諏訪部順一:「マイホームヒーロー」 普通のようで普通じゃない 危険!? 狂気を表現

「マイホームヒーロー」の一場面(C)山川直輝・朝基まさし・講談社/「マイホームヒーロー」製作委員会
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「マイホームヒーロー」の一場面(C)山川直輝・朝基まさし・講談社/「マイホームヒーロー」製作委員会

 「週刊ヤングマガジン」(講談社)で連載中のマンガが原作のテレビアニメ「マイホームヒーロー」が、4月2日からTOKYO MXほかで放送される。主人公は、平凡なサラリーマン・鳥栖哲雄で、演じるのは人気声優の諏訪部順一さん。哲雄は普通のおっさんのようにも見えるが、普通ではない。幅広い役柄を演じてきた諏訪部さんが、哲雄をどのように演じるのかが注目される。諏訪部さんに収録の裏側を演じた。

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 ◇メンタルが削られる……

 「マイホームヒーロー」は、「100万の命の上に俺は立っている」などの山川直輝さん、「サイコメトラーEIJI」「クニミツの政」などの朝基まさしさんがタッグを組んだマンガ。「週刊ヤングマガジン」で2017年5月から連載されている。平凡なサラリーマン・鳥栖哲雄が、娘の恋人を殺害した罪を隠し、家族を守るため、半グレとのだましあいに身を投じることになる……というストーリー。

 作品の魅力を「スリル、サスペンスが盛りだくさんで、優れたエンターテインメント作品だと思いました。原作自体は以前から知っていましたが、実際に読んだのはオーディションを受けることが決まってから。あまりの面白さに、これは絶対に出演したい!と強く思いました」と語る諏訪部さん。実は、オーディションでは哲雄以外の役を提案されたが、哲雄をどうしても演じたいという思いがあり、自ら立候補した。

 「原作を読み進めるうち、哲雄を演じたい気持ちが強くなったので、マネジャーに受けさせてもらえないか制作に確認してもらったんです。すると『OK』との返事がきたので、全力でトライしました。哲雄の目線で進む物語ですから、大いにやりがいがあるのは間違いないでしょうし、自分の実年齢に割と近い役を演じる機会というのも、アニメではあまりありません。それに、何より、基本は普通の社会人ですから。見た目も普通の、等身大のおじさん……最高じゃないですか!」

 哲雄は普通のようで、普通ではない? そこが大きな魅力となっている。

 「家庭もある、ごく普通のサラリーマンである哲雄。しかし、越えてはいけない一線を越えてしまったことで、内包していた狂気が顔をのぞかせる時があります。でもこれって特別なものではなく、たとえば愛するものを守るためならば、彼のような行動に出るかもしれないと思う人は少なくないと思うんですよね。共感性のある狂気。哲雄の魅力はそこにあるように感じます。」

 やりがいがあるが「主人公の鳥栖哲雄に入り込んで物語を読み進めると、メンタルがすごく削られました」とも明かす。

 「自分自身の経験を重ねたり、追体験的に心を動かしたりして、演じる役に迫っていくメソッド演技的なアプローチをすることも私は多いのですが、哲雄は作品の中で人を殺しますし、とてつもない精神的、物理的抑圧を受け続けます。この作品に限った話ではないのですが、収録が終わっても演じた時の心情ってパッと完全には拭えないんです。現実に何か悪いことが起きているわけではないのに、憂鬱な気分や悲しい気分がもやもやと残ってしまうことがあります。あ、そういうの感じない方もおられると思います。あくまで個人の感覚ということで(笑い)。哲雄のメンタルを引きずると危ういので、毎回アフレコが終わったら、おいしいものを食べるなどして気分転換に努めました」

 ◇とにかくせりふが多い!

 普通のおっさんだが、格好よさもある。諏訪部さんは絶妙なバランスを表現しようとした。

 「第1話の収録の時、監督から『もうちょっと若く』というディレクションをいただきました。くたびれたおじさん感が出過ぎていたようです。実年齢は哲雄より上なもので(笑い)。そして、哲雄はちょっとさえない感じの中年サラリーマンではありますが、『そこはもう少し格好良くしてください』という要望もちょいちょいありました。終始単なるヘタレではなく、覚悟が決まった人間の放つ研ぎ澄まされたオーラみたいなものを表現してほしいと。生っぽさというか、一人の男が併せ持つさまざまな顔を、地続きのものとして成立させるべく頑張りました。」

 哲雄は頭脳戦を繰り広げることになる。モノローグも多く、とにかくせりふ量が多いという。

 「主人公なだけに、哲雄のせりふは図抜けて多いですね。心情の吐露や、状況を説明するようなモノローグも多いので、通常の倍以上しゃべっている感覚です。毎回大変ではありますが、出番が多いのは演者としてはうれしい限りですし、とても楽しかったですね。話が進んでいく中、哲雄は狂気の世界にどんどん足を踏み入れていきます。日々の生活のすぐ近くに深い闇が口を開けている現代社会。本作はフィクションではありますが、物語に入り込んでいくと、自分にも起こりうるリアルな出来事のようにも思えてきます。ご鑑賞の際はどうぞお気をつけください(笑い)」

 コロナ禍の分散収録ということもあり、大人数の収録はできなかったが、妻・歌仙役の大原さやかさん、娘・零花役の白田千尋さんと一緒になることが多かった。

 「最大4人までの分散収録でしたが、妻と娘とは大体一緒に収録することができました。大原さんは同じ事務所に所属する直系の後輩でよく知っている方。いい距離感で夫婦の空気を醸し出すことができたのではないかと。娘の零花を演じる白田さんとは、実年齢も親子くらいの差がありまして。自分にもこれくらいの娘がいたとしたら……と考えたら、めちゃくちゃ心配に。休憩時間などにヒアリングした彼女のお父さんの話を元に、自分の中の父性を高めました(笑い)」

 哲雄が敵対する半グレ組織のキャストも超豪華だ。麻取義辰役の三木眞一郎さん、窪役の大塚明夫さん、志野役の山寺宏一さん……とそうそうたる顔ぶれで「まじか!?となりました(笑い)。強敵です」と“戦い”を楽しんでいるようだ。

 アニメの放送に向けて「既に世に出ている、作品につけられたキャッチコピーはかなり物騒ですが、家族を愛する一人の中年男性が奮闘する非常に面白い作品です。手に汗握りながら、ぜひともラストまでお付き合いいただけますと幸いです。原作既読の方も未読の方もお楽しみいただけると思いますので、どうぞよろしくお願いします!」と話す諏訪部さん。狂気も感じる哲雄の演技に期待が高まる。

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