9月27日公開の映画「宮本から君へ」(真利子哲也監督)の主演俳優、池松壮亮さん。2003年の子役時代に映画「ラストサムライ」(エドワード・ズウィック監督)で銀幕デビューを飾り、これまでに公表されている出演映画は短編を含めて54本。超大作からミニシアター作品まで、主人公から脇役まで、さまざまなジャンルに出演し唯一無二の演技を見せ、ラストサムライで共演したトム・クルーズさんや名だたる監督たちから高い評価を得る池松さんのキャリアを振り返る。
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池松さんは1990年7月9日生まれの29歳。福岡県出身。10歳のときに、福岡で子役をしていた姉と一緒に「劇団四季」のミュージカル「ライオンキング」の子役オーディションを受け、“ヤングシンバ”の役を射止めた。当時、野球少年だったという池松さんは、まさか役者の道に進むとは思っていなかったという。
その後、「ラストサムライ」でクルーズさん演じるオールグレン大尉と心を通わせる少年役を演じた。2016年に公開された「ジャック・リーチャー NEVER GO BACK」の来日記者会見にクルーズさんとズウィック監督が出席。池松さんは、同会見にゲストとして登場し、クルーズさんが約13年ぶりに再会した池松さんの活躍ぶりを尋ねる一幕があり、「『ラストサムライ』の時点で素晴らしい俳優だったから、驚きはない」と当時を振り返りながら、絶賛し、話題を集めた。
2014年にはさらなる転機が訪れた。同年に池松さんが出演した映画の公開数は8本。中でも、「紙の月」(吉田大八監督)、「愛の渦」(三浦大輔監督)、「ぼくたちの家族」(石井裕也監督)、「海を感じる時」(安藤尋監督)で「第38回日本アカデミー賞」の新人俳優賞、「第57回ブルーリボン賞」の助演男優賞を受賞した。
家族の絆を再構築する姿を描いた「ぼくたちの家族」では、家族なんて茶番だと決め付けている次男を好演。当時、同作のトークイベントで、石井監督は池松さんに対して2011年に出会ったときから「“ものが違う”役者だと分かっていた」と話し「怒りのようなメラメラしたものを秘めていて、心の中が暴れているのが目に出ている。なので、アップを撮るとドキッとするような顔をするタイプ」と評し、「責任感や男気がある。本物!」とべた褒めしていた。
「紙の月」では、夫との関係に悩む主人公の主婦(宮沢りえさん)の不倫相手を好演。「第27回東京国際映画祭」コンペティション部門作品として選ばれた記者会見で、舞台「ぬるい毒」以来、2度目のタッグとなった吉田監督は、池松さんの起用について「宮沢さんの新しい表情を引き出す役割として、自信をもってこの作品に彼を呼んだ。仕事をきっちりやってくれた」と、全幅の信頼を寄せていたことを語っている。
映画ファンにとどまらず、世間での知名度を一気に上げたのは、2014年にTBSやWOWOWで放送された連続ドラマ「MOZU」シリーズだろう。翌年、続編映画「劇場版 MOZU」(羽住英一郎監督)が公開。同作で一卵性双生児の兄弟を演じ分け、強烈な印象を残した。
幅広い層からの知名度を得て、池松さんの快進撃も本格化したといえる。2016年には10本もの出演映画が公開。大ヒット実写映画「デスノート」(金子修介監督)の10年後の世界を描いた「デスノート Light up the NEW world」(佐藤信介監督)では原作の人気キャラクターであるLの後継者・竜崎、「セトウツミ」シリーズでは大阪の男子高校生、「永い言い訳」(西川美和監督)では、34歳2人の子持ちで、主人公の人気作家・幸夫(本木雅弘さん)のマネジャーを演じ、個性的なキャラから、高校生、34歳の男まで振り幅の大きさを見せた。
「永い言い訳」のトークショーで西川監督は、池松さんには34歳の男を演じるには若いと感じたものの、実際に会ったときに内面が成熟している印象を受けたこと、過去の出演作を見て、俳優としてのすごみを感じたことを明かした。
阿部寛さん演じる主人公の後輩を演じた「海よりもまだ深く」(是枝裕和監督)では、トークショーで是枝監督が、池松さんについて「若いのに色っぽい。決して自分の生理を超えて声を張ったりとかしないし、カメラに向かって芝居をしようとか、こざかしいことを一切しないから、お芝居にうそがない」と絶賛した。池松さんは「第71回カンヌ国際映画祭」でパルムドールを受賞した是枝監督の映画「万引き家族」にも出演している。
2017年には、「夜空はいつでも最高密度の青色だ」で石井作品に3度目の出演。日雇いの仕事をしながらひたむきに生きる青年を演じた。「第9回TAMA映画賞」で最優秀男優賞、「第39回ヨコハマ映画祭」で主演男優賞に輝き、さらに評価を得た。池松さんは今年公開された石井監督の最新作「町田くんの世界」にも出演。2018年には「万引き家族」のほか、塚本晋也監督の「斬、」、木村大作監督の「散り椿」と名だたる監督作にも出演している。
今回の「宮本から君へ」は、新井英樹さんの人気マンガが原作で、2018年の連ドラからの映画化。池松さん演じる、何事にもひたむきで、正義感が強く自分を曲げられない不器用な男、宮本浩と、蒼井優さん演じる中野靖子との愛とともに、2人に訪れた過酷な試練が強いタッチで描かれている。
池松さんに対する数々の監督たちの評価をみると、奥底に秘めたものまでうかがわせるような圧倒的な演技力への絶賛が多い。これまでの活躍を振り返ると、2度、3度と同じ監督の作品に出演しているのも特徴で、その裏には監督たちがそんな池松さんの演技力に信頼を寄せ、池松さんもそれに応えているのがうかがえる。共演者や監督から全幅の信頼を寄せられ、成長を続ける池松さんも来年30歳を迎える。役者としてさらに躍進する年代を迎え、今後どのように進化をしていくのか、注目していきたい。
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