渡辺大知:同じ日に亡くなっている行成と道長 巡り合わせに「ドキッと」 一条天皇とは「ビジネス」と割り切れず苦悩

大河ドラマ「光る君へ」で藤原行成を演じる渡辺大知さん (C)NHK
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大河ドラマ「光る君へ」で藤原行成を演じる渡辺大知さん (C)NHK

 吉高由里子さん主演の大河ドラマ光る君へ」(NHK総合、日曜午後8時ほか)に出演しているミュージシャンで俳優の渡辺大知さん。演じる藤原行成は、同じ藤原姓の道長(柄本佑さん)、公任(町田啓太さん)、斉信(金田哲さん)と共に視聴者から「平安のF4」などと呼ばれ、人気を博しているが、その中で“道長推し”の人物として認識されている。渡辺さん自身は行成と道長の関係性をどう捉えて演じているのか、話を聞いた。

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 ◇いつしか「憧れ」から「欲望をかなえてあげたい存在」に

 藤原行成は、道長よりも6歳下で、「F4」の中では弟分として扱われてきた。道長政権下で蔵人頭に抜てきされると、細やかな気遣いで実務に能力を発揮。政治において欠かせない存在となっている。

 また「書の達人」としても知られ、文字の美しさでは右に出る者はおらず、もてはやされてきた行成だが、渡辺さんは「行成という人は、自分が力を持ちたいというより、他者の欲望をどうかなえるかが大切で。自分がお仕えする道長、一条天皇(塩野瑛久さん)の思惑みたいなものに対して、どうサポートできるか、どうしたら認めてもらえるだろうかというところに自分の欲望がある」と分析する。

 そんな思慮深い行成から見ても、道長は「一番心の読めない相手」。渡辺さんは「たくさん話をしていても道長の思惑って、自分の手に収めることができないような、ちょっと雲をつかむような感じ」と印象を明かす。

 「道長は政に対しても、人としての生き方に対してもすごく思いのある人だと思うのですが、それをひけらかしたりする人じゃないので、『この人はどういうことを考えて、どういうものを目指しているのか』が見えないからこそすごく気になるというか。行成自身が成長して、道長に仕えるようになってからは、『憧れ』からもう少し距離が近づき『欲望をかなえてあげたい存在』になって。それでも『そばにいてもこの人は底知れない、もっと深いことを考えているんじゃないか』と思わせてくれる」

 ◇自分の意図してないようなところで「生きる糧になっていた」

 以前、行成の道長に対する思いを「憧れを超えた恋心」とも表現していた渡辺さんだが、「道長に対して『この人を知りたい』というのが行成の生きる上でのモチベーションにもなっている状態が、ある種“恋心”にも似たというか。憧れを超えたっていうのは、そういう意味合い」と説明する。

 「道長がどう思っているのか、見えないのって気になると思うんですよ、底知れなさというか。この人はこういうとき、どういう気分になるのか、世の中が変わっていくところを、どういう視点で見つめているんだろうとか。『どう思いますか?』と尋ねても、はぐらかされたり。(行成にとって道長は)この人のことをもっと知りたいと追いかけたくなるような存在というか、自分の生きる指針の一つでもあるような」

 史実では道長と行成は同じ日に亡くなってるが、渡辺さんは「その運命のような、巡り合わせを知ったときにドキッとしました」と振り返る。

 「まだクランクインする前だったのですが、行成も自分の意図してないようなところでこの人を知りたいとか、支えたいとか、そういう思いが、勝手に自分の生きる糧になっていたのかなって妄想したりもしました」

 ◇「これはビジネスだ」と思って割り切ることができていれば

 一方で、行成にとって一条天皇はどんな存在なのか。

 「すごく聡明で、自分の意見もしっかり持った上で、周りを気にかけていると思うのですが。ただ若さゆえに自分の感情で突っ走ってしまう人でもあって。でも行成は、一条天皇自身が『本当は悪いこと』と分かっているのも理解している。それは近くにいるからこそ、感じられる部分であり、政治的には今の発言はなしだなって思うことも、一個人として愛せてしまう。だから一条天皇の暴走も何とかいい解決策を見つけられないかという思いで揺れ動かされしまう」

 行成と一条天皇の心の距離の近さを感じている渡辺さん。

 「やっぱり人って(過ごした)時間じゃなくて距離なんだなと思います。最初、一条天皇に会ったときは単純に美しい人、と思っていましたけど、近くにいるようになってから、一条天皇が行成にだけ愚痴も言えるし弱音を吐けるというのもあって、それを単なるワガママにしない、自分だけは汲み取ってあげたいと思えて、行成もそれを誇りに感じていたと思っています」

 やがて一条天皇と道長との間で板挟みとなり、苦しむことになる行成だが、渡辺さんは「たぶんビジネスになりきれなかった」と推測する。

 「行成が『これはビジネスだ』と思って割り切ることができていれば、こんなにも苦労しなかったと思うんです。結構、情、人間の部分で向き合ってしまったから、いろいろな板挟みにあって、苦しんでいったのかなって感じています」

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