解説:「ばけばけ」注目度ランキング 「ダキタクナイ!」を超える場面はあったか? 総集編放送前にクギヅケ場面を振り返る

連続テレビ小説「ばけばけ」のロゴ (C)NHK
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連続テレビ小説「ばけばけ」のロゴ (C)NHK

 3月に終了したNHK連続テレビ小説(朝ドラ)「ばけばけ」(総合、月〜土曜午前8時ほか)。半年間に放送された全125回のうち、視聴者はどの回を最も熱心に見ていたのだろうか? 没落士族の娘で、ヘブン(トミー・バストウさん)の妻となった松野トキ(高石あかりさん)の物語は波乱万丈の展開。これまでの朝ドラ作品と比べると、登場人物を絞り込み、トキの親族や友人らとの人間関係を丁寧に描くことで、ヘブンやトキの歩みへの深い理解にいざなった。

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 5月4日には、「総集編①②(前編)」(総合、午前8時15分)と「総集編③④(後編)」(総合、午前9時50分)が放送される。再び「ばけばけ」の世界に触れられるのを前に、テレビの前の視聴者が画面にクギヅケになっている程度を示す「注目度」で振り返ってみた。

 活用したデータは、関東の2000世帯、関西の600世帯で番組やCMの視聴状況を調査しているREVISIO株式会社が公表している独自指標の「注目度」。人体認識センサーを搭載した専用機器でテレビ画面に視線を向けているかを常に計測し、テレビの前にいる人のうち、番組を注視していた人の割合を算出している。数字が高いほど、番組に夢中になり、目が離せなくなった人が多かったことが分かるというわけだ。

 ◇「個人全体」1位はやはり「ダキタクナイ!」

 注目度のランキングのうち、まず幅広い年代が対象となる「個人全体」と「男性」「女性」の上位10位までの放送回を調べてみた。

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 「個人全体」の1位は、注目度74.0%を記録した第34回(2025年11月13日放送)。ヘブンが思わず発したセリフ「ダキタクナイ!」がSNSのXでトレンド入りするほど、話題になった回だ。1分ごとの瞬間最高注目度(速報値)でも、「ダキタクナイ」のセリフが飛び出した午前8時12分に、「ばけばけ」放送期間で最高の83.0%をたたき出した。前半戦のランキングで1位だった第34回は、全話通しでもやはり強さを見せつけた。

 第34回は、トキがヘブン(トミー・バストウさん)の女中として働き始めたことが松野家の家族にとうとうばれてしまう。「あんな大金もらっちょるんだもん、つまりは……」と母親のフミ(池脇千鶴さん)に問い詰められ、観念したトキは、涙を浮かべながら、ヘブンのラシャメン(洋妾)になったことを明かす。祖父の勘右衛門(小日向文世)や父親の司之介(岡部たかしさん)らがヘブン宅へと“殴り込み”をかけるあたりから注目度が上昇していく。

 勘右衛門はヘブンに木刀を振りかざし、司之介は「娘をだまくらかしたな」と錦織(吉沢亮さん)の胸ぐらをつかむ。日本語が分からないヘブンは怒っている理由が分からず、錦織に説明を求める。錦織が、怒っているのはトキの家族で、娘が妾になって喜ぶ家族はいないと説明すると、今度はヘブンが怒り始める。「冗談じゃない。ふざけるな」と英語で激高し、日本語で「オトキサン、メカケ……ラシャメン……チガイマス。オトキサン、ジョチュウ! オーケー?」と叫ぶ。

 実はこれで“騒動”がいったん落ち着くと思ったのか、注目度はこの場面で少し下がっていた。この後にあの破壊力がある一言「ダキタクナイ!」がさく裂する。

 ヘブンは何かを伝えようと、一生懸命辞書を引き、見つけた単語が「ダキタクナイ」。それを聞いたトキは「はあ?」「それはそれで失礼だけん!」と漏らす。即座にフミは「抱きたいでしょ!」と言い返し、司之介も「そげじゃろが!」。勘右衛門は「ペリー、覚悟~!」と木刀を構えてヘブンに斬りかかろうとする。

 深刻な場面が、急にコメディーに変わる「ばけばけ」らしい一場面だ。落語家の故桂枝雀さんが笑いが生まれる理由に「緊張と緩和」を提唱したが、まさにこの場面は緊張から一転、緩和に転じた場面で、「ダキタクナイ」という意外なワードが投じられた。「ダキタクナイ!」のセリフはSNSのXでトレンド入り。視聴者が一番注視した回というのは納得の結果だ。

 ◇女性がクギヅケ? 衝撃的な出来事に見舞われるトキ 男性は?

 「ダキタクナイ」は、「男性」のランキングで2位、「女性」のランキングで1位と、男女ともに注目度が高い。ただ、実は「ダキタクナイ」以外は、「男性」と「女性」で上位にランキング入りした回にあまり強い共通性がない。男性と女性の好みに微妙な違いがあるということだろうか。

 「個人全体」2位タイの71.5%を記録した第30回(2025年11月7日放送)と第16回(2025年10月20日放送)は、「女性」のランキングでそれぞれ4位と3位に入る「女性」が引き付けられた回といえる。それに比べると、「男性」はそれぞれ6位と8位とやや低い。

 第30回は、トキがたまたま街で再会を果たした三之丞(板垣李光人さん)から、タエ(北川景子さん)と三之丞が松江を離れた後、何があったのかを聞き、タエの窮状を知ったトキは、ヘブンの“ラシャメン”になると決める重要な回だ。物乞いをするタエさまが、ついにめぐんでくれた人に頭を下げる衝撃的な場面もあった。

 第16回は、我慢に我慢を重ね、借金苦の松野家のためにと働いてきた夫の銀二郎(寛一郎さん)が松野家を飛び出し出奔する回。布団で目を覚ましたトキが銀二郎がいなくなっていることに気付き、「いやー」と悲鳴を上げる。「甘えちょった……。ずっと一緒だと思って甘えちょった……」と涙を流し悔やむトキが印象的だった。

 第30回と第16回に共通するのは、ヒロイン・トキの人生の節目となる場面ということだろうか。女性はヒロインに襲い掛かる出来事に、まるで自分のことのように、非常に素直に反応している感じを受ける。

 「個人全体」の4位の第39回(70.6%、2025年11月20日放送)と、5位の第40回(70.3%、2025年11月21日放送)は、逆に「男性」のランキングでそれぞれ1位と4位にランクインした。「女性」のランキングでは、それぞれ36位と13位とかなり注目度が低い。

 第39回は、女中として働き始めたトキ(高石さん)が、ヘブンの評価を少しでも得ようと、生け花やお茶を習い直そうと考える。そこで訪ねるのが、長屋暮らしを始めた実母のタエのもとだ。ヘブンの気遣いでパイナップルを持参したが、切り方が分からないトキ。タエが「三枚おろしは?」などと口にするなど、少しコミカルな会話も続く。実の母子が、2人きりの楽しい時間を過ごすことができた、ちょっとじーんとする場面でもあった。

 第40回は、松江中学の生徒たちにヘブン自身にまつわる問題をヘブンが出題する“ヘブンクイズ”の模様が描かれた。生徒たちが「ヘブン先生のことを何も知らない」ということから、“ちょっとしたお遊び”としてヘブンの家でクイズ大会の開催となったのだが、そこに錦織(吉沢亮さん)やトキも参加する。あせればあせるほど、正解できない錦織の慌てっぷりに錦織の人間性も感じられた回だった。

 女性の注目度が高かった第30回と第16回が“王道”の展開とすれば、男性の注目度が高かった第39回と第40回はやや“異端”な回だろうか。パイナップルの切り方で、あーでもない、こーでもないと会話を続ける母子。“ヘブンクイズ”でほぼ15分を押し切った異色の展開だ。男性はそういう意外性たっぷりのひねった内容に引き付けられるのかもしれない。

 ◇「カゾク……ナル……デキナイ!」 トキとヘブンの結婚生活は山あり谷あり

 「個人全体」「男性」「女性」のランキングを見て、あることに気付かれただろうか? 実は10位までは今回の「総集編①②(前編)」の第65回までの放送回ばかりなのだ。「総集編③④(後編)」に見どころがなかったのかというと違う。

 次に、男女13~49歳のやや若い世代を対象にした「コア視聴層」や、「瞬間最高注目度」、いわゆる“世帯視聴率”に当たるREVISIO社の「世帯テレビオン率」を見てみると、トキとヘブンが結ばれた第66回以降もランクインする。

 若い世代の「コア視聴層」は、「個人全体」と比べると、やや“ラブ”に関係する回が上位に入っている感じがする。1位の第10回(2025年10月10日放送)は、最初の夫、銀二郎(寛一郎さん)の婿入りが決まって松野家にやってくる回。2位の第5回(2025年10月3日放送)は、松江の八重垣神社で恋占いをするという、乙女チックなシーンだが、この後の展開を暗示するかのように、トキだけ一向に結果が出なくてあせるという楽しい回だ。

 それに続いて3位に入ったのがトキとヘブンの結婚を祝うため、松野家と雨清水家一同が集まる第69回(77.5%、2026年1月8日放送)だ。雨清水家の状況について、うそにうそを塗り固め、本当のことを話そうとしないトキの姿勢に、隠し事が何より嫌いなヘブンの怒りが爆発。司之介が「これで晴れてめでたく家族じゃ」「なっ、先生!」と振った直後、ヘブンは「カゾク……ナル……デキナイ!」と不満を爆発させエンディングを迎えるという衝撃的な展開だった。

 ちなみに、6位の第116回(76.2%、2026年3月16日放送)は、東京・大久保に引っ越した後のストーリーの初回で、長男の勘太と次男の勲も成長し、穏やかな日常が描かれた。7位の112回(75.9%、2026年3月10日放送)は、熊本に引っ越したトキとヘブンが久しぶりに松江に戻った回。トキは幼なじみのサワ(円井わんさん)と再会を果たし、庄田多吉(濱正悟さん)と夫婦になったことを知る。トキはもちろんだが、視聴者も幸せな気分になれた場面だった。

 ◇瞬間最高注目度に最終週のエピソードがランクイン

 いわゆる“世帯視聴率”に当たる「世帯テレビオン率」でランクインしたのは、4位の第78回(10.1%、2026年1月21日放送)。遊女のなみ(さとうほなみさん)に身請けの話が舞い込むが、「許されるのであれば、数日だけ、数日だけ、待ってごしなさい」とお願いしたものだから、店の主人から怒鳴られるという回だ。このあたりは、トキだけでなく、サワやなみも転機を迎え、見ていて少しつらくなる展開が続いたあたりだった。

 「瞬間最高注目度」(速報値)のランキングには、最終週の名場面が入った。3位に入った第121回(2026年3月23日放送)は、胸の痛みを感じ、自身の死を予感し始めたヘブンが、財産を全てトキに渡すと書いた遺言書を手渡し、「コノ……イタミ、オオキクナッタラ、シヌデショウ」と打ち明ける。その後、昼寝から起きてきたヘブンはトキに「ごめんなさい、ママさん、治りました」と胸の痛みは治まったと伝えるあたりが、ピークの81.7%だった。

 5位の第123回(2026年3月25日放送)は、ヘブンの死を知った来日したイライザ(シャーロット・ケイト・フォックスさん)がトキと話すうち、ヘブンが「KWAIDAN」を書いたきっかけがトキだと知り、激しい怒りをトキにぶつけ始める。その場面が77.8%を記録した。

 「ばけばけ」は、最終回のラストと第1回の冒頭の場面がつながる劇的な構成になっている。「総集編」で通して見てみると、また新たな「ばけばけ」の世界と出会え、まったく違った場面にクギヅケになるかもしれない。(文・佐々本浩材/MANTANWEB)

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