乙葉しおりの朗読倶楽部:第18回 芥川龍之介「蜘蛛の糸」 天才も悩んだ初の児童文学

「蜘蛛の糸・杜子春」作・芥川龍之介(新潮文庫)の表紙(左)と乙葉しおりさん
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「蜘蛛の糸・杜子春」作・芥川龍之介(新潮文庫)の表紙(左)と乙葉しおりさん

 美少女キャラクターが名作を朗読してくれるiPhoneアプリ「朗読少女」。これまでに50万ダウンロードを突破する人気アプリとなっている。「朗読少女」で、本の朗読をしてくれるキャラクター、乙葉しおりさんが「朗読倶楽部」の活動報告と名作を紹介する「乙葉しおりの朗読倶楽部」。第18回は、芥川龍之介の「蜘蛛の糸」だ。

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 みなさんこんにちは、乙葉しおりです。

 もうすぐ大型連休、ゴールデンウイークですね。

 この時期は旅行や帰省のニュースがテレビやラジオをにぎわせますけど、実は本にもなじみ深いシーズンなのはご存じですか?

 まず、4月23日は「世界図書・著作権デー」と、「子ども読書の日」です。

 「世界図書・著作権デー」はちょっと耳慣れないかもしれませんが、96年から実施されている本の著作権保護促進を目的とした記念日で、国連などが定めた世界的な記念日「国際デー」にも認定されているんです。

 「子ども読書の日」は、01年に成立した「子どもの読書活動推進法」で定められたもので、全国の図書館で子どもを対象とした読書に関するイベントなどを実施しているんですよ。

 実は、朗読倶楽部が活動している校内図書館でもちょっとしたイベントが予定されていて、今日はその準備のお手伝いをしていました(^−^)

 そして、4月30日は「図書館記念日」です。

 これは1950年に「図書館法」が公布されたことにちなんでいるそうです。

 こうして見ると、読書の秋ならぬ、“読書の春”を感じてしまいますね。

 連休は、図書館に行って普段読まない珍しい本を探してみるのも楽しいと思いますよ(*^^*)

 ではここで、朗読倶楽部のお話……初めてのクラブ活動の続きです。

 汚れていた図書館の控室をきれいにして、残されていた本をみんなで補修しましたけど、部屋の中は本の入った段ボール箱だけで、椅子一つありません。

 図書館の椅子を借りるわけにはいきませんし、正式な部としてまだ認められていませんから部費も設備もありません。

 家から持ち寄るとか、ござを敷いて座布団を用意するとか、いろいろなアイデアを出しあったんですが、結局、意外なところから助けてもらえることになりました。

 それは、クラブハウスで使われていた机や椅子、棚などの備品。

 改築することになっていたクラブハウスが備品を入れ替えるとのことで、不要になったものをいただくことができたんです。

 これも先生が手配してくださったことで、本当に先生には感謝の気持ちでいっぱいです。

 部長さんは「掃除をサボった分働いてもらった」と言ってましたが……。

 こうして控室は部室らしい雰囲気になっていったんですけど、その後もみかえさんがティーセットを置くようになったり、部長さんが自分のライトノベルをたくさん本棚に入れてしまったり、なぜか先生が司書室を使わずに部室で仕事をしていたりと、最初のほこりだらけな荷物置き場だったことがうそみたいに、にぎやかな場所になっていったんです。

 ……と、いうところで、今回はここまで。

 次回もまた、よろしくお願いしますね(*^^*)

■しおりの本の小道 芥川龍之介「蜘蛛の糸」

 こんにちは、今回ご紹介する一冊は、前回に続いて芥川龍之介さんの「蜘蛛(くも)の糸」です。

 極楽と地獄をつなぐ、一本の細い「蜘蛛の糸」を巡るこのお話は、1918年7月に創刊された児童雑誌「赤い鳥」に掲載されました。

 ある日、極楽にいるお釈迦(しゃか)様が蓮池を通して下の地獄をのぞき見たところ、大勢の罪人に交ざって、「かんだた」という男がいるのを見つけました。

 彼は地獄に落とされてしまうほどの悪事を働いていましたが、一度だけ小さな蜘蛛の命を助けるという良い行いをしていました。

 お釈迦様はその行いに報いるため、極楽の蜘蛛から一本の糸を取り出して彼のいる場所へと下ろします。

 その細い糸に気づいたかんだたは、大喜びで極楽に向かって登り始めたのですが……。

 大変なときに何かにすがる表現として、「おぼれるものはわらをもつかむ」ですとか、「猫の手も借りたい」という言葉がありますが、このお話の中で語られる「蜘蛛の糸」という表現も、みなさんどこかで一度は見聞きされたことがあると思います。

 そのくらい有名なこの「蜘蛛の糸」ですが、実は児童向け作品だということは、お話の内容からも連想されにくいのではないでしょうか。

 それもそのはず、このお話は芥川龍之介さんが初めて挑戦した児童文学で、子供向けのお話とはどういうものを書くべきか、相当悩まれたようです。

 当時の書簡でも、「自信がないので、遠慮なく添削してほしいとお願いした」ということを書き残されています。

 でも、その心配は杞憂(きゆう)に終わりました。

 芥川龍之介さんの大学時代の先輩で「赤い鳥」編集長の鈴木三重吉さんをはじめ、当時の文壇からも「蜘蛛の糸」は高く評価され、こうして現在にまで語り継がれる名作になったのです。

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