注目映画紹介:「ダンシング・チャップリン」 バレエの舞台裏と映画版の2幕構成

「ダンシング・チャップリン」の一場面(配給:アルタミラピクチャーズ/東京テアトル)
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「ダンシング・チャップリン」の一場面(配給:アルタミラピクチャーズ/東京テアトル)

 「それでもボクはやってない」(07年)などで知られる周防正行監督の4年ぶりの新作「ダンシング・チャップリン」が公開中だ。「Shall we ダンス?」(96年)で主演に起用し、それが縁で結婚した元バレリーナの草刈民代さんと2度目のタッグを組んだ。

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 今回の題材は「バレエ」。フランスの振付家ローラン・プティさんが、喜劇王チャールズ・チャップリンの映画をモチーフに作り上げたバレエ作品「ダンシング・チャップリン」の映画版を作ろうと動く周防監督の様子と草刈さんをはじめとするバレエダンサーのレッスン風景などの舞台裏の記録(第1幕)と、完成した映画版(第2幕)の2幕で構成されている。出演者はそのほか、オリジナルのバレエ版でもチャップリンを演じたルイジ・ボニーノさん。草刈さんは「キッド」での盗みを働く少年や、「街の灯」の盲目の花売り娘などを演じている。草刈さんにとっては、バレリーナ引退公演後に見せた“最後の踊り”でもある。

 第1幕では、映画化に対するプティさんの予想外の「ダメ出し」に困惑する周防監督や、呼吸が合わない若手ダンサーの交代を提案する草刈さんなど、バレエの華やかな舞台とは異質の、厳しい現実を見ることができる。また、20演目で構成された“プティ版”を、監督自らが13演目に短くした“周防版”の幕が上がる第2幕。「黄金狂時代」「小さなトゥ・シューズ」「街の灯」……どの演目にも魅了されるが、中でも「空中のバリエーション」での草刈さんの優美な舞踏にため息がもれる。そして“映画監督・周防正行”らしい幕の閉じ方。バレエ、映画、チャップリン……。それぞれのファンが垣根を越えて楽しめる。いや、それ以外の人々も新たな興味を喚起される作品に仕上がっている。銀座テアトルシネマ(東京都中央区)ほか全国で順次公開。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)

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