プリキュア:我が道15周年 女児を魅了し続ける裏側

「プリキュア」シリーズ生みの親とも呼ばれる東映アニメーションの鷲尾天プロデューサー
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「プリキュア」シリーズ生みの親とも呼ばれる東映アニメーションの鷲尾天プロデューサー

 人気アニメ「プリキュア」シリーズは放映開始15周年。普通の女の子が変身して、大切なものを守るためにりりしく戦う姿が、メインターゲットの女児を中心に多くのファンを魅了し続けている。決して順風満帆だったわけではなく、存続の危機を迎えたこともあったが、「我が道を行く。分析しながら、やるべきことを貫く」と乗り越えてきた。生みの親とも呼ばれる東映アニメーションの鷲尾天プロデューサーに「プリキュア」のシリーズの伝統、軌跡について聞いた。

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 ◇最初は1年やり切るつもりが…

 「プリキュア」シリーズは、普通の女の子が伝説の戦士・プリキュアに変身し、さまざまな困難に立ち向かう姿を描くアクションファンタジー。第1弾「ふたりはプリキュア」が2004年2月にスタートし、現在は第15弾「HUGっと!プリキュア」がABC・テレビ朝日系で放送されている。15周年記念作で劇場版最新作「映画HUGっと!プリキュア ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ」(宮本浩史監督)が27日に公開され、歴代プリキュアが総登場することも話題になっている。

 鷲尾プロデューサーは15周年について「ここまで続くとは本当に思っていませんでした。きちんと1年やり切ることしか考えていませんでした」と話す。「プリキュア」は、原作のないオリジナルアニメだ。原作が人気作であれば、ある程度は人気が出ることも予想できるかもしれないが、オリジナルはそうもいかない。鷲尾プロデューサーは心配だったようで、「ふたりはプリキュア」の第1話放送後、玩具店に行ってみた。そこで、玩具が売れていくのを目にし、胸をなで下ろしたという。「その後、玩具が品切れになっているという話がありました」。すぐに人気に火がついた。

 鷲尾プロデューサーは、08~09年放送の第5弾「Yes!プリキュア5GoGo!」までプロデューサーを務めた。「ふたりはプリキュア」が始まってからは「5年間、嵐に巻き込まれたままでした。今だから言えることですが、その時々の対応に追われていた」とがむしゃらにシリーズの基盤を作り上げた。

 ◇初代から「男らしさ」「女らしさ」という言葉は使わない

 「プリキュア」は、17~18年放送の第14弾「キラキラ☆プリキュアアラモード」では肉弾戦を封印したり、「HUGっと!プリキュア」では、子育て、お仕事がテーマになるなど作品によってカラーが異なる。時代に合わせて変化してきたが、核は初代から変わらない。鷲尾プロデューサーは「核はりりしくあること。自分たちで問題を解決しようと立ち向かうこと。あとは時代、環境によって変化していく。キーアイテムが携帯電話、スマホになったり、時代によって子供が興味を持ちそうなものを取り入れる」と話す。

 革新的だったのは、少女たちが素手で相手に立ち向かうところだ。プリキュアの戦闘シーンは激しく、少女たちがパンチやキックを繰り出す肉弾戦が魅力である。「美少女戦士セーラームーン」などにも戦闘シーンはあったが、女児向けアニメでは異例だった。鷲尾プロデューサーは「女の子だって暴れたい!」をコンセプトに企画段階から戦闘シーンを盛り込むことを考えていたという。「爽快なアクションをやりたかったんです。女児向けでは珍しかった」と語る。

 放送中の「HUGっと!プリキュア」では、いわゆるジェンダーレス男子のフィギュアスケーター・若宮アンリが登場。「男らしさ」「女らしさ」という価値観に対して疑問を呈したことも話題になった。しかし、「プリキュア」が、ジェンダーに向き合うのは「HUGっと!」が初めてではない。鷲尾プロデューサーが「(『ふたりはプリキュア』を手がけた)西尾(大介)監督と最初から一致していたのは『男らしさ』『女らしさ』という言葉を使わないこと。ジェンダーを意識していた」と話すように、その伝統が脈々と受け継がれてきたわけだ。

 ◇ライバル出現も「意識したら負け」

 「プリキュア」は、長きにわたって女児の心をつかみ続けているが、順風満帆だったわけではない。「オシャレ魔女 ラブandベリー」「妖怪ウォッチ」「アナと雪の女王」などライバルが現れたこともあった。危機を迎えても「意識したら負けなので、我が道を行く。分析しながら、やるべきことを貫く」と乗り越えてきた。ピンチでも自分らしさを貫くという姿勢は「プリキュア」のキャラクターと重なるところがある。「安定した状況ではない。常に緊張しています。緊張感があるのがいいのかもしれませんが」と作品に向き合ってきたから、15年間も続いているのだろう。

 放送開始当時の視聴者は大人になった。今年は15周年を記念して期間限定ショップがオープンしたり、過去の劇場版アニメの上映会を開催するなど盛り上がっている。「15周年ということで試験的にいろいろなことをやっています。『ふたりはプリキュア』を見ていた世代が母になっても振り向いてもらえるように、20、30年と続けていければ」という思いがある。

 劇場版最新作「映画HUGっと!プリキュア ふたりはプリキュア オールスターズメモリーズ」には、歴代プリキュアが総登場することも話題になっている。鷲尾プロデューサーは「50人以上のプリキュアが出ます。こんなにいたの!?となりますよね。どうやって映像化したのかが見どころです」と話す。20、30年と続いていけば、100人のプリキュアが登場することも……。強固な核を守りつつ、時代に合わせて変化しながら「プリキュア」が続いていくことに期待したい。

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