放課後カルテ
第10話(最終話) これからも健康でいてほしい
12月21日(土)放送分
桂正和さんの名作マンガを実写化した連続ドラマ「土曜ドラマ24『電影少女 -VIDEO GIRL AI 2018-』」(テレビ東京系)が話題だ。2018年を舞台に、1990年代からタイムスリップしてきた“ビデオガール”の天野アイと高校生の弄内(もてうち)翔との奇妙な共同生活が描かれたリブート作。「ビデオガールは相手の恋を応援し、なぐさめるだけの存在」であることを前提とした、アイと翔の微妙な距離感や関係性が生み出す「切なさにハマる」という人が続出しているという。今から20年以上前に少年たちを夢中にさせた名作を、安易な実写化や、タイトルだけを借りた“別物”にすることなく、なぜ今回見事に「再起動」させることができたのか。その裏にある制作陣の“こだわり”に迫った。
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「電影少女」は、「ウイングマン」「I”s」で知られる桂さんが89~92年に「週刊少年ジャンプ」(集英社)で連載。恋に悩む高校生の弄内洋太が不思議なレンタルビデオショップで借りてきたビデオを再生すると、いきなり美少女が画面から飛び出してきて……というストーリー。
ドラマは原作から25年の時が流れていて、野村周平さん扮(ふん)する翔はマンガの主人公・洋太のおいの高校生。一方、西野七瀬さん演じるアイは壊れたデッキの中で誰かに求められるのを待っていた“時代遅れのビデオガール”という設定。オリジナルストーリーながら、原作エピソードをたくみにすくい上げて物語にちりばめているのも特徴で、「これはこれでいい」と評価するファンも多いという。
制作陣がドラマを通して最も伝えたいことは何なのか? それは原作にも描かれていた登場人物の「すれ違いの切なさ」だ。時代を現代に置き換えても揺るがない「電影少女」の核となる部分で、「切なさにハマる」というファンの声に対して、五箇公貴プロデューサーは「うまく受け取っていただけているのかなという気がしてホッとしている」と安堵(あんど)する。
「原作で『ここは切なかったな』と思うところは極力、取り入れるようにはしている」と話す五箇プロデューサー。どこか“フィルム感”のある映像にも「あの頃の切なさ」を追体験してもらおうという意図があり、映画と同じ「1秒間に24コマ」を採用。現在のテレビ的なポップさの逆を行く、しっとりとした質感が狙いで「やっぱり切ない話だから、80~90年代にマンガを読んだときに受けたあの切ない感じを、今の少年少女に置き換えることによって“普遍的”なものができるんじゃないかと思ったんです」と説明する。
では音楽はどうなのか。五箇プロデューサーが音楽監修のtofubeats(トーフビーツ)さんにオーダーしたのは「90年代のゲーム音楽っぽさ」。使用されているのは、いわゆる「チップチューン」的な8ビットサウンドで、「言い方がおしゃれじゃないんですけど、いわゆる“青春感”がある。昔の8ビット、コンピューターの音色をすごくちりばめてくれているので、それがすごい効いている。音楽の力は大きいですね」と満足そうな表情を見せていた。
ドラマの中には遊び心を感じさせるオマージュネタもある。原作マンガのコマを意識したかのようなカメラアングルがそれに該当し、アイ役の西野七瀬さんの体の一部(特に脚)を不自然にフレームインさせたシーンが毎話登場。視聴者の間で話題に上った。五箇プロデューサーは「サービスカットです」とにやり。「露骨にやりすぎると、物語や気持ちを分断しちゃうので、シーンの頭とかで入れられるうちは入れておこうと」と話す。
オマージュとは別に今回、劇中アニメのキャラクター原案を原作者の桂さんに依頼。さらに桂さんを第5話で登場させ、“アフロ正和”としてお尻を描かせてしまった。「桂先生には今回、無理を言って出ていただいたんですよ。(原作ファンが)お尻、お尻とざわついていたので“本家のお尻”を出したぞって(笑い)」と五箇プロデューサー。
また劇中に登場するアニメはシグナル・エムディが制作。同社は92年発表の「電影少女」のOVAを手掛けた西久保瑞穂監督が所属しているプロダクションI.Gと同じ「IGポートグループ」のアニメ制作会社。五箇プロデューサーも「OVAがすごく丁寧に作られていたので、アニメを入れるなら『IGさんにお願いしたい』という思いがずっとあった」とここにも、こだわりがある。今回の劇中アニメについては「朝香さんという女性アニメーターの方に中心でやっていただいたんですが、色使いとかがおしゃれで、今っぽい温度感があってすごく良かった。要所要所、大事なところで出てくるので」と明かしていた。
第6話では、アイと翔の「すれ違いの切なさ」が一気に加速。ラストではアイが路上で気を失ってしまうところが描かれた。五箇プロデューサーは「原作ではアイちゃんの命の危機として、熱が出ることと、人を好きになると透明になることの二つがあるんです。ルールとしてちょっと複雑なので、今回は人を好きになるとデッキが熱を持って、ノイズが走り、停止の危機に陥ってしまう(設定にした)。結局は人を好きになってはいけないってプログラムを埋め込まれて生まれてきた子なんですよ、アイちゃんは」としみじみ。
物語は第6話をターニングポイントに“第2章”へと突入するといい、五箇プロデューサーは「結構ファンからは賛否両論あると思いますし、否定的な意見も出るかもしれません。まあ、でもそのくらいのほうが……」と苦笑い。見どころは「原作にもあった“ある大きな物語上の設定”を使っているのと“伸子ちゃんとのくだり”へのリスペクト」で、「狭い半径の“ボーイミーツガール”の物語から、より社会的な問題、大人に翻弄(ほんろう)される少年少女たちの話になっていく」と予告する。
「切なさ」という意味も含めて、第7話以降は「怒涛(どとう)の展開になる」といい、「そもそもがこのドラマは“余命もの”の性質を持っているので、何気ない日常こそがかけがえのないものっていうところに持っていきたい」と力を込める五箇プロデューサー。終盤には原作ファンが最も気になっている部分への“一つの答え”が提示されるとのことで、ここから先もリブート版「電影少女」から目が離せなくなりそうだ。
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