高石あかりさん主演のNHK連続テレビ小説（朝ドラ）「ばけばけ」（総合、月～土曜午前8時ほか）の第27回（11月4日放送）で、視聴者を最も引き付けた場面はどこだったのだろうか？　テレビの前の視聴者が画面にクギヅケになっていた割合を示す「注目度」（REVISIO社調べ、関東地区、速報値）の1分ごとの推移を調べたところ、最高値は午前8時1分の72.4％だった。

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　「ばけばけ」は113作目の朝ドラ。ヒロインの松野トキと、その夫となるレフカダ・ヘブンのモデルは、松江の没落士族の娘、小泉セツと、「怪談」などの著作で知られるラフカディオ・ハーン（小泉八雲）だ。ドラマの中では大胆に再構成し、登場人物名や団体名などは一部改称してフィクションとして描くという。

　◇「シジミさん」って誰？　最高値は午前8時1分の72.4％

　第27回は、花田旅館の主人、平太（生瀬勝久さん）とけんかを始めたヘブン（トミー・バストウさん）は旅館を出ていくと言ってきかない。ヘブンから家探しを依頼された錦織（吉沢亮さん）は、知事（佐野史郎さん）にはヘブンの世話をする女中も見つけるよう指示され、奔走する。

　テレビ画面の前にいる人のうち、画面を実際に注視している人の割合を調べた注目度は、放送開始後すぐにピークを迎え、主題歌が流れるオープニングで急速に低下。その後は小幅に上下しながら、終盤に向け緩やかに注目度は上がっていった。

　この日のピークは、トキ（高石さん）とフミ（池脇千鶴さん）が花田旅館にしじみを売りに来る冒頭のシーン。午前8時0分にいきなり71.5％をたたき出すと、続く午前8時1分には第27回の最高値72.4％を記録。68.6％とやや下がった午前8時2分まで、視聴者の視線をクギヅケにし続けた。

　午前8時0分台は、霧がかかった松江の街でトキとフミがシジミを売り歩く美しいシーンで幕開け。2人は花田旅館にやってくる。フミが午前2時半から加工したことをアピールしたシジミのむき身も、おかみのツル（池谷のぶえさん）が買ってくれることになり、トキとフミはホッと一息をつく。

　この日の最高値となった午前8時1分台は、場所を花田旅館の中に移し、トキとフミ、ツルの世間話は続く。登校するため、そこに降りてきたヘブンは、トキに気付き、近づいてくる。

　「おはようございます、シジミさん」。ヘブンはそう言うと握手を求め、右手を差し出す。「シジミさんって、呼ばれちょるの？」と尋ねるフミに、「初めてだけど」と答えるトキの反応が絶妙で笑いを誘う。

　続いて「ママさん、おはようございます」と右手を出されたフミ。この辺りからが午前8時2分台で、「あなたの母親で、ないけど」とフミは淡々と握手する。ヘブンが学校に向かった後、話題はヘブンと平太のけんかの話に移る。注目度が特に高くなったのは、何気ない会話だが、ヘブンとトキ、フミの息の合った掛け合いに思わず視聴者も注視してしまったという感じだろうか。

　◇ヘブンの女中はなみ？　トキ？

　終盤で注目度が少し跳ねたのは、午前8時11分の70.0％と午前8時14分の69.4％の2回。こちらは物語が急展開を迎える場面だ。

　午前8時11分台は、ヘブンの女中を探しているとうわさを聞きつけ、候補として名乗り出た遊女のなみ（さとうほなみさん）を、ヘブンと錦織が訪ねる場面。なみが、用意していた手作りの弁当をヘブンに差し出したあたりからが午前8時11分台だ。弁当を一口食べたヘブンは「オイシイ！」を連呼。料理を気に入った様子で、心配そうに見つめていたなみもほっとした様子。錦織も、視聴者も、なみも、これで決まったと感じた瞬間だったに違いない。

　午前8時14分台は、その錦織が松野家を訪れ、トキに「ヘブン先生の……女中になってほしい」と頼む場面。あの後、一体何があったのか？　ここまでの展開で、なみが有力だと思っていた視聴者には意外な言葉だっただろう。

　なみに女中“当確”が出た午前8時11分台と、トキに女中の話が舞い込む午前8時14分台という、相反する場面でそろって注目度がきれいに上昇。物語の展開に、多くの視聴者が見事にはまっている状況がうかがえる第27回だった。

　活用したデータは、関東の2000世帯、関西の600世帯で番組やCMの視聴状況を調査しているREVISIO社が公表している独自指標の「注目度」。人体認識センサーを搭載した専用機器でテレビ画面に視線を向けているかを常に計測し、テレビの前にいる人のうち、番組を注視していた人の割合を算出している。（文・佐々本浩材／MANTAN）