ダンダダン
第8話「なんかモヤモヤするじゃんよ」
11月21日(木)放送分
「週刊少年ジャンプ」(集英社)で堀越耕平さんが連載中のマンガが原作のアニメ「僕のヒーローアカデミア(ヒロアカ)」の新作劇場版「僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ワールド ヒーローズ ミッション」(長崎健司監督)が8月6日に公開される。劇場版のオリジナルキャラクターで、俳優の吉沢亮さん演じるロディ・ソウルの相棒、ピノを演じるのが林原めぐみさんだ。ピノは、鳥のような外見で言葉を話さない鳴き声のみのキャラクターで、「謎の物体からいい女、少年、老人まで、どんな役もやれるのが、声優の一つの醍醐味(だいごみ)。待ってました!という感じです」と笑顔を見せる。言葉を話さないキャラクターの演技のこだわり、「ヒロアカ」の魅力を聞いた。
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「ヒロアカ」は、「週刊少年ジャンプ」で2014年7月に連載をスタート。人口の約8割が超常能力“個性”を持つ世界を舞台に、デクこと緑谷出久が、最高のヒーローを目指す姿を描いている。コミックスの全世界累計発行部数は5000万部以上。テレビアニメ第1期が2016年4月にスタート。第5期が読売テレビ・日本テレビ系で毎週土曜午後5時半に放送されている。
林原さんは「ヒロアカ」という作品の印象を「成長物語。トータル的に普遍的なものを描いている作品」と語る。
「『ヒロアカ』は、うちの娘がとても好きで、すごく熱中しているなというのは、近くで感じていたんですよね。仕事として関わることになって改めて見始めたんですけど、殴り合いもあるし、血も飛ぶし、爆発もあるしで見た目はとっても派手なんです。でも、目先の派手さを全部取っ払った時には、シンプルな成長物語だなと。“個性”があるから幸せなわけじゃない、いいことをしている人が損をしてしまうこともあるような世の中で、友達を信じたり、自分を信じたり、すごく基本的なことを根底でしっかり描いているから、こんなに愛されている作品なんだなと感じました」
普遍的なものを描いているからこそ、多くの世代に“刺さる”と感じたという。
「キャラクターたちは、自分の欠けているところを自分が一番理解している。だからこそ頑張る。若い世代にはど真ん中だし、逆に年配の方たちにとっては、通り過ぎた青春のような、でもこの子たちに負けてられないわと思える。トータル的に普遍なものを描いている作品だなと思いました」
林原さんは出演発表の際に「名シーンや、名場面がたくさんの番組。推しキャラもできましたよ。でも……みんな可愛い」と語っていた。推しキャラは、雄英高校ヒーロー科3年の通形ミリオだといい、戦いの中で自身の“個性”を失ったミリオの姿が「私が大事にしてきたポリシーにすごく重なった」と話す。
「私が人生でも大切にしている言葉が、私が演じた『スレイヤーズ』のリナの『魔法がないなら、ないなりの作戦を立てるまで』というセリフなんです。リナも、魔法を失ってしまう瞬間があったんですよ。人は、失恋をしたり、受験に失敗したり、何かをなくしてしまった時には『なんであの時……』と後ろを見て、前に進むことがつらくなってしまうことがままある中で、ミリオ君は力を失ってなお、その力に固執せず、雄英を支える側に回る。ミリオ君が、川で流されて『流されちゃっているんだよね』というシーンを見て、泣けましたね」
テレビアニメ第5期の第89話で「川で人が流されている」としらせを受けた雄英高校1年A組の面々が救助に向かうと、ミリオが流されていたというコミカルなシーンだ。
「戦いの中で失ったものもいっぱいあって、そんなに切り替えられないだろうという。失った時のリカバリーが、川で流されながら、雄英を支える側に回るって(笑い)。コントのような、でも芯を貫くメッセージに驚がくしましたね。私が大事にしてきたものにすごく重なりました。例えば年を重ねたりとか、人が求めているものと違う自分になっていくことは誰だってあること。でも、別にできることがあるとか、過去は過去で大事なんだけど、そこにとどまらない感じに、すごく共感しました。息子にしたいくらい(笑い)」
林原さんは、先に名前が挙がった「スレイヤーズ」のリナ・インバースや、「エヴァンゲリオン」シリーズの綾波レイなどあまたの魅力的なキャラクターを演じているが、今回のピノのような言葉を話さないキャラクターも多く演じてきた。「ポケットモンスター」シリーズでは、人気キャラクターのムサシのほか、さまざまなポケモンの声を担当している。ピノを演じる上では、制作スタッフに「自由に」と言われたといい、「大喜びしながらも、プレッシャーでした」と振り返る。
「数々の鳥もやってきているので、似ないようにとか、最初はすごくいろいろなことを考えていました。鳥の鳴き声の動画もたくさん見て、どこをこの子に使おうかなとか、時々人っぽくしてみようかなとか、すごく練っていったんですけど、いざアフレコとなると、考えていたことが全部吹っ飛んだというか。全部捨てて、剥き身だなって。相棒のロディ君の声を聞いたり、デクと一緒に旅をしたりする中で、もはや、声色はどうでもよくて、湧いてきた気持ちそのものをすごく大事にしました」
ピノは言葉を話さないキャラクターだが、「頭の中ではずっと日本語」だったという。
「ピノがおじさんに悪態をつく時には『この野郎!』みたいな気持ちで言ったりとか。犬や猫でも自分のことを動物と思っていなくて、家族と思っている動物っているじゃないですか。ピノも自分を鳥と思っていないというか、自分はデクともロディとも何も変わらないという。鳴くのではなく、話すというか、会話をしている感じですね」
林原さんが演じるピノは、喜怒哀楽が豊かだ。鳴き声のみで感情を表現していることに驚かされる。
「言葉を話さないキャラクターこそ、声優としての醍醐味かなと思うんですよね。実際の鳥の鳴き声を当てるわけにもいかないし、まだ、機械でできるものでもないというか。そこがこの仕事の面白さだと思います」
最後に新作劇場版の見どころを聞くと、「“個性”=ヒーローである必要もないというか。“個性”は“個性”で、その人自身を表す素晴らしいパーソナリティーなので。どういう意味かは、劇場で楽しみにしておいてください」と語る。感情豊かで、可愛らしく、ヒーローたちに負けじと飛び回るピノの活躍に注目だ。
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