松竹、亜細亜堂、ニトロプラスによるオリジナルアニメ「REVENGER(リベンジャー)」が1月5日からTOKYO MX、カンテレほかで放送される。長崎を舞台に、信じていたものに裏切られ、帰る場所をなくした繰馬雷蔵(くりま・らいぞう)ら殺し屋REVENGER(リベンジャー)の活躍を描くアニメで、「魔法少女まどか☆マギカ」「PSYCHO-PASS サイコパス」」「Fate/Zero」などで知られるニトロプラスの虚淵玄(うろぶち・げん)さんが、ストーリー原案、シリーズ構成を担当することも話題になっている。監督を務めるのは「忍たま乱太郎」シリーズなどで知られる藤森雅也さんで、豪華スタッフが集結。骨太な作品、いい意味で予想を裏切るような展開になるのでは……と期待が高まるところだが、オリジナルアニメということもあり、謎が多い。一体どんなアニメになるのだろうか? 藤森監督、虚淵さんに聞いた。
ウナギノボリ
10年前の朝ドラ「花子とアン」 当時の吉高由里子インタビュー
藤森監督 ヒリヒリするような昔の時代劇みたいなアニメを作りたいと提案をいただいたのがきっかけです。最近のアニメでは見ない内容になりそうですし、大変そうですが、こんな面白い企画に参加させていただく機会はなかなかないので「自分でよければお手伝いさせていただきます」と返事させていただきました。脚本はどうしよう?となって、ダメ元で虚淵さんにお話ししました。
虚淵さん やります!と返事をさせていただきました。昔の時代劇は、勧善懲悪、人情ものとお茶の間寄りになる前、ビデオ撮影になる前のフィルムの頃のある種の暗さがあります。ちょっと不条理なお話もあって、ままならない世の中に対してしんみりと嘆くようなベクトルの話は、今の時代だと1周回って新しいかもしれない……という思いがありました。悪人ばかりのピカレスクロマン、アウトローをそろえて殺し合うようなものをやりたかったんです。
藤森監督 当時は、映画に負けてたまるもんか!とクリエーターが最先端をぶち込んでいたんでしょうね。そういう楽しさっていうのがあったんだと思います。
虚淵さん ブレストの中で固まっていきました。
藤森監督 江戸ではない風景にしたいという話がありましたよね。
虚淵さん 長崎は山の中の街ですし、外に開かれた港でもある。国際的なギミックも詰め込めます。
虚淵さん 活劇にしたいというのが大前提にあり、徹底して時代考証を練った上で歴史に忠実にするのではなく、派手さを重視しようとしました。長崎を舞台にしたのはいいのですが、ちょっと狭いんです。じゃあ思い切って悪魔城みたいなもの作っちゃいましょう!となったり(笑い)。冒頭で城を見せれば、長崎!?となりますし。
藤森監督 ガチの時代劇ではなく、ファンタジー要素が入っていることを提示しつつ、第1話の冒頭は、ヒリヒリした時代劇をかなり意識しています。全部をファンタジーにすると、時代劇にした意味がなくなるので、バランスを考えています。
虚淵さん せっかくアニメなので、実写ではできないことをやりたいですしね。
藤森監督 それぞれの殺しの方向性が違って、ファンタジー要素がより入っているのが碓水幽烟(うすい・ゆうえん)の殺しで、繰馬雷蔵や叢上徹破(むらかみ・てっぱ)は暴力に寄っているというように、明確に描き方を変えています。幽烟は様式美、雷蔵、徹破はアクション映画のような気持ちよさがあります。そういうところを意識しています。
虚淵さん キャッキャしながら、はしゃいでブレストしました(笑い)。
--キャラクターが派手で色気があるのも魅力的です。
藤森監督 動き回るところは徹底的に派手にします。殺しだから重み、痛みがちゃんと伝わる画面を作ろうとしています。
虚淵さん 悪党がモブとして処分されるような絵作りではありません。殺す側もすり減る話にしたかったんです。ゲームみたいに自分でボタンを押して、殺す場合にそんな描写にしたら、ついていけなくなるし、話が進まなくなってしまいます。テレビアニメはゲームとは違いますし、脚本の段階でそこを描こうとしました。
藤森監督 テレビシリーズで、痛みまで含めて表現できることはなかなかないかもしれません。
藤森監督 やりがいがあります。今まで見てきた映画などが無駄にならなかった。マカロニ・ウエスタンが大好きなのですが、そういうところが生きているところもあります。遠慮しないで好きなものをそのまま爆発させていいんだ!と楽しくやらせていただいてます。
虚淵さん なんだこりゃ!?と思っていただけるとうれしいですね。
虚淵さん 自分だけで作ると硬くなるので、大樹さん(虚淵さんと共に脚本を手掛ける大樹連司さん)にいい感じにほぐし、緩急をつけていただきました。
藤森監督 会話シーンが結構長いんです。会話そのものを聞かせるようなところもあります。アニメの場合、長いせりふだと、途中でシーンを変えたり、回想を入れたりもしますが、通常のカット割りで緊張感を持って見せていこうとしています。独特の間もあって、すごく密度が濃いです。挑戦しがいがありました。
虚淵さん 安心感のある話にはしたくないというのはあります。ハラハラしながら、どうなってしまうんだろう?と緊張感を持って見ていただけると思います。
藤森監督 僕はファミリー向けアニメを多く作ってきた人間ですが、こんな凶暴な映像を作るのは、自分でも意外でして、楽しいです。
虚淵さん 僕は凶暴なスタッフとばかり付き合ってきましたが、全く遜色ないですよ(笑い)。
藤森監督 実はファミリー向けアニメとそんなに違わないところもあります。劇場版で、緊張するシーン、怖いシーンをしっかり構築することもありますし。ただ、ここまでの緊張感はないかもしれませんね。
虚淵さん 挑戦もできたし、達成できたと感じています。映像も素晴らしいですしね。
藤森監督 全力でコンテを書かせていただきました!
虚淵さん しっかりしたものを作らせていただけたと手応えがあります。今はこれが旬だ! 生魚の鮮度が命!みたいな作りではありません。しっかり醸造された作品です。迷走しなかったのもよかったです。方針が定まらなかったり、迷子になったりすることがなく、みんなでビジョンを共有できました。監督の指示も明確で、問題点があっても、ちゃんと解消できました。しっかり強度のある作品になっています。1本の杉からドカーンと一気に柱を作ったような精度もあります。昔の時代劇に無常観があるのは、作り手が当時の世界に対する不満をぶつけていたんじゃないか? ある種の嘆きがあったのかもしれない。運命に翻弄(ほんろう)される人間たちの嘆きの物語を描くということをブレずに最後まで通せたことがよかったと思っています。
藤森監督 必ずしも万人向けのフィルムにはなっていないかもしれませんが、入り口として入りやすいところは当然作っています。でも、ソフトにはしていません。食べ応え、かみ応えがあるはず。ぜひ、楽しんでいただきたいです。
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