5人組ガールズロックバンド「たんこぶちん」のボーカルのMADOKA(吉田円佳)さんが、1日に公開された映画「二度めの夏、二度と会えない君」(通称:ニドナツ、中西健二監督)のヒロイン役で演技に初挑戦した。たんこぶちんとしても劇中歌と主題歌「夏のおわりに」を担当し、劇中歌を集めたアルバム「二度めの夏、二度と会えない君 feat.Primember」を8月30日にリリースした。映画でMADOKAさんが演じるのは、不治の病を患いながらもバンドで文化祭ライブを目指す女子高生・森山燐(りん)。燐に淡い気持ちを寄せるバンドメンバーの篠原智(さとし)役を主演の村上虹郎さんが務めるほか、AKB48の加藤玲奈さんが生徒会長役で出演するなど、注目の若手キャストが名を連ねている。MADOKAさんに、初演技の心境や、共演者の村上さんや加藤さんとの撮影秘話、劇中歌と主題歌に込めた思いなどについて聞いた。
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――映画では、ヒロインの燐たちが同じ学校の先輩バンドに憧れてバンドを始めるというストーリーですが、たんこぶちんの結成のきっかけと重なる部分があるそうですね。
小学校5年生のときに一つ上の小6の先輩がガールズバンドをやっていて、校内発表で大塚愛さんの「ビー玉」といきものがかりの「ブルーバード」を演奏したんです。ステージに立っている、その姿がめっちゃキラキラして見えて、自分もそうなりたいなと思って始めました。映画の出演のお話をいただいて、すぐ原作(赤城大空さんの同名小説)を読んだんですけれど、ニドナツの世界観にすごく感動して、ストーリーを好きになって。燐ちゃんの第一印象は、病気で命がそんなに長くないということを除けば、本当に音楽が大好きで、ぶっ飛んでいて明るい女の子。私も歌うことが本当に好きで、バンドがやりたくて、というところですごく共感できたので、私なりにニドナツを好きっていう気持ちのままに(演技を)やれたらいいなと考えてました。
――実際に演じてみて、歌うことや音楽活動と比べてどうでしたか。
歌は自分の中で歌詞の内容をくみ取って、それを自分の声に乗せて伝えるということで、せりふを覚えて発することも、ライブで目の前のお客さんに向かって歌うことも同じなのかなって。暗記的なものや燐ちゃんになり切るっていうのもあったんですけれど、せりふを自分の中でくみ取って、自然に自分から発する言葉みたいな感じで相手に伝える、みたいな。だから同じような感覚でできた感じはあります。
――主演の村上虹郎さんとの共演はいかがでしたか。
虹郎くんが智くん役だって聞いた時期に、ちょうど「仰げば尊し」(TBS系)という学園モノの連続ドラマに出られていたので、それを録画して見ていたんですよ。それが、イスを窓ガラスに投げつけちゃうような不良の役で、その印象が強くて……。初めて会うときはビクビクしながら行ったんですけど、当然、そんなことはなくて(笑い)、すごく優しくて、撮影を重ねるごとに気さくに話してくれました。2人で撮るシーンのときはいい意味でふざけて盛り上げてくれたりして、私もそれでほぐれたし。2人で肉まんを食べながら(志望)大学に行ってみよう、みたいなシーンがあるんですけれど、私もそこは素に近い感じでできて楽しかったです。年は一つ下なのに落ち着いた雰囲気を放っているし、気を使ってくれるし、レディーファーストだなって。絶対モテますよね(笑い)。
――学校の生徒会長役のAKB48の加藤玲奈さんなど、同世代の女性キャストとの共演もありましたね。
一番最初に撮ったのが、私が教室で「バンドやろうよ」って(村上さんが演じる智に)言って、(加藤さんが演じる生徒)会長が「ちょっと何やってんのよ」みたいな感じで来るシーンだったんですけれど、私、本当に緊張していて「ヤバイ、ヤバイ」ってずっと言っていたんです。でも、玲奈ちゃんが「大丈夫、大丈夫」ってずっと言ってくれて、頼もしいなあって。この間、映画のプロモーションで玲奈ちゃんと会う機会があって、「緊張するんですか?」という質問が(出演者に向けて)あったんですけれど、(加藤さんは)「私、緊張しないんです」って言っていて、あんまり動じないというイメージがあります。
――今回の劇中歌集には、映画主題歌のほか、燐たちのバンド「Primember(プライメンバー)」のオリジナル、先輩バンド「Animato Animato」のコピーという設定の楽曲が収録されています。MADOKAさんが共作で作詞も手がけたPrimemberの「TIME」「グライダー」はどんな思いで歌詞を書かれたのでしょうか。
正直、楽しいことだけじゃなくて、悩むことこそ生きることじゃないですか。でも、悩んでいるときって、そのことしか考えないけれど、それを突破して自分が一つ上がれたときに振り返ったら、その悩みも肯定できるというか。それは毎回感じるし、誰にでも当てはまることかなと思うので、そこは「TIME」の歌詞に詰め込みたかった部分ではあります。「グライダー」は夏っぽいキーワードをたくさん入れたいなと思ったのと、バンドがPrimemberになっていく過程というか、「ギター歪(ひず)ませて……」とか、そういう言葉も入れていて、一番若々しい感じがする曲かなと思います。
――5曲目「蝉時雨ライダーズ」は、物語のキーとなっているメイン曲ですね。
この曲は、歌っていて一番気持ち的に苦しいですね。燐が最後の文化祭のステージで歌う歌でもあって、歌の表現としても最後まで絞り出すような感じで歌いました。文化祭のシーンでもフルで流れるんですけれど、通しで撮ったのは2回ぐらいで、1回目の撮影が終わったときに、監督さんに「次で最後だから、自分のラストステージだと思って歌ってください」って言われて、「ちょっと重いなあ」と思って。重たいけれど、そういう気持ちに自分で持っていって本番の撮影をやったんですけど、撮影の最終日でもあって、すごくこみ上げてくるものがありました。
――自身のバンド、たんこぶちんが担当した主題歌で、本編のエンディングで流れる「夏のおわりに」に関しては?
歌詞がニドナツのストーリーに沿って書かれているので、シーンをたくさん思い浮かべられる曲になっているし、キラキラもしていて、でも切ないという。燐ちゃんから智やPrimemberに向けての曲じゃないかなって解釈していて、最後まで駆け抜けたすがすがしさもちょっとある気がします。映画は、見ていて切ないなって思う部分はたくさんあるんですけれど、最終的には前向きな気持ちにストンと落ちるというか、そういう流れでこの曲が全体をキュッと締めてくれるので、すごくしっくりきます。
――演技を経験して感じたこと、音楽活動への影響はありますか。
同じ曲を歌っていても、込める気持ちの強さというか、伝える力や込める力はちょっと強くなったかなって。演技をやっていて楽しかったんですけれど、だからこそ、この映画は音楽がかかっている映画でもあったので、私はやっぱり歌うことを譲れないなと思いました。映画をたくさんの方に見ていただいて、(そこでかかっている)たんこぶちんの音楽で、その存在を知る人が増えて、そこからまた自分たちの活動につなげていけたらと思います。
<プロフィル>
1996年3月24日生まれ、佐賀県唐津市出身。5人組ガールズロックバンド「たんこぶちん」のボーカル&ギター担当。2007年、小学校6年生のときに、同級生のYURIさん(ギター)、NODOKAさん(ベース)、CHIHARUさん(キーボード)、HONOKAさん(ドラム)でたんこぶちんを結成し、13年にシングル「ドレミFUN LIFE」でメジャーデビュー。「たんこぶちん」は、バンド名を決めるときにMADOKAさんの頭にふと浮かんで口から出たワードで、「『頭を打って、よくたんこぶを作る人なの?』とかって言われるけど、全く意味はないです(笑い)」と明かした。また、MADOKAさんが初めてハマったポップカルチャーは、アニメ「アルプスの少女ハイジ」。「幼稚園のときから、おばあちゃんの家に行くと必ずビデオで見てました。パンが出てきて、いっぱい種類があるパンの画(え)がメッチャ好きだったんです。私、好きな食べ物がパンなんですよ。それがパンを好きになったきっかけなのかな……」と話した。
(インタビュー・文・撮影:水白京)
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