俳優の木村拓哉さんが主演する映画「検察側の罪人」(原田眞人監督)が24日から公開中だ。映画は木村さん演じるエリート検事・最上と「嵐」の二宮和也さん演じる沖野のそれぞれの“正義”を巡る戦いを描いた作品で、木村さんと二宮さんの初共演も話題だ。過去の未解決殺人事件の被疑者に激しく動揺し、執着するようになる最上役を演じた木村さんに、自身にとっての“正義”や役への思い、そして信頼を寄せる二宮さんとの共演について聞いた。
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映画「検察側の罪人」は、「犯人に告ぐ」「クローズド・ノート」などの雫井脩介さんの小説が原作。東京地検を舞台に、エリート検事・最上(木村さん)と最上を師と仰ぐ若き検事・沖野(二宮さん)がある殺人事件を巡って対立し、ついには互いの“正義”を賭した戦いへと発展していく……という内容だ。
刑事部きってのエリート検事・最上を演じた木村さん。検事役は、これまでにドラマと映画の「HERO」シリーズでも演じた経験がある。ただ、木村さんは「まったくの別物なので、比較することはなかったですね」と語る。
木村さんは原作を読む前に、まずタイトルの持つ矛盾に注目した。「『検察側の罪人』という(言葉の)矛盾が、タイトルとして存在しているんですが、読んでいくと『なるほど』と理解させてくれる、厳しいストーリーが最上にはある。なるほどな、と思いました」と木村さん。「拍手は送れないけど、理解はできる。称賛はできないけど、最上のメンタルは理解できる。そういう感覚はありました」と明かす。
クールで表情を崩さない最上だが、過去の未解決事件の真相が明らかになると激しく動揺する。特に、二宮さん演じる沖野が事件の重要参考人だった松倉(酒向芳さん)を激しく取り調べる様子をイヤホンで聞いているシーンでは、それが顕著に表れる。別の場所で聞いていた最上は松倉の供述を最後まで聞くことができず、その場を離れるが、これは台本にない演技だったという。「本当は、終始最上が供述を聞いているという設定だったんですけど、(供述のひどさに)聞いていられなくなっちゃって……。それでバン! とイヤホンを外しました」と役と一体化していたことをうかがわせる。
さらに、「実は、あのシーンの撮影現場は携帯の電波が皆無だったんです。それで、(沖野と松倉の)会話を飛ばすのは無理だよね、となり、ニノ(二宮さん)が先に撮影した現場の音源を聞いて演じさせてもらったんです。取り調べの空気感が音声だけでも素晴らしく伝わってきたので、ニノに『ありがとな』とLINEしました」と撮影エピソードを明かした。
後輩・二宮さんとの初共演が話題になっている。木村さんは、二宮さんに対して「安心できる」と厚い信頼を寄せる。共演については「普段目にしている二宮は、『嵐』の一員なんですけど、『硫黄島からの手紙』や『赤めだか』『ブラックペアン』などに出演したときの二宮ならではの“瞬発力”はやっぱり実在していたんだな、ということはすごく感じました」と現場での感想を語る。
普段、後輩の出演作すべてに目を通すことはしていないという木村さんだが、二宮さんについては「今までのいろんな作品を見させてもらいました」といい、「『大丈夫かな?』と思う必要がまったくない。安心できる共演者です」と絶賛する。今作で、二宮さんと演技についてのディスカッションなどは「していないです」といい、2人が互いに信頼し合っている様子がうかがえる。
そんな2人の関係を最も近くで見続けてきた、検察事務官・橘役の吉高由里子さんについては、「逆ムードメーカー」と木村さんは評する。「張りつめている空気の中で、『たくちゃん、元気?』って言うんです。そのたびに、沖野役の俳優(二宮さん)が『お前それはねえだろ』『いい加減にしろ』って(笑い)」と楽し気に語る。吉高さんがせりふに難色を示したときも、原田監督が「じゃあその分、ニノ、頼む」と答えるなど、現場ではそんなやり取りも交わされていたといい、木村さんは「(吉高さんは現場の)柔軟剤ですよね」と表現する。
そんな和気あいあいとした雰囲気もある原田組だが、やはり熱さと厳しさもあるようで、「変化球じゃなくて、ストレートにぶつけてくれる。出演者にも、スタッフにも、言い方を変えたりせず、ストレートに言ってくれる人」と原田監督の印象を語る木村さん。作品については「ちゃんとスーツを着て、ネクタイもしっかり締めて、第1ボタンまでしっかり閉めて、髪形も整えて、言葉遣いのいい“パンク”な作品。見た目はすごくジェントルにしているけど、内容はパンクですね。伝える内容、描写も『そこを切り取るんだ』というものを切り取ってくれている。独特だし、その楽しさは原田組じゃないと味わえないと思います」と、原田組で過ごした日々を振り返る。
同作は“正義とは何か”が大きなテーマになっているが、木村さんにとっての“正義”とは? 「相手の立場になって考える、ということはあるかもしれないですね」と木村さん。「自分の『こういうことしたい』という欲に対して、(誰でも)正義や信念というもので自分を武装すると思うんです。でも、相手にしてみれば『それは結構です』ということかもしれない。(相手の立場になるということは)考えたいと、いつも思っています」と自身の“正義”観を語った。
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