキ監督)が8日、公開された。上野さん演じる34歳の彩と、彩の20歳年上の恋人・伊藤さんが同居しているアパートに、彩の父親が転がり込み、3人の共同生活が始まる……という物語だ。結婚や仕事、老後など現代社会の問題を織り交ぜながら、どことなくコミカルに展開する。上野さんと、父親役を演じた藤竜也さんに映画や、理想の家族像、夫婦像など話を聞いた。
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上野さん:私と同年代の女性の方には、老いていく親たちのことについて、リアルに考えさせられるところもあり、でもそれがとても軽妙で、楽しみながら思わぬところでグッとくる映画。子供からお年寄りの方まで親しみを持って見ていただける、見る人を選ばない作品だと思います。
藤さん:今どきの重い真面目な問題を内包しつつ、楽しめるエンターテインメントになっているので、そこを買いますね。今年、僕が出た映画で一番いいね。といっても1本しか出ていないけど(笑い)。(近年出演した中でも上位に)挙げたいなあ。
藤さん:俳優って作品をたどっていくと、なんとなくその人の立ち姿が浮かぶんです。(上野さんは)いい作品に出ているし、ちょっと妖精みたいなふわっとした女性かなと思ったけど、なかなかしたたかな人でね。いい女優さんですよ。僕なんか、よみがえった化石のようなモノだから(笑い)。新しい方、才能のある方とやると、やっぱりすごく楽しいんです。
上野さん:ありがたいです。藤さんと初めてお会いして、すぐに撮り始めたんですけど、本当にスムーズに作品に入っていくことができました。コミカル過ぎず、シリアス過ぎず、いいあんばいで物語が進んだなって(思います)。藤さんじゃないお父さんだったら、もっとジトッと重い感じになっていたかもしれないですし。(自身の)年齢も含めて、この作品と出合えてよかったなと思っています。
藤さん:僕には数回、「藤さん、そこ……」ってものすごく小さなニュアンスなんだけど、ありました。監督に命を捧げるのが、現場での俺たちの仕事だから、無条件で、どうしてそうおっしゃるのかを頭の中で一生懸命考えて……。
上野さん:そこが意外で、監督の作品を見ていると、けっこうディスカッションしているのかなって(思っていました)。なにも言われないからこそ、不安になるところがあって、不安になる自分の気持ちに負けないで、堂々とありのまま、まず真っ白なスケッチブックに、思うように描いてみる。それで監督を楽しませるっていうことが今回、必要とされているお芝居でした。
そういったことも含め、(この作品では)すごく大胆にいろんなことに挑戦できたなと思います。見てくださって『一皮むけましたね』って言ってくれる方もいました。
今までは、全身に鎧(よろい)を着たピエロのようになってカメラの前に立つことはできるけど、自分としてテレビ番組とかに出るのは、裸で出ている気分になっていました。鎧を着ている方がいいんですけど、今回に関してはそうもいかないので、そこが楽しかったところでもありますね。
上野さん:みんながハッピーで、かつ最強のチームでいられたら、それが一番いいんじゃないかな。人間にはいろんな面がありますし、全部分かったうえで、家族みんながハッピーでいられたらいいなって思います。
藤さん:結婚すると家族の核ができるわけですけど、結婚はうまくいかないのが普通。
上野さん:うまくいってます!
藤さん:まだ1年生だから(笑い)。
上野さん:うふふ。
藤さん:僕はいま、僕が所属している家族をよしとしています。所有するんじゃなくて所属する。家族って結局は他人の集まりで「同志」なんだよね。リスペクトがないと絶対に続かないね。いま満足してますよ。
藤さん:ないね(笑い)。とにかく一番偉いのは私の奥様です。私は片思いをしている恋人。今でも「女房は俺のことを好きでいてくれるのかな」って内心、疑問に思うから、(妻の心を)知りたいね。女房には女性をずっと感じていて、……感じなくなりかけたときもあるけど(笑い)。いまは人という字になっちゃった。支え合っていますよ。
上野さん:お母さんが旦那さんに「あんたどいて。掃除機かけるから」みたいな描写をよく聞きますけど、私の理想は「女性は強いんだから、強く出ちゃダメ」だと思うんです。女性は強いんだから、黙っていればいいんです。
男の人が楽しそうに自分のやりたいことに没頭して、生き生きとやっているのを見るのが幸せだし、その張り合いがあるから家でも働ける。一人だったら、女の人でもきっと、男の一人暮らしと変わらない感じになっちゃう。(男の人が女性を)女の人にしてくれていると思いますね。
いいあんばいを見つけていきながら、生活を楽しみながら、この仕事を続けていけたらいいなと思っています。
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