向井理:「麒麟がくる」足利義輝の悲哀と孤独体現 将軍家のプライドと重み…「いずれ滅びる儚さ」意識

NHK大河ドラマ「麒麟がくる」で足利義輝を演じている向井理さん (C)NHK
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NHK大河ドラマ「麒麟がくる」で足利義輝を演じている向井理さん (C)NHK

 俳優の長谷川博己さん主演のNHK大河ドラマ「麒麟(きりん)がくる」(総合、日曜午後8時ほか)で、将軍・足利義輝を演じている向井理さん。8月30日放送の第22回「京よりの使者」では、三好長慶(山路和弘さん)が権力を掌握した京において、完全な傀儡(かいらい)に成り下がってしまった義輝の姿が描かれ、その悲哀ぶりが視聴者の胸を打った。台風10号の影響で1週延期され、9月13日に放送される第23回の副題は「義輝、夏の終わりに」。ますます孤独を強める義輝の行く末が気になるところだが、そんな義輝の悲哀と孤独を体現する向井さんに話を聞いた。

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 ◇室町幕府終焉の始まり… 将軍・足利義輝は「時代に絡めとられたような人」

 室町幕府第13代将軍の足利義輝は、塚原卜伝にも師事したといわれる剣豪。父・義晴とともに、混迷する京の情勢に翻弄(ほんろう)され、近江と京を出入りすることを余儀なくされた悲劇の将軍だ。

 向井さんは「長く続く足利の時代にあって、その終焉(しゅうえん)の始まりにあたる人物だと思います。重んじてきた伝統と、時代と共に押し寄せる新たな勢力のはざまで揺れる難しい情勢の中で懸命に生きていたのだと想像します。争い事のない世の中を願うところが魅力なのではないでしょうか。その姿を見て、光秀(長谷川さん)も何かを感じたのかもしれません」と話している。

 役を演じるにあたっては、「没落してゆく将軍家を感じながら、武家の棟りょうであるプライドも持ち合わせているところ」を大切にしたといい、「13代目まで続いてきた重みと、いずれ滅びる儚(はかな)さを両立させることは意識してきました」と語る。

 また、向井さんは「いつまでも麒麟がくる道を模索していたように思います。ただ、どこか達観している部分もあり、終盤は自分の行く末を分かっているような気持ちでいました」と義輝の気持ちを代弁。「新しい時代がくるということは、古い時代が終わるということです。その時代の中心にいた人物で、自分の力や思いだけではあらがえず、時代に絡めとられたような人です。ただかわいそうという気持ちはなく、その時代の中でも懸命に生きることでその生き方を踏襲する人物もいたと思うので、その功績はあったのかと思います」と義輝の波瀾(はらん)万丈な人生に思いをはせた。

 ◇戦国時代の過酷さ語る 「実力次第でのし上がれる分、切られるのも一瞬」

 今回、義輝役を通して戦国時代の過酷さを経験した向井さんは、「習わしや伝統など大事なことも多かったと思いますが、半面あらがえないことも多々あったのかと。命の重みも今とは全く違うでしょうし、その根底にある意識は少なからず今にも流れているのではと思いました。また、実力次第でのし上がれる分、切られるのも一瞬。その渦にのみ込まれたらギャンブルのような人生になっていくのだろうと想像します」と明かす。

 この先の「麒麟がくる」の見どころについて「足利家が失墜していく様です。人間は移り気で、その時や周りの環境で変わります」と予告した上で、最後に「いろいろな義輝をお見せできれば幸いです」と誓っていた。

 第23回は、将軍・義輝(向井さん)の文を手に信長(染谷将太さん)のもとに向かった光秀(長谷川さん)。しかし肝心の信長は美濃攻めに苦戦しており、話どころではなかった。代わりに取り次ぎを任された藤吉郎(佐々木蔵之介さん)から、京で三好長慶(山路さん)の子らによる義輝暗殺計画のうわさがあると聞く。しかも裏で糸を引いているのが松永久秀(吉田鋼太郎さん)であると知り、衝撃を受ける光秀。すぐに大和の松永のもとを訪ね、その真意を問いただすも、松永は「義輝はもはや将軍の器ではない、このままでは世が治まらないので、殺しはしないが追放するつもりである」と告げる……と展開する。

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