ピンク映画からそのキャリアをスタートさせ、その後「MOON CHILD」(03年)や「フライング☆ラビッツ」(08年)、「感染列島」(09年)といった作品を手掛けてきた瀬々敬久監督が、企画を立て始めた06年から足かけ4年をかけて完成させた4時間38分の大作「ヘヴンズストーリー」が全国で順次公開中だ。
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家族を殺された少女。妻子を殺され復讐(ふくしゅう)を誓う青年。若年性アルツハイマーにかかった人形作家と、彼女が養子にする殺人犯。総勢20人以上もの人々が登場し、10年にわたる壮大なドラマを形作っていく。
ここに登場する人たちの心は、みな屈折している。ザラついた心を抱え、行き場のない社会を、救いを求めてさまよい続けている。彼らの体験をつづったこの映画を、ただの作りごとと片付けることはできない。なぜなら、善悪の判断がつきづらくなっている今の世の中にあって、ここで目にすることは、わが身にも実際に起こりうることだと思えるからだ。
上映時間の長さを聞いて、腰が引けない人はいないだろう。しかし、映画は全部で9つの章に分かれており、それぞれに登場人物がいて、彼らが入れ替わり立ち代わりそれぞれの物語を展開させていくため、退屈することはない。そして、彼らの動きは少しずつからまり、やがては一つにまとまる。最終章での再生を予感させる映像が感慨深い。
寉岡萌希(つるおか・もえき)さんや長谷川朝晴さんといった、なじみは薄いながらも確実な演技力を持つ俳優が出演。そのほか忍成修吾さん、村上淳さん、70年代に伝説のフォーク歌手とうたわれた山崎ハコさんらが名を連ねる。また、わずかなシーンながら佐藤浩市さん、柄本明さんらが姿を見せる演出も心憎い。2日からユーロスペース(東京都渋谷区)、9日から銀座シネパトス(東京都中央区)ほか全国で順次公開。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)
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