緊急取調室 (2025)
第7話 赤い殺意
12月4日(木)放送分
8月1日に放送されたNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「あんぱん」(総合・月~土曜午前8時ほか)の第90回は見どころが満載の回だった。恐らくドラマ全話の中でも一つの節目となる注目回で、視聴者の心をつかんだのはどの場面だったのだろうか? テレビの前の視聴者が画面にクギヅケになっていた程度を示す「注目度」の1分ごとの推移から分析してみた。
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活用したデータは、関東の2000世帯、関西の600世帯で番組やCMの視聴状況を調査しているREVISIO社が公表している独自指標の「注目度」。人体認識センサーを搭載した専用機器でテレビ画面に視線を向けているかを常に計測し、テレビの前にいる人のうち、番組を注視していた人の割合を算出している。数字が高いほど、番組に夢中で目が離せなくなった人が多かったことが分かるというわけだ。
「明日の放送、必見です」。制作統括の倉崎憲チーフプロデューサー(CP)が放送前日の7月31日夜に自身のX(旧ツイッター)で発信した気持ちがわかるほど、第90回はいろいろ盛りだくさんの見逃せない回だった。
東京・中目黒の長屋に引っ越し、新しい生活をスタートさせた、のぶ(今田美桜さん)と嵩(北村匠海さん)。そんな2人のため、朝田家と柳井家の女性陣が集結し、のぶと嵩の結婚のお祝い会が開かれる。宴席を抜け出した2人は共同トイレの手洗い場で、幸せになろうと誓い合う。夫婦として歩み出したのぶと嵩を見届け、朝田家の女性陣は高知へと戻る。
世帯視聴率と注目度(REVISIO調べ、関東地区)の1分ごとの推移を見ると、視聴率は番組の最初から最後までほぼ横バイだが、注目度は激しく上下し、複数の山をつくっているのがグラフで一目でわかる。
注目度の最高値の77%を出した午前8時14分はラストの朝田家の女性陣が高知へ帰る場面。「うち、このまま東京におりたい」と駄々をこねるメイコ(原菜乃華さん)を姉の蘭子(河合優実さん)らが引っ張って連れ帰ろうとしているなか、くら(浅田美代子さん)は振り返り、のぶと嵩に「ありがとう」と言葉をかける。直後に、ナレーションは、くら(浅田美代子さん)が釜次(吉田鋼太郎さん)のもとへと旅立ったと告げて終わる。なかなか印象的な場面だ。
次に高かったのは73%の午前8時4分と7分。4分は、結婚のお祝い会の宴席で、女性陣は夫婦の関係性で盛り上がる。その時、千代子(戸田菜穂さん)が「私は(夫を)支えるというより、寛(竹野内豊さん)さんにうんと惚(ほ)れちょりましたき」とのろけ、座が盛り上がった場面だと思われる。
7分は、「こんな女に誰がした」をメイコが熱唱した後、くらが「嵩くん。あと一つだけ。頼むき、長生きしてね。のぶより長生きしてね」とお願いする場面だろうか。ラストの結末を暗示するような場面だ。この後、お手洗いへ行った千代子が天井に穴が空いていたと驚いた様子で戻ってきて、登美子(松嶋菜々子さん)はのぶが気の毒だと嘆くが、「ええがです。私は幸せですき」とのぶは微笑む。このあたりまでが7分台だ。
この後、注目度は低下し、ラストまで低迷する。実は、宴席を抜けた嵩を、のぶも追いかけ、2人は共同トイレの手洗い場で座って会話する場面だ。主題歌が流れるオープニング部分以外で、最低の注目度65%だった午前8時12分は「うち……嵩と会えて……ほんまによかった」と話すのぶを、嵩はそっと抱き寄せ、そのまま口づけを交わす。SNSでは盛り上がった場面だが、朝のお茶の間ではさすがに注視していられなかったということかもしれない。
通常の回と比べると、全体的にアップダウンが激しく、いくつも山ができたように感じる。倉崎CPの思い、スタッフの伝えたかったことはそれぞれ視聴者にもきちんと届いていたようだ。(文・佐々本浩材/MANTAN)
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