歴史探偵:CPが明かす「歴史の常識をひっくり返したい」というこだわり

「歴史探偵」に出演する佐藤二朗さん(C)NHK
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「歴史探偵」に出演する佐藤二朗さん(C)NHK

 今年春からレギュラー放送が開始された、NHKの歴史番組「歴史探偵」(総合、水曜午後10時半)。応仁の乱や桶狭間の戦い、関ケ原の戦い、大坂の陣といった争乱や合戦、または明智光秀、徳川慶喜、坂本龍馬ら偉人たちの、一般的な評価から少し違った側面を取り上げ、歴史好きの間で話題になっている。番組のこだわりを、制作統括・河井雅也チーフプロデューサー(CP)に聞いた。

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 ◇受け継がれる「歴史秘話ヒストリア」のDNA

 NHKの歴史番組といえば、これまで「その時歴史が動いた」「歴史秘話ヒストリア」などの良質な番組が多数制作されており、歴史の授業で見たことがあるという人も多いだろう。「歴史探偵」は、「歴史秘話ヒストリア」の後継番組としてレギュラー放送がスタートした。

 河井CPは「歴史秘話ヒストリア」の番組制作に携わっており、「(歴史秘話ヒストリアは)番組を立ち上げたプロデューサーからは、夜中に語る『アラビアンナイト』のようなものだと聞いていました。歴史を物語として語り、伝えていくというコンセプトがありました」と振り返る。

 「歴史探偵」は歴史を分かりやすくストーリー仕立てで紹介していくという、「歴史秘話ヒストリア」などのDNAを受け継いで制作されているが、「小さくてもいいので歴史の常識をひっくり返したい」というこだわりもあるという。「いろいろなアプローチがあり、資料を読み解いたり、科学的な側面からひもとく、現地調査するなど、さまざまな手法を組み合わせながら『こんな常識をひっくり返しました』ということを視聴者の皆さんに楽しんでもらうというのがコンセプトの一つです」と説明する。

 そんなコンセプトにハマってくるのが、所長役として出演している佐藤二朗さんだ。「僕らの中には、ずっと歴史番組を作っているディレクターもいて、入り込み過ぎることもあります。視聴者の目線で、シナジー効果を上げてくれるのが佐藤二朗さんだと思っています。佐藤さんの感想や意見も意識し、番組作りに生かしています」

 ◇「大坂の陣」回、放送まで半年も

 番組のコンセプトである「ひっくり返していく」とは、どのような過程を経て作られていくのか。河井CPは「何かしらのとっかかりを見つけて、そこを膨らましていく」という。

 6月には、大河ドラマ「青天を衝(つ)け」でも話題になった徳川慶喜を取り上げたが、「何度も歴史番組で取り上げられた人物で、新しいアプローチを見つけるのが本当に難しくて。そこでAIを使い、慶喜が語った記録にどれだけ信頼性があるのか調査したところ、『大政奉還』には曖昧な表現が多くあり、それを番組内で解き明かしたこともありました」と話す。

 「いわゆる歴史的な有名人でも今までのイメージとは違う一面とか、これまで光が当てられていなかった部分に光を当てることも、“歴史の常識をひっくり返す”ということだと思っているので、そういうアプローチにも挑戦しています」

 特に時間がかかったというのが、11月に放送された「大坂の陣」の回。豊臣と徳川の水をめぐる熾烈(しれつ)な攻防を徹底調査したところ、大規模な洪水が発生していた可能性があったことが分かった。そこで災害対策などで使われるシミュレーターで洪水を再現したところ、東は現在の門真市や大東市、北は枚方市あたりまで広がっていた可能性が浮上した。

 企画から放送まで、半年以上の月日があったといい「衝撃的な話だったので信ぴょう性を高めていき、見てもらうためにはどうアプローチすれば効果的なのか考えました。CGで洪水を再現したり、ドラマで水をめぐる攻防を描いたりして、時間がかかりました」と振り返った。

 12月30日午後7時半からは、歴史探偵で取り上げた「大坂の陣 幻の大洪水」をさらに拡大し、ドキュメンタリードラマで描く2時間のスペシャル版「決戦!大坂の陣」もNHK・BSプレミアムで放送。45分の「歴史探偵」では取り上げることができなかった側面を、たっぷりと紹介する。

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