「この恋愛小説がすごい!」(2006年版、宝島社)の1位に選ばれた島本理生さんの恋愛小説を、松本潤さんと有村架純さんの共演で映画化した「ナラタージュ」(行定勲監督)が、7日からTOHOシネマズ日本橋(東京都中央区)ほかで公開される。高校教師と元生徒の禁断の恋愛模様を描く。複雑な思いに揺れるヒロインの切なさが、数々の雨や水のシーンからあふれ出す。
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工藤泉(有村さん)は、大学2年の春を思い出していた。演劇部顧問の葉山先生(松本さん)から、卒業公演への参加を誘う連絡が入った。高校時代、孤独から救ってくれた葉山先生を好きになった泉は、再会によって思いを募らせていく。
しかし、葉山先生には離婚が成立していない妻(市川実日子さん)がいることを知った泉は、自分に恋心を寄せる小野怜二(坂口健太郎さん)と付き合うことにしたのだが……というストーリー。
陰のある社会科教師と、孤独な教え子。似た空気をまとう2人が、再会して思いを燃やす行方に、さまざまな障害が待ち受ける。きれいごとだけではないラブストーリーが展開される中、数々の雨や水にまつわるシーンが、冗舌に2人の感情を物語る。シャワーの中でのラブシーン、泉が葉山先生と歩く穏やかな浜辺のシーン、孤独だった泉が高校の屋上にいた日、映画館で2人が偶然出会った日も雨だった。有村さんの真っすぐなまなざしと共に、先生を好きという気持ちが生きる糧になっている切実さが、薄暗い空と一緒に印象付けられる。
松本さんは、「陽だまりの彼女」(13年)以来の映画主演。行定監督からのアドバイスで目力を40%に抑え、悲哀を帯びた大人の男性を好演している。有村さんは、先生へのいちずな思いと、自分を愛してくれる男性との間で揺れ動く複雑な役どころを熱演。嫉妬(しっと)に狂い、泉を束縛する男性の悲しみを、坂口さんが繊細に演じている。ほかにも瀬戸康史さん、大西礼芳さん、古舘佑太郎さんらフレッシュな俳優陣が顔をそろえた。
劇中、ビクトル・エリセ監督の「エル・スール」(83年)、フランソワ・トリュフォー監督の「隣の女」(81年)などの名画が、泉と葉山先生の“共通言語”として登場するのも映画ファンの心をくすぐる。
原作は、島本さんが20歳で書き下ろし、第18回山本周五郎賞候補に選ばれた作品。大ヒットした「世界の中心で、愛をさけぶ」(04年)の行定監督が、約10年もの間企画を温め、「ピンクとグレー」(16年)でタッグを組んだ小川真司プロデューサーによって、映画化に漕(こ)ぎ着けた。(キョーコ/フリーライター)
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