米俳優ホアキン・フェニックスさんが米DCコミックの人気キャラクター、バットマンの宿敵ジョーカーを演じた映画「ジョーカー」(トッド・フィリップス監督)が日本でもヒットしている。今作は、これまでのアメコミ原作の映画とは一線を画し、心優しい青年が、なぜ悪のカリスマ・ジョーカーに生まれ変わったのかを人間ドラマとして描いている。フェニックスさんが24キロといわれる壮絶減量の末に作り上げた、のちのジョーカーとなるアーサーの役作りやフィリップス監督に怒りをぶちまけたという撮影秘話などについて語った。
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映画は、コメディアンを夢見る心優しいアーサー(フェニックスさん)は、ピエロの扮装(ふんそう)で大道芸人をしながら母の介護をしていた。そんな彼の唯一の楽しみは、カリスマ司会者マレー・フランクリン(ロバート・デ・ニーロさん)のトーク番組を見ること。いつかそこに自分もコメディアンとして呼ばれたいと願っていたが……というストーリー。
ジョーカーは「バットマン」(1989年)、「ダークナイト」(2008年)、「スーサイド・スクワッド」(2016年)にも登場してきたキャラクター。コミックのキャラクターを演じるのは初めてだったというフェニックスさんは、「スーパーヒーロー映画のキャラクターたちは深みをもって描かれていないと感じたんだ。楽しそうだけど中身が詰まっていない。楽しみながらやれる役はもちろん好きだけど、さらに欲張ればその役からこれでもかと挑まれたいという願望もある。そして新しい何かを学べればもっと良い」と感じていたという。
今作のジョーカー役は「キャラクターを選び演じることで、一人の人間として知らなかったこと、知らなかった社会の一部などが僕の目の前で広がっていくことになる」と感じた。ただし、今回の役を引き受ける際に「ジョーカーの役をできるかどうか自信がなかったのが一番の迷いの原因なんだ。決断するまでに時間がかかった」と打ち明ける。「できないかもしれないという恐怖心に駆られたんだ。この役を演じるのは この映画が言わんとしてることを深く掘り下げなければならないわけだけど それだけでかなりの挑戦だと感じたし、同時に僕の役者として、人間としての大きな挑戦だとも感じた。そしてさらに見る人にとってもチャレンジングなものとなると思った」という。
役を引き受けてからは減量に励んだ。フェニックスさんは「僕は(減量を)始める前、太りすぎていたんだ(笑い)。最初の2カ月は自分自身でカロリーを落として、ワークアウトした。そして撮影の2カ月前には、栄養士が僕にカロリー制限のダイエットをやらせた。ビタミンやミネラルなど必要なものはとっていたが、カロリーはとらなかったんだ。それは、明らかにとてもタフなことだった」と明かす。しかし、演じる上では「アーサーは人生に決して満足したことがない人で、いつも何かを渇望している。だから減量することは、役を演じる上で役立ったと思う」と感じている。
さらに「目標にしていた体重まで落としたら、とても力をつけたと感じた。僕は食べたいという人間の欲望に打ち勝った。自分の体を極端な状態に持っていくとき、とても力がみなぎる感じがする。減量したら突然、僕は自分の筋肉の動き方に気づいた。これらはすべて、このキャラクターを作り出す上でとても大きなことだった」と話す。
撮影は、アーサーがジョーカーになるまでを順を追って進んだわけではなかった。フェニックスさんは「初めはそれが嫌でしょうがなかった。特にジョーカーになるシーンは最後まで待ちたかった。最後まで待たずに撮影しなければならないと知ったとき、非常にがっかりして、監督に怒りをぶちまけていた。『今の段階でジョーカーを演じるのは無理だ。ここですでにジョーカーをやるなんて意味がない』と騒ぎ立てた」という。結果的には「今は非常に感謝している。あのときがなかったらアーサーへの理解は中途半端なもので終わったからね」と思い直している。
フェニックスさんは「撮影が始まって7週目に入るまでジョーカーになったことはなかった。でも初めてジョーカーを演じたとき、突然ピンときて、ひらめきを感じた。今まで僕が演じてきたアーサーは間違いだったってね。キャラクターへの理解度がまったく違う段階に達したんだ。だからアーサーへのアプローチを変えた。そして、いろんなことを調整しなければならなかった」と語る。
撮影し直したシーンもあったという。「何しろその後、アーサーへのアプローチの方向が変わってしまったわけだから、いくつかの細かいところが意味をなさなくなってしまった。あのあと、アーサーのヘアスタイルを変えたんだ。衣装も少し調整した。それにもちろんアーサーの行動にも変化をつけた」と明かす。
最後に、フェニックスさんにとって「アーサーの真実」とは?と尋ねると、「僕にとって確信できるアーサーの真実とは、子供のころにひどい目に遭ってかなり深いトラウマを抱えているということ」という答えが返ってきた。
フェニックスさんは「彼には確実にトラウマの後遺症が見られる。悪ガキたちに襲われたとき、彼は凍りついて自己防衛も何もできずフリーズモードに入ってしまう。ストーリーの他の部分でも、彼の言ってることの多くがジョークを複雑にしただけ。彼が最後に笑いながら言うせりふ『ジョークを考えてるんだけど、どうせ君たちは何も理解できないだろうけどね』という一人よがりな部分から、僕は彼が子供のころのトラウマを抱えてる人間と判断したんだ」といい、「それが僕にとってのアーサーを作り上げるスターティングポイントになった」と実感を込めて語った。
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