ディズニー&ピクサーの最新劇場版アニメーション「2分の1の魔法」(ダン・スキャンロン監督)が、8月21日に公開された。内気で自分に自信がない少年・イアンと陽気で好奇心旺盛な兄・バーリーが、“亡くなったお父さんに会いたい”という願いをかなえるため、魔法で足だけ復活した父を完全によみがえらせる冒険の旅に出る……という本作。スキャンロン監督の個人的な経験をもとに、制作されたという。スキャンロン監督に亡父への思いや、本作の制作などを聞いた。
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2013年公開の「モンスターズ・ユニバーシティ」で監督デビューしたスキャンロン監督。「2分の1の魔法」では監督と脚本を手がけた。本作の兄弟と同様、監督自身も1歳のころに父親を亡くしており、劇中ではこの経験が生かされた。「僕の父と兄のストーリーは、映画にインスピレーションを与える種になった」と語る。
制作の経緯を聞くと「僕らはパーソナルな物語を作りたかったんだ」と切り出し、「真実味があることが必要だったし、心の中から出てきたものを描きたかった。なぜなら、そういうものは誰にでも経験したことがあるだろうし、だからこそ観客の共感を呼ぶだろうと思ったからだよ」という。
ピクサーといえば、徹底した分業と、多くのスタッフがストーリーや演出について意見を出し合うチームワークによって、傑作を生み出すことで知られている。本作は個人の経験がベースになっているものの、「ストーリーが出来上がるにつれて、ここにいる多くのフィルムメーカーたちやアーティストたち自身のパーソナルなストーリーが、映画に足されていったよ」という。しかし「映画から感じられるもの、とくに最後の部分は間違いなく僕が僕の家族に対して持っているのと同じ思いが描かれていると思う」。
劇中で描かれる親子関係だけではなく、イアンとバーリーの兄弟関係も魅力的だ。引っ込み思案な性格のイアンとは対照的に、バーリーは陽気で好奇心旺盛な性格。空気は読めないが、バーリーがイアンをいつも優しく見守っている姿は、ほほ笑ましい気持ちを覚える。
兄弟関係についても、監督の個人的な経験がベースとなっているのかと思いきや、「バーリーは、僕の兄とはかなり違うと思う」と否定。続けて「バーリーは、陽気で好奇心旺盛だけど、僕の兄はもう少しシャイで律義な人なんだ。でも彼らの意図という意味では同じ。イアンとバーリーはお互いをとても支え合っているし、バーリーは弟を愛しているんだ」とにっこり。
本作は、亡くなった父を魔法でよみがえらせようとするも失敗し、足だけが復活するという展開から、冒険につながる。ユニークな発想について、監督は「僕らは、少年たちが希望を持っているということを描きたかった。でもイアンとバーリーはお父さんを復活させることに失敗してしまう。そして父親が半分だけしか復活できなかったことは、イアンにお父さんに会いたいとより強く思わせる」と解説。
「なぜなら、彼は、父親を半分しか戻せなかったことに罪悪感を感じていたからだ。僕が子供の頃、父親について教えてくれるものならどんなものでも見つけようとした。だから、僕らは文字通りそれを父親の(体の)一部にしたんだよ」と笑う。
字幕版でイアンの声優を務めるのは、「スパイダーマン」シリーズでスパイダーマン/ピーター・パーカーを演じるトム・ホランドさん、バーリーの声優は「ガーディアンズ・ オブ・ギャラクシー」シリーズなどのクリス・プラットさんだ。
自分に自信が持てずにいるイアンが、やりたい事をメモにリストするも、結局何をやってもうまくいかず、メモにバツをつけていくもどかしい様子は、どこかスパイダーマンになる前のピーター・パーカーをほうふつとさせるものがあった。
ホランドさんを起用するに当たり、「スパイダーマン」から受けた影響については、「僕らは、イアンを誰が演じるかを決める前にイアンをデザインしたんだ。でもトムは、イアンと同じような誠実さを持っているし、内気でシャイで自分に自信がないような所もトムは上手に表現してくれている。だから多分トムがピーター・パーカーを演じているから、自然と似たところがあったんだと思うよ」と評価。
「イアンもピーター・パーカーもトムだからこそ演じられたのかもしれないね。高校生のピーター・パーカーと、イアンの新しい一歩を踏み出す勇気がなくて自分に自信がない所は、間違いなく重なる部分があると思う」と語っていた。
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