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ひとり暮らし長~い芸人
11月21日(木)放送分
俳優の斎藤工さんが案内人を務める、WOWOWの特集番組「特集:ミニシアターに愛をこめて」に、柄本時生さんがゲスト出演することが3月27日、分かった。併せて、斎藤さんと柄本さんが、ミニシアターへの思いや作品ついて語り合った対談も公開された。
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コロナ禍で苦しむ映画館を応援する活動「ミニシアターパーク」の中心人物の一人でもある斎藤さんが、全国のミニシアターにエールを送る特別番組。ゲストに柄本さんを迎え、世界の秀作4作品を届ける。今回の放送・配信では「ファンタスティック Mr.FOX」「宋家の三姉妹」「子猫をお願い」「五月のミル」の4本を特集し、斎藤さんと柄本さんが作品についてトークする。
――収録を終えていかがでしたか?
斎藤さん:結構長くこの番組をやっていますけど、スタッフのみなさんが本当に楽しそうで、こういう温度感みたいなものがこの番組の本来の体温なのかなと改めて感じました。それは時生が来てくれたから生まれたものだと思うし、映画について、肩ひじ張らずに好きなことを話すという空間――映画のご褒美みたいな時間でしたね。
――時生さん個人の映画についての深い造詣はもちろん、柄本家の様々なエピソードも聞くことができましたね。
斎藤さん:そうですね。もちろん、ご家族の関係値は頭にありますが、ただ、僕は柄本家のひとりひとりにものすごく影響を受けていまして、リスペクトもしているので、それぞれの視点があるのも素敵だなと思いました。映画関係者だけでなく、聞かせたい言葉がたくさんあって……。「芝居は労働だよ」(柄本明さん)という言葉だったり。本当に核心ですよね。
――「セリフを言えば家に帰れる」、「僕ら(俳優)は幼稚園のお遊戯会に勝てない」など深い言葉がたくさん聞かれました。「柄本家の名言集」を編纂してほしいですね。
斎藤さん:本当にその通りなんですよね。いろんな人にお父さん(柄本明さん)は核心を自然に反射的に伝えてくれているんだなと思いました。
――しかも、ひとつひとつの言葉がバラバラではなく、つながっている感覚を受けました。
斎藤さん:そうなんですよ。
――柄本さんは収録に参加されてみていかがでしたか?
柄本さん:いやぁ、楽しかったです! 前日は結構、緊張してたんですよ。
斎藤さん:カメラの前で、改めて映画について話しますとなるとね(笑い)。
柄本さん:そうなんですよ。映画について話すって、なかなか怖いものなので、ちょっとだけ緊張してて……。でもやっぱり楽しいですね。いろいろお話ができるというのは。
工さんとはお会いすると、いつもこうやってお話をするんですけど、教えていただくこともすごく多いんですよね。それこそ、ロジカルというか、言葉の部分で勉強になることがすごく多いんですよね。
今回の「宋家の三姉妹」でいうと、香港に足を運んでみて、改めて見ると全く見方が変わるということだったり、そういう部分の“気づき”に関して、僕は実は工さんからしか教えてもらったことがない気がします。
――今回の「ファンタスティック Mr.FOX」、「宋家の三姉妹」、「子猫をお願い」、「五月のミル」という4作品は、ジャンルも扱っているテーマや時代性もバラバラの作品でしたが、いかがでしたか?
柄本さん:すごく良いチョイスだなと思いました。映画を見続けていく中で「ファンタスティック Mr.FOX」から「宋家の三姉妹」、「子猫をお願い」、そして「五月のミル」というのは、大人の階段を上っていくというか、思春期から人生の成熟まで、すごく良い階段を見ることができるんじゃないかなと思いますね。とってもいいラインナップだと思います。どこかで特集上映をしてもらうのもアリなんじゃないかと思うくらいです。
斎藤さん:たしかにね。
――お二人の出会いや仲良くなったきっかけについて教えてください。
斎藤さん:番組でも話しましたが、僕が一方的に柄本家のファンだったというのは大前提としてあります。ただ、忘れられないのが、フジテレビの(明石家)さんまさんの番組に番宣で出演させていただいて、そこで時生と一緒になったんです。僕の左後ろに座っていて、僕はその時、初めてさんまさんにお会いしたんですが、番組の中で「WOWOWの『映画工房』見ているよ」という話をしていただいて、映画の話を振られたんです。その時、“ゾンビ映画のいま”みたいな話になって「ウォーム・ボディーズ」の話をしたら、左後ろ(柄本さん)からリアクションがあったんですよね。それは嬉しかったし、信頼しかなかったですね。抱きしめてもらった感じがしました。
その時、僕はすごく浮いてて、さんまさんはあえてそういう演出をしてくださったんですけど、そこに時生がいてくれたというのが、同じ空間で映画を通じてサポートしてくれているのを感じて忘れられないです。当時、「映画工房」が始まって、まだ2~3年くらいだったと思います。
「ロンドンゾンビ紀行」の話にもなって、老人の歩行器とゾンビの歩く速度が同じだという数学的な分析を(笑い)。
柄本さん:あぁ! 思い出しました! いま聞いてフラッシュバックしました(笑い)。僕ね、もうひとつ思い出があって、これは工さんは覚えているかどうかわからないんですけど……。
兄ちゃん(柄本佑さん)から聞いてたんですけど、何かの打ち上げで、いきなり「『戦艦ポチョムキン』見た?」って聞かれたことがあったらしく、それを聞いた時、「え? あの活弁の映画だよな?」って思って、それを見てるヤバい俳優がいるんだというのがずっと頭にあったんです。でも、それが工さんだとは認識していなくて。で、さっきの番組で、ゾンビと歩行器の話になった時に「この人じゃないか?」と思ったのは覚えています(笑い)。もしかして、兄ちゃんが言ってたのは工さんじゃないか? って。
斎藤さん:おそらく佑に対しても「戦艦ポチョムキン」ベースくらいじゃないと会話ができないと思って、そういう話をしたんでしょうね(笑い)。
――「『○○』見た?」という会話の時、普通はその時期に回っているロードショーや話題作が入るものかと思いますが……。
斎藤さん:たぶんね、朝ドラの「ゲゲゲの女房」の現場だったと思いますけど、水木しげるさんの作品でも“赤”を印象的に使う作品があったんですよね。「シンドラーのリスト」でも赤いコートの少女が印象的に描かれていますけど、これって元はといえば「戦艦ポチョムキン」だよなということで、そういう連動性があってその話になったんじゃないかと思います。特に僕が演じた小峰章という役は(「紅い花」の)つげ義春さんがモデルだったので、なおさら“赤”の意味や背景について考えてたんでしょうね。
柄本さん:その話を聞いた時、「すげぇ人がいるんだな」と思ってたんですよ。なので、僕はあの時、右前にいる人を「ポチョムキンの人か?」と思いながら見ていました(笑い)。
――番組でもお話されていましたが、そもそも、柄本さんの映画についての知識や造詣というのはどのように蓄積されていったものなのでしょうか? 特にミニシアター系の映画とどのように出会い、好まれるようになったんでしょうか?
柄本さん:「面白い」と思えたことが大きかったんだと思います。たぶん、名画といえるものを最初に見たのは、小学生の頃に見た「ローマの休日」だったと思います。「ローマの休日」を小学6年生で見て「面白い」と思ったんですね。
(同作に出ている)エディ・アルバートがカッコいい! と思ったんですけど、そうしたら父が「時生、『ロンゲスト・ヤード』って映画は知っているかい?」と教えてくれて「『ロンゲスト・ヤード』? 何それ?」となって、「ロンゲスト・ヤード」を見て「カッコいい!」となって、またどんどんいろんな作品につながっていったんですね。それが嫌いじゃなかったし、楽しかったんですよね。
――学生時代はかなりあちこちのミニシアターに?
柄本さん:通い出すようになったのは高校生の頃かな? 池袋の新文芸坐ですかね。「江戸川乱歩特集」をやってて、それを見に行っていた記憶がありますね。そういうのが楽しい時期だったんですね。オタク的なものへの憧れもあったんだと思います。
――斎藤さんのミニシアターの対する活動について、どのように見ていらっしゃいますか?
柄本さん:工さんがやられていることについて、僕がいつも思うのは、俳優の行動ではなく“映画ファン”の行動だなってことですね。映画ファンがやりたいことをやってくれているような気がして、すごく素敵だなと思います。
もちろん、斎藤工という俳優が俳優活動をされてここまできたからこそ、できる活動というのがある気がしますけど、それにしても、まずなによりあるのが“映画ファン”という立ち位置ですよね。すごく素敵です。
――斎藤さんにとって、柄本さんは俳優仲間としてどんな存在ですか?
斎藤さん:特に、柄本時生じゃなきゃいけない理由がたくさんある俳優さんだと思います。佑もそうですけど。誰しもが共感できるものも愛せる人だし、それだけでなく、多くの人が無視してきたものに対して、ちゃんと眼差しを送れる人であるなと。それが、どんな作品でも、柄本時生の“体温”として感じられるのが、すごく好きです。
たしかに僕の行動って全部“映画ファン”のものですし、映画ファンがたまたま表舞台に立って活動しているってだけなんですよ、本当に。それは揺るぎない確証として僕の中にあります。もしかしたら時生もそれに近い主観と客観みたいなものを持っているのかな? でもすごく楽にしていて(笑い)、泳ぐときに力を入れると沈んじゃうけど、そもそも人間は肺があるから浮くようになっているというのをわかっているというか、そういう“強さ”を感じますね。
番組の結びでも言いましたが、この兄弟とお父さん、そして、お母さん(故・角替和枝さん)も僕は大好きな人だったんですけど、同じ時代に時折、作品を一緒に作ったりできて、幸せですし、こうやってひとつの作品について話すことができて、これも超楽しいなと思いました。この番組の持つべき体温というのは、時生じゃなかったら気づけなかったと思います。こちらこそ、学びというか、いろんなものが満たされました。
――今回の番組で紹介された「宋家の三姉妹」が上映された岩波ホールが、昨年閉館しました。依然、ミニシアターを取り巻く環境は厳しいものがあります。コロナ禍だけが原因ではないとは思いますが、こうした現状について、また改めてミニシアターへの想いを聞かせてください。
斎藤さん:やはり、その映画館の館長、従業員の方たちの“個性”に人々が集まる場所であってほしいなと思っています。所詮、映画を見に行くための“娯楽小屋”ではあるんですが、流れとしてどうしても、(人々が)動かない場所に娯楽が集まる縮図になっているので、(娯楽のために)「足を運ぶ」ということが今後、増えていくことは、悲しいかな、無いかなと思っています。その大きな流れは変わらない気がします。映画も配信で見れちゃうし、(映画館などの場所に足を運ぶのではなく)自分の環境に娯楽を寄せるという方向は、大幅に変わらないだろうという前提で、そこに行く意味みたいなものを映画館の方たちと一緒に考えて、トライ&エラーを繰り返していくしかないのかなと思います。
現実的なことを言うと、戦後、映画の料金が「50%は劇場、50%は配給」となっていますが、その割合って日本だけ特殊で、海外は制作側の取り分が多いんですね。もちろん、阪本順治監督が「劇場は映画のゆりかごだ」とおっしゃっていたように、劇場は映画を育ててもらう場所なわけですけど、その割合ももしかしたら、変えていってもいいのかもしれないなと思っています。
映画の料金もシネコン、ミニシアターも一律に同じですけど、そうした大きなシステム自体を見直すべきタイミングで見直してこなかったひずみというのも感じます。
ミニシアターパークの活動をしていてわかったんですけど、もしコロナ禍がなくても、閉めようかと考えていた劇場っていっぱいあるんですよね。
今日の収録の中でも銭湯の話が出てきましたけど、まさに銭湯に行くような感覚で劇場があって、映画がそこにあったらいいなとアナログな感覚ですけど思いました。“人が集まる場所”が映画館であってほしいなと願います。
柄本さん:なくなっていくものに対して、僕はどこかで「しょうがない」という思いもちょっとだけあるんですよね。
斎藤さん:うん、わかる。
柄本さん:それって、(なくなっていくべき)何かがあるんだろうと。ただ「しょうがない」の中でも、できることってきっとあるし、僕なんかは見に行くということしかできないかもしれないですけど。
でも、今後、また戻ってくるんじゃないかな? という感覚もあるんですよね。こんなにも映像というものを身近に見られる時代になって、今度は「遠くのものを見たい」という感覚がわき上がってくるだろうと。そうしたら、映画館という場所がまた足を運んでもらえる時代が来る気がしています。
だから、それまでの維持をどうすべきか? というのを考えていく必要があるのかなと思っています。
やっぱり映画は面白いので、まず何より「面白い」ということをわかってもらうための方策を考えていきたいですね。
斎藤さん:今日の番組の中で出てきた(柄本佑さんが言ったという)「映画は見上げるもの」というのはすごく良いヒントだなと思いますね。プラネタリウムをみんなで見上げるのと同じで、見上げて共有するということに僕らは何か運命を感じられるんじゃないか? ということを今日、感じました。
移動映画館「cinéma bird」の活動をしていると、どの地域にも、50年前は必ず、どんな小さなエリアにも映画館があったんだと。テレビがない時代だから。そこに映画館があると、地域の交流が生まれるんですよね。その意味合いとして愛された映画館の神髄は、いま時生が言ったように、自宅や“個”で味わうことができないということをいまの若い世代も本能的にわかっていると思います。
CDは売れなくてもライブには行くような原理で、映画館という場所にもっと光が当たっていくことを願うしかないし、僕らはそのつなぎ目にいるような職業だと思います。舞台あいさつというのも、映画鑑賞という体験を“4D”にする装置だと思いますし、そういう役割を引き続き探っていけたらと思っています。
「ファンタスティック Mr.FOX 」は3月28日午後11時、「宋家の三姉妹」は29日午後11時、「子猫をお願い」は30日午後11時、「五月のミル」は31日午後11時からWOWOWシネマ・WOWOWオンデマンドで放送・配信。放送に入りきらなかった2人の未公開トークを3月28日からWOWOWオンデマンドで配信する。
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