瑛太:「時代劇ができる俳優でありたい」と熱い思い 主演作「闇の歯車」撮影秘話も

時代劇「闇の歯車」で主演を務めた瑛太さん
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時代劇「闇の歯車」で主演を務めた瑛太さん

 俳優の瑛太さんが主演する時代劇「闇の歯車」(山下智彦監督)が期間限定で上映中だ。現金強奪という犯罪を描いたサスペンス要素の濃い時代劇で、瑛太さんは闇の世界で生計を立てる町人・佐之助を演じている。大河ドラマ「西郷どん」に続く時代劇への出演となった瑛太さんに、時代劇に出演することへの思いや撮影エピソードなどを聞いた。

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 ◇演じる役には「絶対的な愛が芽生えている」

 同作は藤沢周平の時代小説が原作。藤沢作品では珍しいサスペンス長編で、謎の男の呼びかけで集まった4人の男が、現金強奪という犯罪によって一獲千金の夢を見て運命が狂っていくさまが描かれている。丸の内TOEI(東京都中央区)ほかで期間限定上映中で、時代劇専門チャンネルでは2月9日午後8時に放送される。

 義理人情というより、サスペンス要素の濃い時代劇。主演を務めた瑛太さんは「義理人情だけではない、サスペンスという要素を盛り込んだ作品。新しいチャレンジという話も聞いていたので、すごくワクワクした部分があります」と撮影前の心境を明かす。

 瑛太さんで時代劇といえば、NHK大河ドラマ「西郷どん」での大久保一蔵役が記憶に新しい。だが、今作で演じたのは、歴史に名を残すような有名人ではなく、町人役だ。「今まで武士を演じることが多かった」という瑛太さんは、町人の「感情より所作に意識がいってしまう自分がいた」といい、「町人らしさの所作は教えていただいたんですが、頭で考えてしまう時間があった」と苦戦したことを明かす。

 ただ、共演の橋爪功さんの演技がヒントになった。「(橋爪さんは)普段のたたずまいと変わらないんですよね。すごくニュートラルにいる橋爪さんを見て、町人って、どんな形でもいいというか……実在した町人の動き方って、きっと(記録で)残っていないと思うので。自由にやっていいんだな、と腑(ふ)に落ちた感じはありました」と振り返る。

 演じた佐之助は、町人でありつつ闇の世界で日々の糧を得ているアウトローだが、孤独を抱え、情に厚い一面ものぞかせる。そんな人間味のある佐之助を演じた瑛太さんだが、どんなキャラクターを演じるときも、現場に入る前から「絶対的な愛が芽生えているんですよね」という。「だから、肯定も否定も生まれなくて、ただそのまま、そこにいればいい。ただそこにいれば成立していくんだよ、と(思う)」と瑛太さんは語る。

 「今は『(演技は)引き算でいい』というか……どんどんそぎ落としていく。引き算すればするほど、見ているお客さんに余白を与える。そこで想像してもらう方が、面白いんじゃないかと思っています」と瑛太さん。「何をどう思ってそこに存在しているのかという説明は、カメラの前に立った時点でできていると思うんです。あとは最低限のせりふが言えるとか、相手のせりふを聞いている状態だけを作ればいい。そうすれば見ている人には『この人は今、何を考えているのかな』ということを想像していただける。それでいいんじゃないかなという気がしています。『何もしない方がいいよ』と、本番前に自分に言い聞かせている部分はあるかもしれないですね」と演技について自身の考えを語る。

 ◇「時代劇ができる俳優でありたい」 俳優としての立ち位置も語る

 今作の前には、1年3カ月にわたって大河ドラマ「西郷どん」で大久保一蔵役を演じた。改めて、時代劇に参加することについての思いを聞かれると、「やっぱりフィクションである面白さはすごく感じています」と瑛太さん。「実はすごく時代劇って自由で。現代劇をやると、その監督の日常生活の哲学や思想がすごく反映されてくると思うんです。でも、時代劇はファンタジーだと思っているので、そこで俳優がいかに遊ぶ(ことが大事)かということを、橋爪さんと初日にお会いしたときに改めて感じました。だから時代劇って面白いんだな、と思います」と時代劇の面白さを熱く表現する。

 「西郷どん」と今作を経て、改めて、時代劇に対して「日本映画という大きなくくりの中でも、テレビドラマというくくりでも、時代劇ができる俳優でありたい、という思いは強くなりました」と力を込める。

 そこには、今の俳優としての立ち位置が影響している。「たくさんの俳優が生まれている中で、自分の今の位置付けとして、正直難しい年齢に入ってきている部分がある。若手でもないし、中堅と言われる立場でもない。お父さん役をするにしては若い。だから今が、とても大事な時期だと思っていて……」と現状を分析し、「今、30(代)半ばで、もう一度底力をつける、というか……。40、50、60代と自分が俳優をやっていけるのかどうか、その基盤を作るのは今だな、という気がしています」と語る。

 今作の初日舞台あいさつでも、「時代劇をもっと磨いて、日本人の皆さんと時代劇を楽しんでいけるエンターテインメントにしたい」と語っていた瑛太さん。インタビューでも、「海外に向かうとか、違う国の人に自分の存在を証明していく、という思考はもともとないんです。それよりも『日本映画を海外の人に見てもらう』というシステムをより強化していった方がいいと思っている。そういう意味では、絶対に時代劇が強いんじゃないかと思うんです。今までも黒澤(明)さん、三船敏郎さん、勝新太郎さんがいて……海外の人に面白いと思われるのは、やっぱり時代劇だと確信しています」と力強く語った。
 

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