解説:「豊臣兄弟!」では間もなく 過去2回の“戦国大河”でも描かれた「金ヶ崎の退き口」 そのとき、秀吉は!?

大河ドラマ「豊臣兄弟!」第14回の場面カット (C)NHK
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大河ドラマ「豊臣兄弟!」第14回の場面カット (C)NHK

 俳優の仲野太賀さん主演のNHK大河ドラマ豊臣兄弟!」(総合、日曜午後8時ほか)。4月12日放送の第14回「絶体絶命!」では、「金ヶ崎の退き口(金ヶ崎の戦い)」が描かれるのか、注目を集めている。「金ヶ崎の退き口」は、浅井長政の裏切りによって窮地に陥った信長の決死の撤退戦だ。殿(しんがり)を務め、評価を高めたとされる秀吉だが、キャラクター、立ち回りともにどこか対照的だった過去の2回の“戦国大河”、「麒麟(きりん)がくる」(2020年)と「どうする家康」(2023年)における、“金ヶ崎”回をおさらいしたいと思う。

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 ◇佐々木蔵之介“秀吉”は鼻水垂らして「飛ばぬ虫で終わりたくない」と

 長谷川博己さん扮(ふん)する明智光秀を主人公に戦国の英傑たちの運命も描く、エネルギッシュな群像劇「麒麟がくる」では、第31回「逃げよ信長」が“金ヶ崎”回に。本作で秀吉役を務めたのは佐々木蔵之介さん。同回は、染谷将太さん演じる信長、佐々木さん演じる秀吉、そして風間俊介さん演じる家康の「三英傑」が、劇中で初めてそろった回となっていた。

 ついに越前へ向けて出兵を開始した信長(染谷将太さん)。破竹の勢いで敦賀まで制圧をするが、朝倉義景(ユースケ・サンタマリアさん)のいる一乗谷まであと一歩に迫った金ヶ崎で、浅井長政(金井浩人さん)が信長を突然裏切り、背後から迫ってくる。朝倉・浅井に挟まれ絶体絶命の信長軍。このまま前進するという信長を、光秀は「織田信長はいま死んではならない、逃げるべし」と強く説得。それは数万の兵を率いた熾烈(しれつ)な退却戦の始まりだった……というストーリーが展開した。

 「金ケ崎の退き口」を背景に、さまざまな人間模様が描かれたが、放送当時、光秀に殿(しんがり)を志願する藤吉郎(秀吉)の魂の訴えも、視聴者の間で話題に。

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 狭い地べたをはい回って一生を終える飛べない甲虫(ヒメマイマイカブリ)に自身を重ね、自らの出自について話す秀吉。年の離れた妹を見殺しにした過去を告白し、あさましい自分に生きる値打ちはあるのか自問しつつ、それでも「わしにも羽はある。わしは飛ばぬ虫で終わりたくない」と訴え、ついには「死んで名が残るなら、藤吉郎、本望でござる」と自分が殿を務めることを光秀に承諾させた。

 同回を演出した一色隆司さんは当時「このシーンで佐々木蔵之介さんとは、事前にどういう感情の流れにするかを相談させていただきました。印象に残っているのは、佐々木蔵之介さんの演技プラン通りにシーンが進んで行くのですが、感情的になったときに鼻水が流れてしまいます。しかし、秀吉のキャラクターを考えると、これもとても秀吉らしい……と、途中で止めることはしませんでした。そして、佐々木さんも芝居をやめることなく演じ続けてくださいました」と話している。

 さらに一色さんは「それによって秀吉の思いの強さが表現でき、素晴らしいシーンとなったと思います」と手応えを明かすと、「秀吉の思いが強ければ強いほど、光秀の思いも研ぎ澄まされていき、光秀の武将としての決意を感じることができます。また、それを見ることによって、秀吉はより思いを強く持って光秀に訴えかける。このシーンは、文字通り、お互いの思いをぶつけ合うことによってどんどん2人の絆が深くなっていく芝居が構築できたのです」とも語っていた。

 本作における秀吉のポジションは、主人公・光秀の最大のライバル。だた、この時点では、織田家臣団の中ではまだまだ下っ端で、何とかのしあがろう、何とか信長に認められるよう功績を残そう、と奮闘している最中。秀吉にとってもドラマにとっても、ここが「大きなターニングポイント」となったのは間違いないだろう。

 ◇ラスト5分のムロツヨシ劇場 クズでサイコパスな秀吉が家康を脅す

 “決死の撤退戦”自体は光秀目線での描写のみながら、その後「自分が殿を務めたことを他の織田家臣に信じてもらえず」肩を落とす秀吉を思って、光秀が柴田勝家(安藤政信さん)らに厳しく意見するなど、さらなるドラマもあった「麒麟がくる」の“金ヶ崎”回。一方、3年後の「どうする家康」では……。

 「どうする家康」は、新たな視点で、誰もが知る歴史上の人物・徳川家康の生涯を描く、スピード感あふれる波瀾(はらん)万丈のエンターテインメント作で、松本潤さんが主演を務めた。またこのときの秀吉役はムロツヨシさんだった。

 “金ヶ崎”回にあたるのは、第14回「金ヶ崎でどうする!」。信長(岡田准一さん)と共に、朝倉義景との戦に臨んだ家康(松本さん)。その裏では、浅井長政(大貫勇輔さん)が謀反を決意していた。長政の妻・お市(北川景子さん)の心中を察した侍女・阿月(伊東蒼さん)は、謀反を知らせるため、信長が陣を敷く金ヶ崎へ向かうと、傷つきながら十里以上を走り抜き、「お引き候へ」との言葉を家康伝え、息絶える。

 阿月の亡骸(なきがら)を前に再度、信長に撤退するよう説得を試みる家康。朝倉軍と浅井軍が近づく中、信長は殿に藤吉郎(秀吉、ムロさん)を指名し、家康には「好きにしろ」とだけ言い残し、金ヶ崎を離れる。

 と、その瞬間、秀吉はどう反応したのか。信長の命令に驚きの表情を浮かべると、「ああ! 死んだ! あ~! こりゃ死んだわ! もう一度、おっかあと抱き合いっこしたかったあ~」と床にはいつくばって大声で嘆くも、次は笑い声を上げ、「ここでもし生き延びれば、わしゃ、まっとまっと上に行けるがや!」と急にやる気に。

 さらに家康に向かって「ここで逃げれば、あんたは殿を見捨てたことになる。あんたは将軍様を裏切って、浅井・浅倉と手を組むつもりだと、わしゃあ、言いふらしたるよ」と脅しともとれる言葉で家康に協力を申し出ると、家康からクズ呼ばわりされようものなら、「あんたのために言ったんとるんだがや」と笑顔で自身の正当性を主張した。

 同回の終了まで残り5分を切ったところで展開された「ムロツヨシ劇場」。SNSでは「秀吉がクズすぎる」「ムロ秀吉のクズっぷりが、あまりにもすごすぎてやばい」「サイコパスだなー、秀吉」「そして、サイコパス秀吉がパワーアップしてる」「ムロツヨシの秀吉、本当に気持ち悪いサイコパスで演技としては最高なんだけど見るたびに気分は最悪になる」といった声が次々と上がった。

 “決死の撤退戦”自体は次回へ持ち越し……かと思いきや、第15回「姉川でどうする!」では「数日後」として、「その後、何やかんやありましたが、無事、金ヶ崎の戦いを乗り切ったのでした」とナレーションで語られるのみで終了。そんな「どうする家康」からちょうど3年。「豊臣兄弟!」の第14回「絶体絶命!」は、どんな“金ヶ崎”回となるのか、4月12日の放送に注目だ。

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