M-1グランプリ 2025
最終決戦
12月21日(日)放送分
昨年のラグビーワールドカップ・イングランド大会では全4試合に途中出場し活躍した日和佐篤(ひわさ・あつし)選手(サントリーサンゴリアス)。過去に、“世界最高峰”といわれるフランスのプロリーグ「トップ14」のスタッド・フランセに練習生として参加した経験がある日和佐選手に、フランスラグビーや同リーグに挑戦中の五郎丸歩選手について聞いた。
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――日和佐選手は、日本では貴重な、フランスラグビーを体感した選手ですね。実際に身を置いたフランスラグビーの印象を聞かせてください。
2012年の春に、スタッド・フランセへ、練習生としてチームに参加させてもらいました。1カ月半くらいです。練習生は公式戦だけでなくリザーブグレードの試合にも出場できなかったので、参加できたのは練習だけだったのですが、フランスのラグビーの印象は、まず「フィジカルが強い」。大きい選手がどーんどーんとぶつかって、ハーフブレイクしたところでオフロードパス(タックルを受けながら放すパス)をつないでいくのが多いと感じました。
――フランスのラグビーではSH(スクラムハーフ)が特別な存在だといわれますね。
ゲームコントロールは基本的に9番(スクラムハーフ)がする。みんな、王様みたいな感じでコントロールしています。周りの選手もそれを常識として受け入れているから、SHの言うことをちゃんと聞いてくれる。SHとしてはやりやすいですね。それに、周りの選手がSHを守ってくれることも感じました。SHはどうしても、チームで一番小柄な選手であることが多いし、FWの近くでプレーすることが多いですが、密集サイドのディフェンスラインに立ったときに「どけ!」とFWの選手に引っ張られたりしました。
――ラグビーを取り巻く文化も他の国とは違うといわれます。
ホームゲームのときは、地域をあげてのお祭り騒ぎになります。駅からスタジアムまで、馬が先導してパレードをする。スタッド・ドゥ・フランスでは、8万人が入るスタンドが満員になる。試合が始まるときや良いプレーが出たときは、本当に地響きが起こりますから。僕も、本音を言えばもう少し長くいたかったですが、ちょうどエディージャパン立ち上げのときでしたからね。短い間ですが、とても良い経験ができました。
――日本人がフランスに行こうとすると、言葉を心配する声が必ず聞かれます。
僕は基本、英語でコミュニケーションを取っていました。チームの選手の半分以上はフランス語圏の選手で、彼らがフランス語をしゃべっているときはあまり分からないけれど、残りの半分弱は英語圏の選手。お互いに、完全には分からないなりに、互いに寄り添うような感じでコミュニケーションを取るという面白さがありました(笑い)。
――日和佐選手は2011年ワールドカップでフランスと対戦して、12年以降はフレンチ・バーバリアンズとも何度か対戦しています。
フランス国内では、フィジカルなチームが多いですが、その中で、バックスにスキルの高い選手がいるチームは外までボールを回す……という感じです。ボールが動き出したらゲームのスピードは上がる。でも、動き出さないと、フィジカルバトルをずっとやっている感じですね。日本代表で対戦したときは、こちらとしては早い展開に持ち込みたかったけれど、ブレイクダウンですごくプレッシャーをかけてくるから、なかなかボールを動かせなかった。その点、フレンチ・バーバリアンズは、個人個人がもっと自由にやっている感じ。昔からいわれる「シャンパンラグビー」というイメージですね。ノッてしまったら強いです(笑い)。
――そのフランスに五郎丸選手が挑戦しています。
日本選手の可能性を広げる意味でも、本当にありがたいと思います。プレースタイルも、スーパーラグビーよりもフランスの方が合っているんじゃないでしょうか。スーパーラグビーは展開の速さが特徴だけど、フランスではキックも多いし、五郎丸さんの特徴が生かせると思いますね。五郎丸さんはキックが上手だし、それは誰にも負けないと思うから、その強みを生かして勝負してほしいです。
――日和佐選手は、フランスをはじめ外国のラグビーを見ることにどんな価値を感じますか。
やっぱり、世界のラグビーのトレンドを知ることがありますね。どんなプレーをしているか、それぞれのチームはどういうことを基盤にして戦っているかが分かる。個人的には、オールブラックスのアーロン・スミスのプレーがすごく勉強になりました。パスした後のサポートの付き方がすごく上手だし、ゲームのいろいろな面をコントロールしていますから。
――日和佐選手にとってラグビーの魅力とは。
自分にとってなくてはならないものだと思っています。僕が始めたころはラグビーの人気が高かったのが、そのあとだんだん下火になって、僕が大学生のころはスタンドにお客さんが入らないのが当たり前のようになったけれど、去年のワールドカップでその流れを少しは変えられたと思う。これからもっとたくさんのお客さんに来てもらえるように、ボールを積極的に動かして、見ても面白い、やってる方も面白いラグビーをしていきたいですね。
ひわさ・あつし 1987年5月22日、兵庫県生まれ。5歳でラグビーを始め、報徳学園高校、法政大学を経て、2010年にサントリーサンゴリアスへ。10年度トップリーグ新人賞を受賞。11、12、13年度トップリーグベストフィフティーン受賞。11年4月のアジア5カ国対抗・香港戦で日本代表デビュー。12年3~4月にフランスリーグTOP14のスタッド・フランセに練習生として留学。15年ワールドカップ・イングランド大会では全4試合に途中出場、南アフリカ戦の逆転勝利を含む3勝に貢献した。ポジションはスクラムハーフ。
*……WOWOWでは、フランスのプロラグビーリーグ「トップ14」を、五郎丸選手が所属する「RCトゥーロン」の試合を中心に年間57試合放送予定。第14節の「クレルモン・オーヴェルニュvsスタッド・フランセ」はWOWOWライブで23日深夜2時45分から、「モンペリエvsRCトゥーロン」は24日午前4時55から生中継。また、第15節の「トゥールーズvsクレルモン・オーヴェルニュ」はWOWOWライブで31日深夜0時45分から、「RCトゥーロンvsラシン92」は17年1月2日午前4時半から生中継する。
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