乙葉しおりの朗読倶楽部:第20回 太宰治「人間失格」最終回の掲載を待たずに…

太宰治「人間失格」(新潮文庫)の表紙(左)と乙葉しおりさん
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太宰治「人間失格」(新潮文庫)の表紙(左)と乙葉しおりさん

 美少女キャラクターが名作を朗読してくれるiPhoneアプリ「朗読少女」。これまでに50万ダウンロードを突破する人気アプリとなっている。「朗読少女」で、本の朗読をしてくれるキャラクター、乙葉しおりさんが「朗読倶楽部」の活動報告と名作を紹介する「乙葉しおりの朗読倶楽部」。第20回は、太宰治の「人間失格」だ。

ウナギノボリ

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 みなさんこんにちは、乙葉しおりです。

 ゴールデンウイークももう終わりですが、みなさんはどんな休日を過ごしましたか?

 中には、連休が延期になってしまった人もいるかもしれませんね。

 お隣のおじさんはゴールデンウイーク中も背広姿だったのですが、「夏の停電に備えてお盆休みを延長する代わりに連休は仕事」ということでした。

 私は、みどりの日は新宿御苑に、こどもの日は動物公園に行ってきました。

 意外と知らない人も多いんですけど、こういう場所は特定の祝日に入園料が無料になるんですよ。

 私みたいな高校生のお財布にも優しくて助かります(*^^*)

 みどりの日は、日本ならではの祝日ですけど、こどもの日は世界中で祝われているんですよね。

 ただ、ひとくちにこどもの日と言ってもいろいろな種類があって、日付も違うってご存じでしたか?

 多くの国で制定されているのは6月1日の「国際子供どもの日」、次に多いのは11月20日の「世界こどもの日」だそうですから、5月5日の日本と韓国は少数派なんですね。

 ほかにも国によって、それぞれさまざまな月日にこどもの日が定められていて、世界中で合計すると1カ月以上にもなっちゃうんです。

 全部の国を回って、毎日こどもの日が楽しめたらすてきですよね(^−^)

 ではここで、朗読倶楽部のお話、初めての朗読練習の続きです。

 初めての朗読練習で散々なことになってしまったのは、実は私だけではありませんでした。

 みかえさんも部長さんも、程度の差はあるものの、やっぱりうまく読めなかったんです。

 そもそも基礎がないままにいきなり読み始めても、うまくはいかないですよね。

 息継ぎと緩急のリズムは、対象となるお話を何度か読み込まなければポイントを押さえられませんし、今でも読んだことのない本をいきなり「朗読しなさい」って言われたら、失敗しちゃうと思います。

 もっと基礎から練習を始める必要を痛感した私たちは、まず「朗読の教科書」を探すことにしました。

 幸い部室は図書館の中ですから、探せばすぐに本が見つかるはず。

 その時、今まで黙って様子を見ていた先生が、私たちにこう言いました。

 「図書館の本を使うのもいいが、借りたまま備品にされては困る、いらない本を持っているから蔵書にするといい」と。

 こうして先生から、発声法の本や朗読の教科書などをいただいただけでなく、基礎からも教えていただけることになったのです。

 「知っているなら教えてくれればよかったのに」という部長さんに対し、先生は一言「実感した方が素直に教えを請う気になれる」。

 どうして先生がこれらの本を持っていたのか、その時はあまり疑問に思わなかったのですが……。

 その秘密は、また機会がありましたらお話ししますね。

 ……と、いうところで、今回はここまでです。

 次回もまた、よろしくお願いしますね(*^^*)

■しおりの本の小道 太宰治「人間失格」

 こんにちは、今回ご紹介する一冊は、太宰治さんの「人間失格」です。

 太宰治さんの代表作のひとつであるこのお話は、1948年に全3話の連載小説として発表され、09年には生誕100年を記念して映画化もされています。

 目の前に置かれた三葉の写真。

 それは同じ男性の、幼年時代と、学生時代と、青年のような中年のような、年齢も分からない時代の写真。

 それぞれの写真に共通しているのは、人間ではない、作りものを見せられているような嫌悪感。

 これは、写真の男性「大庭葉蔵」の半生を、三葉の写真それぞれの時期から語っていくお話です。

 葉蔵は子供のころから他人との感覚のズレを感じていました。

 彼はその感覚に恐れ悩んだ末、人とうまく付き合うため、相手にあわせて自分を装う「道化」を演じるようになります。

 やがて中学校に進学するとその道化芝居にも磨きがかかり、学校では生徒だけでなく先生にも覚えのいい人気者となっていました。

 ところが、同級生の一人にその芝居を見抜かれてしまったことで、薄れていた恐怖がよみがえってしまいます。

 高等学校に進学しても、消えるどころかますます大きくなっていく恐怖の感情を紛らわせるため、彼は退廃的な享楽に身を任せるようになりました。

 しかし、新しい交友関係や急激な環境の変化など恐怖の感情がたまり続ける中、議員の父親が引退したことで経済的にも困窮し、享楽に身を任せることもままならなくなってしまいます。

 彼はすべてから逃れるため、死ぬことを決断するのですが……。

 このお話は太宰治さんの人生との共通点が多く、自伝的な小説と言われています。

 けれど、彼は「人間失格」の最終回の掲載を待たずに自ら死を選び、このお話について本人に確認する機会は永遠に失われてしまったのです……。

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