10年にデビュー25周年を迎えた俳優、仲村トオルさんの映画出演50作目となる記念すべき作品「行きずりの街」(阪本順治監督)のDVDが発売された。「撮影しているときは気づかなかったが、決して大げさではなく運命的なものを感じる」と本作を振り返る仲村さんに話を聞いた。(毎日新聞デジタル)
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今回、仲村さんが演じたのは12年前の高校教師時代に生徒だった雅子(小西真奈美さん)と結婚し離婚した過去を持つ塾講師・波多野。元教え子のゆかり(南沢奈央さん)の失踪(しっそう)を発端に波多野は雅子と東京で再会し、かつて自分が在籍した学園を舞台にした陰謀に巻き込まれていく。
仲村さんは役柄について「波多野は不器用にもほどがあるだろうってくらい不器用な男。ダメなところも含めて彼を肯定してやりたい気持ちはありますが、もし、友だちだったら家に呼びつけて説教したいかも」と笑う。
雅子役の小西さんとはクランクアップまでほとんど会話をしなかったという。しかし「彼女とは信頼感を持って撮影に臨めた」と語るように、演技者としての満足度は高かったようだ。その証拠に、劇中では再会した波多野と雅子が12年間、胸にしまい込んだ互いの感情をぶつけ合い、一夜を共にするシーンがとても印象的だ。「僕はあのシーンを撮影後に初めて見たとき、なぜか泣いてしまったんです。その数カ月後に見たときも涙が出て来たんですよ。なぜだろうと考えたんですけど、なかなか答えが出てこなくて。いまだに自分がなぜ泣いたのか謎のなので、今回、DVDで見るのが楽しみなんです」と明かす。
物語は終盤、怒涛(どとう)のバトルアクションを経て、余韻を残して幕を閉じる。事件の結末はもちろん、波多野と雅子の今後の関係も大いに気になる。「また結婚するかどうかは別ですけど、僕はハッピーエンドだと思ってますし、2人の気持ちはしっかりつながったと思います。取り返しのつかないことをしたとか、あの瞬間をやり直せたらとか、そういう気持ちって多くの人に一つや二つあると思うんです。でも、未来に向けて生きていく以上『あの瞬間』はやり直せなくても、同じか、もしくはもっと尊く感じられることはできるかもしれない。もしこの作品にメッセージがあるとしたら、そういうことだと僕は思います」とメッセージを送る。
ところで、現在45歳とは思えないくらい精悍(せいかん)な仲村さんだが、その若さには何か特別な理由でもあるのだろうか。「以前、某ラジオに出たとき『一番、仕事ができるのは50代だよ』とパーソナリティーの方に言われたのがとても記憶に残っているんです。それ以来、50代を迎えるのがすごく楽しみですけど、それなら今、準備をしないといけないとも思ったんです。もちろん勝負や決断しなければいけないときもあると思いますけど、すべては“次”に進むための準備、というか。少なくともそれは僕にとって大事な考え方なんです」と展望を語る。
“次”に向かって目の前の道を一歩ずつ進む。極めてシンプルだが実行することはなかなか難しい生き方だ。しかしその結果、得られるものは何物にも代え難い。役者としてまさにそれを体現しているといえる仲村さんの言葉からは、決して“行きずり”ではない覚悟と充実感が伝わってきた。
<プロフィル>
1965年、東京都生まれ。85年、映画「ビー・バップ・ハイスクール」でデビュー。日本アカデミー賞をはじめとする数々の新人賞を受賞した。国内外を問わず、数多くの映画、ドラマに出演。韓国映画「ロスト・メモリーズ」(02年)では韓国の第39回大鐘賞映画祭最優秀男優助演賞を外国人として初めて受賞。舞台「偶然の音楽」(05、08年)、「奇ッ怪~小泉八雲から聞いた話」(09年)、ドラマ「空飛ぶタイヤ」(09年、WOWOW、09年度民放連ドラマ部門最優秀作品賞、ATP賞グランプリほか)、映画「接吻」(08年、第23回高崎映画祭主演男優賞)、「K-20 怪人二十面相・伝」(08年)、「劒岳 点の記」(09年)、「僕の初恋をキミに捧ぐ」(09年)ほかに出演。7月からドラマ「チーム・バチスタ3~アリアドネの弾丸」(フジテレビ系)に出演する。
<DVD情報>
「行きずりの街」DVDは5月13日レンタル開始、5月21日発売、4935円。発売元:東映ビデオ 販売元:東映
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