細田守監督:「ウルフウォーカー」監督と座談会 「現代に必要なもの」描く 「共通する思い」

「ウルフウォーカー」の一場面(C)WolfWalkers 2020
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「ウルフウォーカー」の一場面(C)WolfWalkers 2020

 劇場版アニメ「サマーウォーズ」「バケモノの子」などの細田守監督、アイルランドのアニメーションスタジオ「カートゥーン・サルーン」の最新作「ウルフウォーカー」(10月30日公開)を手がけたトム・ムーア監督、ロス・スチュアート監督がオンラインで座談会を行った。「ウルフウォーカー」は、中世アイルランドの町キルケニーを舞台に、イングランドからオオカミ退治のためにやってきたハンターを父に持つ少女ロビンが、森で“ウルフウォーカー”のメーヴと出会う……というストーリー。細田監督の「おおかみこどもの雨と雪」と「ウルフウォーカー」が同じく「オオカミと子供をモチーフ」にしたアニメということもあり、座談会が実現した。

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 細田監督は「ウルフウォーカー」を「(カートゥーン・サルーンが手がけた)『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』のファンだったのですが、今回はさらに美しい映画で、力強さにも感銘を受けました。当たり前のカットが一つもない。驚きに満ちている。こういうふうに街、森、少女を描くんだ!と驚きの連続です」と絶賛した。

 細田監督は、街と森の描写の対比について言及すると、ムーア監督、スチュアート監督は「街は、ロビンが閉じ込められた檻(おり)、鉄格子のようなデザインで、迷路、逃げられないようなイメージで描きました。森は、街とは対照的に自由を象徴していて、ルーズでスケッチのような線で描きました。街のキャラクターは鋭角的な線で、森の中の生物はスケッチのような線で描いています」と説明した。

 細田監督は、オオカミというモチーフについて「オオカミが悪者というイメージはヨーロッパ的。人間が自然を克服する中で、オオカミを悪者にして、オオカミはひどい目にあってきました。ただ、オオカミは善も悪もない。動物がどう思っているのか? 言い分があるんじゃないか? オオカミには優しい側面もあります。そういうところから『おおかみこども』が生まれました」とコメント。

 ムーア監督、スチュアート監督は「自然は敵であり、コントロールすべきというのは、後ろ向きで遅れていると思います。人間は野生を再発見する時代になっているのかもしれません。『おおかみこども』も同じようなことを感じます。誰もが内に秘めている野生がある。文化的にもアイルランドと日本のアニミズムに近いところがあるのかもしれません」と語ると、細田監督「アニメを通して現代に必要なものを伝えていかなかればならない。今回、話しながら、設定は違っても共通する思いがあると感じています」とうなずいた。

 細田監督、ムーア監督、スチュアート監督は手描きの表現を大切にしているという共通点もある。3人は「手描きアニメーションは可能性に満ちている」と力を込めた。

 最後に、細田監督は次回作について「今、まさに作っています。絵コンテが終わったところ。これから、いよいよ本格的にフル回転してやっていきます。『ウルフウォーカー』のような素晴らしい作品に負けないように頑張って作りたいです」と語った。

 座談会は、国際アニメーション映画祭「東京アニメアワードフェスティバル 2021」のプレイベントとして開催。座談会の模様は10月25日にYouTubeで配信予定。

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