永野芽郁さん主演のNHKの連続テレビ小説(朝ドラ)「半分、青い。」に朝井正人役で出演している俳優の中村倫也さん。正人は、漂う雲のようなつかみどころのない“ゆるふわ男子”で、3月まで放送されていた「ホリデイラブ」(テレビ朝日系)のモラハラ夫・井筒渡、4月から放送されている「崖っぷちホテル!」(日本テレビ系)でのギャンブル好きの料理人・江口竜二といった最近、連ドラで演じてきたキャラクターと大きく異なっている。次々と“役を着こなし、脱ぎ捨てていく”ことから「カメレオン俳優」などといわれることについて「本望」と明かす中村さんに、今回の役柄や俳優業について聞いた。
ウナギノボリ
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中村さん演じる“マアくん”こと正人は、律(佐藤健さん)の大学の同級生となる“女泣かせのゆるふわイケメン”。律にとって上京後に初めてできた友人で、ふわっとした雰囲気でつかみどころがなく、誰にでも優しい。不思議なことに絶えず複数の女性からモテ、その独特なムードに鈴愛(永野さん)もいつしか安らぎを覚えてしまう……という役どころ。12日放送の第36回で初登場すると、北海道なまりがばれないよう一文節ずつ話す、独特のまったりした話し方と、飼い猫ミレーヌを肩にちょこんと乗せた愛らしい姿で、視聴者に“マアくん”を印象づけた。
中村さんによると“マアくん”は「切実さを感じさせないのが魅力」といい、「台本のト書きにも書いてあって、なるほどなって。つかみどころのないところや謎めいたところは視聴者の興味をそそる要素になるので、そういうところをちゃんと持ちつつ、存在しなくちゃな、と。でもそれって難しいんですよね。やりすぎても、興味を引く要素が減ってしまうし。やらなすぎても、そもそも興味を引かれない。なんかね、漂う雲みたいな人で。いろいろな役をやってきましたけど、塩梅(あんばい) が一番難しい役。でもなんとかなったかな」と振り返る。
今回の“マアくん”は、「不思議なことに」と注釈が最初につくものの、立派なモテキャラでもある。中村さんは「正人が律に『女の子よりキレイな顔してモテようたって難しいよ、俺ぐらいがちょうどいいんだよ』って言っているところは面白いなと思いましたね。自分だったら、ものすごいキレイな女性がいたら(口説きに)行かないだろうし。このぐらいの中途半端な中肉中背の『クラスにいたらちょっとカッコいい』みたいなのがちょうどいい」と持論を展開。さらに「だからといって僕はモテるわけではないので、正人という役を通じてモテたらいいですね。最近は怖い役が続いたので(笑い)、これからは老若男女に『マアく~ん』って手を振ってもらえたら」と笑顔で語る。
最近の朝ドラでは、人気の男性キャラクターの出番がなくなる度にファンから惜しむ声が上がり、その都度「〇〇ロス」という言葉がSNS上などで飛び交うが、中村さんも「もし正人が登場しなくなったら、できればメディアには、起こっていなくても『正人ロス』が起こったかのように書いてほしいですね」とアピールしていた。
いまやドラマに映画、舞台にと引っ張りだこの中村さん。昨年はドラマ7本、映画に5本出演し、現在も「半分、青い。」「崖っぷちホテル!」に加え、エキセントリックな暴力団の構成員を演じた映画「孤狼(ころう)の血」(白石和彌監督)が公開中で、“ゆるふわ男子のマアくん”や“ギャンブル好きの料理人・江口”とは全く違う狂犬っぷりを披露している。
「人格的に役に引っ張られるタイプではない」という中村さんは、「役を自分と思ってはいないというか、人ごとにはしていないんですけど、演じる上で感覚的な部分、自分の人生観とリンクさせる部分と、作品の中の役割っていう意味での役というものを、割とロジカルに読み込むタイプなので。切り替えという意味ではそんなに苦労はしていないです」と役の演じ分けの一端をのぞかせる。
「半分、青い。」の制作統括・勝田夏子さんは、中村さんが出演した2005年放送の朝ドラ「風のハルカ」で演出を担当し、当時からよく知る人間として、そんな中村さんのことを「仕事師」と呼ぶ。さらに「一つ一つ役を脱ぎ捨て、別人になっていくようなイメージがある」と俳優としての特徴を語っていたが、中村さん自身も「カメレオン俳優」と呼ばれることについて「本望です」と言い切る。
「自分が18歳でデビューしたときに思ったのは、いろいろなことをやるけど、結局、実体がつかめないって思われ続けたいなということ。視聴者がずっと見てきたものは『影だった』じゃないですけど、役者として、視聴者が見る作品によって『これがハマり役だよね』っていうのが100人、100通り、十人十色みたいな意見を持ってもらえるような役者になりたいと思って、今まで仕事してきました。『半分、青い。』の正人も『これが中村倫也のハマり役』と思ってもらえるような役になったら」と思いを語っていた。
「半分、青い。」は、大ヒットドラマ「ロングバケーション」(フジテレビ系、1996年)などで知られ、“恋愛ドラマの神様”の異名も持つ北川悦吏子さんのオリジナル作品。1971年に岐阜県で生まれ、病気で左耳を失聴したヒロイン・鈴愛が、高度成長期の終わりから現代までを七転び八起きで駆け抜ける物語。NHK総合で月~土曜午前8時ほかで放送。全156回を予定。
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