モデルで俳優の宮沢氷魚さん初主演の映画「his」(今泉力哉監督)が、1月24日から新宿武蔵野館(東京都新宿区)ほかで公開されている。青年2人の恋愛を題材に、その先の物語を通じて、自分に正直に生きるために葛藤する人々の姿を真摯(しんし)に描き出している。日テレ系ドラマ「偽装不倫」(2019年)などに出演し、人気急上昇中の宮沢さん演じる迅(しゅん)の元恋人の渚役を、今泉監督作「アイネクライネナハトムジーク」(2019年)などに出演した藤原季節さんが扮(ふん)している。
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ゲイであることを隠して田舎で孤独な生活を送っていた井川迅(宮沢さん)の前に、ある日突然、高校時代に別れた元恋人の日比野渚(藤原さん)が、6歳の娘・空(外村紗玖良ちゃん)を連れて現れる。渚は妻・玲奈(松本若菜さん)と娘の親権を争っている最中だった。2人を住まわせ、優しく見守っていた迅だったが、渚から正直な思いを告白され……。
繊細な風貌で内向的な迅と、あっけらかんとした渚。宮沢さんと藤原さんが絶妙な距離感のコンビネーションを見せる。玲奈役の松本さんも好演。迅に好意を寄せる町役場の職員の吉村美里役に松本穂香さん。鈴木慶一さん、根岸季衣さん、堀部圭亮さん、戸田恵子さん、中村久美さんらベテラン勢が脇をがっちりと固めている。
美青年2人という冒頭のビジュアルから来るイメージを、いい意味で裏切ってくれる。再会に戸惑う迅とワケありの渚の真ん中に渚の娘・空がいて、右往左往する大人たちを明るい笑い声で照らしている。迅と渚と空の暮らしぶり、日常風景がこまやかに描かれ、このまま3人の穏やかな暮らしが続いたらいいのにと願う気持ちにさせられる。
だからこそ、後半の親権争いの法廷劇がほろ苦く効いてくる。そこには、渚の妻・玲奈が抱える葛藤、働く女性のジレンマもしっかりと描き込まれている。同性カップルの周囲の目、自分を隠しながらこれまで傷付いてきた過去など、それぞれにリアルな生きづらさがある。普通の恋愛劇で収まらない深い人間描写に心を動かされた。
企画・脚本はアサダアツシさんが担当し、岐阜県白川町でロケされた。主題歌はSano ibukiさん書き下ろしの「マリアロード」。(キョーコ/フリーライター)
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