50年代末にフランスで起こった映画運動「ヌーベルバーグ(新しい波)」の先駆者ルイ・マル監督による「死刑台のエレベーター」(57年)のリメークが9日、公開される。メガホンをとったのは、これまで「寡作」といわれてきた緒方明監督だ。前作「のんちゃんのり弁」からわずか1年での公開。オリジナルでモーリス・ロネさんが演じていた役を阿部寛さんが、ジャンヌ・モローさんが演じていた役を吉瀬美智子さんが演じている。
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大手企業グループの会長の年若い妻、芽衣子(吉瀬さん)は、愛人の時籐(阿部さん)をそそのかし、夫殺害の計画を立てる。完全犯罪になるはずだったが、犯行後、時籐が乗ったエレベーターが止まったことで、計画はもろくも崩れ去る。果たして2人を待ち受ける結末とは……?
これほど難しいリメークはないだろう。なぜなら、映画ファンの多くは、オリジナルを劇場でなり、ビデオやテレビなどで見ており、その強烈なインパクトを体験しているはずだから。比較されるのは免れない。企画者も緒方監督も、ずいぶん大胆なことに挑んだものだ。比較されることは緒方監督自身も覚悟していたようで、完成披露の舞台あいさつで、「暴挙、愚挙かもしれないが、やってみたいという好奇心のほうが勝った」と話していた。
その結果。緒方監督はオリジナルに敬意をはらいながらも大胆にリメークしてみせている。オリジナルではドイツ人観光客夫婦として描かれていた人物を、ここでは、暴力団組長とその情婦という設定に変え、彼らに玉山鉄二さん、北川景子さんふんするカップルをからませることで、登場人物それぞれがより立体的に見えるよう工夫している。また、オリジナルがそうだったように、歯が浮くようなせりふを彼らに堂々と言わせている。それはあたかも、リアルを求める最近の映画の観客に、映画ならではのフィクションの魅力を思い出させようとしているかのようだ。
なお、オリジナル版「死刑台のエレベーター ニュープリント版」が、同日からシアター・イメージフォーラム(東京都渋谷区)を皮切りに全国で順次公開される。これを機に見比べてみるのも一興だろう。9日から角川シネマ新宿(東京都新宿区)ほか全国で公開。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)
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