故・色川武大さんが阿佐田哲也のペンネームで発表した小説「麻雀放浪記」が、俳優の斎藤工さん主演で再映画化されることが4日、明らかになった。同作が映画化されるのは、1984年に公開された和田誠監督の作品以来、35年ぶり。新作は、原作から設定を変更。「麻雀放浪記2020」と題し、主人公・坊や哲が1945年の戦後から、2020年の未来にやってくるという設定になる。
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新作は、「麻雀放浪記」を名作の一つとして絶賛する斎藤さんが、10年間、映画化を熱望し、アプローチし続けて実現。映画「彼女がその名を知らない鳥たち」「孤狼の血」などの白石和彌監督に白羽の矢を立てた。色川さんの遺族もこの“新作”に賛同を惜しまないという。
物語は、“東京五輪”が中止となった2020年の未来が舞台。人口が減少し、労働はAI(人工知能)に取って代わられ、街には失業者と老人があふれていた。“戦後”からやってきた坊や哲は世界のあまりの変わりように驚がくする。そんな時、思わぬ状況で「麻雀」での死闘が繰り広げられる……という内容。2019年4月5日に公開。
個人的な意見ですが、名画をリメークしてオリジナルを超えた作品は、はっきり言ってほとんどない。それくらい名作・傑作のハードルは高く、どれだけ戦略を練ったとしても、そんな奇跡の映画をリメークで“超える”のは至難の業である。
正直この企画に対しても、和田誠版「麻雀放浪記」ファンとして当初、いささか不安を感じました(しかも坊や哲が私とは、何ともエキセントリックなキャスティング)。しかし、いただいた佐藤佐吉さんの脚本をめくっていくと、これは本当に「麻雀放浪記?」と思うほどの鋭角的できてれつな世界観にあぜん・ぼうぜんとしながらも、気がつくと喉が渇き切るように最後のページまでめくっていました。これこそ邦画がいつの日か失った、映画の持つ自由表現の行使ではないだろうか。これこそ阿佐田哲也のスケールなのではないだろうか。
そして監督はあの白石和彌監督。私は邦画ファンとして、この台本での白石和彌×麻雀放浪記が無性に見たくて仕方なくなっていました。とんでもない作品が生まれる瞬間に立ち会えるのではなかろうか。私はかつて「明日、泣く」(内藤誠監督)という作品で阿佐田哲也さんの半生を演じさせていただいたご縁もあり、本作に身を投じさせていただこうと思いました。「麻雀放浪記 2020」は、リメークというより新装開店、リニューアルに近い、白石和彌版の「麻雀放浪記」のすさまじい世界に酔いしれていただきたく思います。
今や映画のオピニオンである斎藤工さんが名作のうちの一つと公言している「麻雀放浪記」の新たな映画化のご指名をいただいた時、率直に無理だと思いました。どんなに努力したところで和田誠監督の名作を超えることなんて不可能だからです。
あの手この手で断り方を考えているうちに、プロデューサーからポロっと出たアイデアが坊や哲が2020年に来たら……。最初は半笑いでしたが、これはもしや、今誰もが感じている現代社会のひずみや、今の社会が忘れてしまったものを警鐘として描けるかな、と思い至りました。時代に生きられないアウトローたちを描いてきましたが、坊や哲はその最たるもので、彼が2020年の近未来に来たらと考えるとたまらなくなり作品にまい進することにしました。
斎藤さんは、想像以上に昭和を感じさせてくれる大和男児でした。数々の昭和の男たちを描いてきた私の作品の中でも、一番泥臭い昭和の男になっていると思います。坊や哲と出会うことで周りの人々や社会は変わっていきますが、坊や哲は時代が変わっても、一切ぶれない芯の通った男として、演じ切ってくれました。麻雀を好きな人が見ても当然楽しめるけど、まったく知らない人が見ても、楽しめるものになっていると思います。ご期待ください。
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