注目映画紹介:「人生万歳!」理屈っぽいオヤジと若い女のコンビ アレン節さく裂の通算40作目

「人生万歳!」の一場面。(C)2009 GRAVIER PRODUCTIONS,INC.
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「人生万歳!」の一場面。(C)2009 GRAVIER PRODUCTIONS,INC.

 ウディ・アレン監督の通算40作目「人生万歳!」は、監督作としては5年ぶりにニューヨークを舞台に、さえなくて神経質で理屈っぽいオヤジと若い女がからむアレン節さく裂の作品に仕上がっている。

ウナギノボリ

 ボリス(ラリー・デビッド)は天才物理学者だったが、頭が良過ぎて「人生の無意味さ」を悟ってしまい、自殺未遂を起こして仕事や妻やマンション、すべてを失った。日々に楽しみが見いだせない。ある夜、アパートに帰ると、若い女性に声をかけられる。彼女は南部の田舎町から家出してきたメロディ(エヴァン・レイチェル・ウッド)。ボリスは数晩だけのつもりで彼女を泊めてあげることにする。ところが、メロディは居座ってしまい、しかも、いつの間にか彼女はボリスに恋をしていた! 最初は年の差や知能指数の違いから相手にしなかったボリスだったが、やがて好意を抱いて結婚。新婚生活を満喫しているところに、メロディの母親がやって来る……というストーリー。

 久々にニューヨークを舞台に繰り広げられるのは、アレンお得意のハチャメチャなラブコメディーだ。70年代半ばの「アニー・ホール」時代に一度脚本が書かれてお蔵入りしていたそうで、だからなのか、その時代の雰囲気が漂う懐かしい作風に仕上がっている。弾丸トークで理屈を並べながら、世の中の真実を説く主人公ボリスと、世間知らずの若いメロディとのかみ合わなさがおかしく、「人間、180度違うタイプ同士の方が案外うまくいく?」と思えてきてしまうほど。そして、話がこのカップルだけにとどまらないあたりがアレン流マジックだ。メロディの母親、父親、ボリスの友だち……脇役たちのおかしなもつれ合いも見逃せない。

 アレンの分身となる主人公を演じているラリー・デビッドはアメリカを代表する人気コメディアン。飛び出す毒舌やぐちも、嫌みなく軽妙に演じ、作品のトーンを決定付けた。アレン作品で久しぶりにマンハッタンの風景を見るのも楽しい。ちなみにメロディがユニクロにショッピングに行くシーンもある。11日から恵比寿ガーデンシネマ(東京都渋谷区)ほか全国で順次公開。ちなみに恵比寿ガーデンシネマは、11年1月28日をもって休館が決まった。(キョーコ/毎日新聞デジタル)

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