放課後カルテ
第7話 お前が学校に来ようが来まいがどうでもいい
11月23日(土)放送分
俳優の長谷川博己さんが主演を務めるTBS系日曜劇場「アンチヒーロー」(日曜午後9時)に出演している近藤華さん。演じる紗耶は、死刑囚・志水(緒形直人さん)の娘で、6月2日放送の第8話では、主人公の弁護士・明墨(長谷川さん)から、志水が冤罪であることを知らされ、自らの意志で12年ぶりに父親と対面する姿が描かれた。死刑囚の娘であり、また時として話せなくなってしまう場面緘黙症を抱えた少女という難役に挑戦した近藤さんに、これまでの撮影を振り返ってもらった。
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近藤さんは2007年8月6日生まれ、東京都出身の16歳。ドラマ「金田一少年の事件簿」(2022年、日本テレビ系)や「ばらかもん」(2023年、フジテレビ系) などに出演してきた。
「アンチヒーロー」が初の日曜劇場で、第1話(4月14日放送)から登場。その時点で紗耶は、「殺人犯をも無罪にしてしまう」アンチな弁護士・明墨に「なぜかよく懐いている犬好きな少女」程度しか描かれず、“何かを抱えている”様子こそあったものの、正体は明かされていなかった。
「私が演じている紗耶ちゃんは結構、謎が多かったので、友達とかも、紗耶がどんな子なのか『考察している』と教えてくれて。その子の予想は当たっていたのですが、放送で明らかになるまでは隠し通しました」
紗耶が、死刑囚・志水の娘であること、その志水を死刑囚にした張本人が検察時代の明墨であること、そして明墨自身が志水が冤罪と知って、弁護士として罪を晴らそうとしていること。それら全て明らかになり、物語はクライマックスに向けて突き進もうとしているが、近藤さんは、紗耶をどんな少女と捉えて演じていたのだろうか……。
「紗耶ちゃんは、すごく複雑な事情を抱えていて、その分、大人びていて子供っぽくない子と思い、最初は大人っぽい演技をしようとしていたのですが。現場で監督から『幼さが大事』と教えていただいて、紗耶ちゃんの幼さや弱さを出そうと切り替えました。あと紗耶ちゃんは、場面緘黙症ということで、あまり人前でしゃべれない子。でも、しゃべれないというだけで、心の中ではすごくいろいろな感情が動いていると思ったので、それをうまく出せるように、表情とかで紗耶ちゃんの心の中が伝わるようにと考えて演じました」
そんな近藤さんが、以前から「紗耶ちゃんにとっても、私にとっても一番大事なシーンになる」と準備してきたのが、第8話の父娘の再会シーンだ。
監督からもらった親子を描いた映画のリストの作品を見たり、死刑囚や冤罪、その家族に関する記事を読んだり、「もう一回、紗耶ちゃんの人生を振り返る作業をして」気持ちを高めていったという。
「紗耶ちゃんについて台本には書かれていない部分、例えば施設の中での立ち位置やどんな友達がいるのか。学校では『もしかしたらいじめに遭っていたのかもしれない』とか。そういう紗耶ちゃんが経験してきたであろう、つらいことを自分で創出して、どんどん自分を追い込むことで気持ちを高めていました」
同シーンでは、ついに志水本人の口からはっきりと「誰も殺してない」と聞かされた紗耶。一方で、会社の金を横領した罪を告白し、「つらい思いをさせた」と謝る志水に対し、「私がどうしたら幸せかは、私が決める」と涙声で訴えつつ、「パパが(殺人の罪を)認めたせいで、つらかったなんてもんじゃないよ。パパがいなくなって、ママも(飼い犬の)ココアも死んじゃって、私はずっと、ずっとずっと寂しかった。本当は犯罪者でもいいから、ずっとパパと一緒にいたかった」とたまりにたまった思いを涙ながらにぶちまけた。
「演技とはいえ、自分の気持ち的にもすごくつらくて、悲しくて。そういうときに限って『自分の演技、大丈夫なのだろうか』と頭をよぎるので、そうはならないように、紗耶ちゃんとして、パパの感情を受け取ろうと、緒形さんの演技にゆだねることを意識しました」
劇中で、紗耶と志水の対面は12年ぶりだったが、近藤さんが父親役の緒形さんと撮影で顔を合わせたのは、この日が初めてだった。
「シーンの段取りのときが本当に“はじめまして”。本番前もなるべく話さないようにと少し離れたところにいました。撮影前の緒形さんは、おだやかで優しい感じの雰囲気だったのが、本番になったらボロボロの『まさに死刑囚』って感じのまるで別人で、その切り替えがすごいなって思いました」
改めて「すごく緊張していたのですが、泣くこともうまくできたと思いますし、一回演じるだけで体力を使うシーンでもあったので、何回もできるものではないと思って、とにかく集中して演じました」と明かす近藤さんが、「アンチヒーロー」で得たものとは?
「こういうシリアスな作品は初挑戦で、皆さんの本気度は本読みから感じていました。役についても、今まで頭の中で整理をしていたのを、ノートにまとめて、より深く掘り下げるようにもなったので、演技の向き合い方にも変化をもたらしてくれた作品にもなったなと思っています」