放課後カルテ
第7話 お前が学校に来ようが来まいがどうでもいい
11月23日(土)放送分
1月12日からスタートする火曜ドラマ「オー!マイ・ボス!恋は別冊で」(TBS系、火曜午後10時)で主演を務める女優の上白石萌音さん。ファッション雑誌編集部を舞台に、地方育ちの平凡な主人公・鈴木奈未(上白石さん)が、鬼編集長(菜々緒さん)の雑用係になったことから始まる物語。「人並みでいい」と考える奈未に共感するという上白石さんは、「このお仕事を10年くらいさせていただいて、自分では手に負えないくらいのキラキラしたものを見たり、触れたりした中で、『ああ、私は普通が一番いいな』って思うんですよね」と話す。2021年は、今作を皮切りに、大河ドラマ、朝ドラヒロインと注目作への出演を予定している上白石さんに、今の思いを聞いた。
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昨年1月期に同枠で放送された「恋はつづくよどこまでも(恋つづ)」の新米ナース役が人気を博した上白石さんにとって、約1年ぶりの同枠“帰還”。脚本は、「恋つづ」のスピンオフ「まだまだ恋はつづくよどこまでも」も担当した田辺茂範さんのオリジナルで、松本明子プロデューサーや演出の田中健太さんら「恋つづ」スタッフが再集結して制作する。
上白石さんが演じる鈴木奈未は、地方の田舎町で生まれ育った、夢もやりたいことも特にない“平凡女子”。「仕事も恋愛もほどほどに。人並みで普通の幸せを手にしたい」という今時の安定志向の持ち主だが、片思い中の東京で暮らす幼なじみ・健也を追いかけ上京。大手出版社の備品管理部の面接を受けるが、ファッション雑誌編集部に配属されてしまう。
編集部では、菜々緒さん演じる、バリキャリ、毒舌、冷徹な鬼上司・宝来麗子(ほうらい・れいこ)のもとで、地獄のような忙しさの日々に巻き込まれる。「人並みに仕事ができればいい」はずだった奈未は、麗子の働きぶりを間近で見ているうちに、仕事をすることへの意識が変わっていく。人気グループ「Kis-My-Ft2(キスマイフットツー)」の玉森裕太さん演じる、子犬系イケメン御曹司(おんぞうし)・潤之介との前途多難な恋など、奈未が自分にとって本当に大切なものを見つけ、夢を持ち、前を向いて生きていく姿を描く。
ドラマ撮影の合間に取材に応じてくれた上白石さん。奈未に共感している様子で、「奈未が思うことは、『本当にそうだな~』と思って演じていますし、奈未が怒られるときは、私自身が言われているような気持ちになって、めちゃくちゃ痛いです。全部自分のこととして受け止めているので、愛着だらけですね」と笑顔を見せる。
なかでも、麗子からの「『人並みがいい、普通がいい』って、逃げてるだけじゃないの?」という言葉が印象に残っているといい、「菜々緒さんのあの風貌で、あの声で言われてしまうと、もう説得力しかなくて(笑い)。私、逃げてばっかりだなと思って。結構刺さりますね」と明かす。
奈未は「普通が一番」と考えているが、上白石さんも同意見だ。「豪邸でなくていいし、高級食材もいらないし、つつましく幸せに生きられたらいいなと思うので、そういう意味では、わかるなぁって。ただ、そのものさしを仕事にもあてはめていいのか、というのは、やっぱりそこは違うんだろうなと思いました」と話す。
そんな上白石さんが、仕事をする上で大事にしていることを尋ねてみた。「私が演じている役って、普通の役ばっかりなので、普通の感覚は大事だなと思って。ちゃんと喜んで、ちゃんと傷ついて、みたいなところは大事にしたいです」と明かす。
学生時代からの友人が支えになっているといい、「(友人に)会うと、自分で感じることがあって。『ああ、この感覚はずっと忘れちゃいけない。危なかったな』と思うことがあります。それだけのためでは決してないですけど、みんなに会う時間は本当に大事だなと思っています」と話す。また、教育者である両親の存在も大きい。少し道を間違えそうになると、「最近ちょっとおかしいよ。地に足をつけなさい」と言ってくれるのだという。
2020年は、「恋つづ」だけでなく数々の作品でさまざまな役を演じた。「未満警察 ミッドナイトランナー」(日本テレビ系)では芯の強い家出少女・亜未役でゲスト出演、「SUITS/スーツ2」(フジテレビ系)では野心あふれる新米検事/弁護士の藤嶋春香役、「記憶捜査2~新宿東署事件ファイル~」(テレビ東京系)では刑事志望の遠山咲役を担当。「ほんとにあった怖い話 2020特別編」や、全編英語ドラマとなるNHKワールドJAPANの「ホーム・スイート東京」シーズン4などにも出演。映画では、劇場版アニメ「トロールズ ミュージック★パワー」(ウォルト・ドーン監督)の日本語吹き替え版で、主人公・ポピーの声を担当した。さらに、8月には人気ドキュメンタリーの「情熱大陸」(MBS・TBS系)にも出演して話題を集めた。
「実感としてはこれまでとなにも変わらないです。一個一個仕事があって、やるべきことを悩みながら、でも幸せをかみしめながらこなしています。自分的には何も今までと変わらない、ありがたい年という感じですね」と2020年を振り返った上白石さん。
「それにしても『情熱大陸』に出ると思っていなかったです。まさかそんなことがあるなんて、って思いましたし、会いたかった人に会えたりとか、すごくいっぱい試練も受けた分、ご褒美もいっぱいもらった年でしたね」と続ける。
街中で声をかけられることも多くなった。たくさんの人に知ってもらえるようになったことで、これまでとは違った見られ方もするようになった。「そういうことがわーっと増えて。自覚があまりないですけど、節目だったんだなって。そんな感じですね」と表現する。
「皆さんからの自分の見られ方と、自分の中の感覚のズレみたいなものがちょっと苦しかったりすることもあったので、どうやって上を向くかっていうメンタルトレーニングの年でした(笑い)」とも明かした上白石さん。そんなときは、部屋を暗くして、キャンドルに火をともす。
「体をほぐして、ちょっと心もほぐして、『自分、おつかれさま!』って言って、一回寝ます(笑い)。疲れたな、って思ったら点火! その方法を見つけられてよかったなって思います」と気分転換の方法を明かす。
2021年は、「オー!マイ・ボス!恋は別冊で」のほか、NHK大河ドラマ「青天を衝(つ)け」の篤君(天璋院)役、2021年度後期のNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「カムカムエヴリバディ」に、深津絵里さん、川栄李奈さんとともに3代バトンをつなぐ、初代のヒロインを演じることが決まっている。上白石さんにとって初の朝ドラだ。
「まずはもう本当に体調を崩さないことが、最優先になりますね。とにかく毎日元気にニコニコできるように、心身ともにちゃんと鍛えて、いたわらなきゃなと思います」と意気込みを語った上白石さん。「あとはプレッシャーに負けないことかなと思いますね。どんなに緊張しても、落ち込んでも、『この仕事が好きなんだ』っていうことだけを忘れずにいたら、なんとかなるかなと思っています」と話す。
そんな上白石さんに、女優としての手応えを聞いてみた。「私たぶん、デビュー当時が一番いいお芝居していたと思うんです。どんどんお芝居の楽しさを知るのと比例して、難しさ、怖さを知るので、デビュー当時が一番自由で、のびのびしていたんだろうなって。そう思うと毎回反省ばっかりです」と自己分析。
そんなときは、2014年公開の映画「舞妓はレディ」(周防正行監督)、舞台「火星の二人」で共演した竹中直人さんの言葉を思い出すという。
「(出演作を)見て、『はー、だめだなー』って思います。でも、竹中さんがあるとき、『それでいいんだよ、そうじゃなきゃだめなんだよ。満足したら終わりだよ』って言ってくださって。その言葉を胸に刻んでいますね。竹中さんでさえそうなんだから、私がやすやすとできるわけがないって思って、頑張っています」と言って笑顔を見せた上白石さん。2021年の活躍も楽しみだ。
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