SPECIAL EDITED VERSION 『ONE PIECE』魚人島編
第1話 再出発!集う麦わらの一味!
11月3日(日)放送分
「下町ロケット」で第145回直木賞を受賞した池井戸潤さんが14日、東京會舘(東京都千代田区)で会見した。受賞の知らせを「居酒屋で聞いた」という池井戸さんが黒のTシャツにジーンズ姿というラフなスタイルで登場。笑顔で会見に臨んだ。一問一答は以下の通り。(毎日新聞デジタル)
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−−今の気持ちを。
素直にうれしいです。企業小説を書いてて(文学賞受賞は)難しいことだと前から分かってましたし、こういう栄誉をいただいてますます企業小説でも感動できる小説があることを少しでも知っていただければ。
−−中小企業を励ますためにも、こういう作品が受賞するのは意味があるとの選評がありましたが。
意図せず東日本大震災が起きて、そのために書いたわけではないですけど、少しでもこの小説を読んで夢とか希望を思い出して、明日から頑張っていこうと思っていただけるのでしたらこんなにうれしいことはないです。
−−選考委員の伊集院静さんは「池井戸さんの中に彼が信じている文学がある」と選評されましたが、これについてどう思う?
あんまり文学的に書いていないんですね。今回「下町ロケット」という作品を書いて、おそらくこの小説の中の舞台では2年ぐらいあると思うんですけど、その中で登場人物が30人いれば、30人なりの30個の人生が輪切りにされている。人間の生き様を書いていくのが、もしそれが文学と言えるのであればそうかもしれないですね。そういうふうに言っていただけたのはありがたく思っています。
−−一貫して企業社会を描いていて評価されていましたが、あえて企業とヒトにテーマを絞って書いている理由を教えてください。
私が恋愛小説を書いたらどうかとはあまり考えたことがありません。やっぱり自分に一番身近な舞台で、よく分かっている登場人物を動かすことで考えると、自然な行為の結果として企業小説が出来上がっていると思う。
−−実際に書くにあたってJAXAや町工場の方に話を聞いたそうですがその中で印象に残ったことは?
最初に町工場の人に話をうかがったときに、「大田区の会社でロケットができますか」という質問に、答えは「絶対無理」ということでした(笑い)。それはもう最初にくじけそうになった。いろいろと話をしていたら、最先端の技術を持っている会社がロケットの部品を作るというのはもしかしたらあるかもしれないとお話をいただいたので、その一言でこの小説は書けるなと思った。
−−前向きに明るく楽しい話を書かれていて、励まされます。なぜ前向きに書かれるのですか?
私自身が暗い話は嫌いなんですね。暗くなる小説って読みたくないですし、自分が読みたくない小説は書けない。読んで、面白くスカッとしてドキドキしてワクワクして「ああ面白かった」と言って本を閉じられる。そういう小説が読みたかったし、やっぱり自分が書く側に回ったときに、どういうものを書くか。やっぱりそういう小説しか書きたくない。やっぱり自分が読みたいと思ったものを書いている。今回の「下町ロケット」もそうです。
−−ほかの候補作は読みましたか。
ほかの作品は、「ジェノサイド」だけ読みました。(作者の)高野和明さんはお友だちだし、どんな作品かなあって。久しぶりの大作だったのですごく楽しみにして、ワクワクしながら読みました。いい作品でした。
−−作品が出たあとに震災が起きた。人々の価値観や考え方が変わったかもしれない。そういう中で初めての直木賞作家です。自身の作品は変わりますか?
それは難しいですね。意図的に変わるものじゃないと思うんです。作家って、基本的に自分が書けるものしか書けないと思う。今回の悲惨な震災体験とか、私自身はテレビでしか見てないんですけど、そういうものを通じてもし変わるとすれば、人生観とかそういったものについて、なにか自分の中で変わったものがあって、それがやっぱり登場人物の考え方とか行動とかそういったところに反映されることもあるかもしれない。きっとあると思う。
−−受賞をどこで聞ききましたか? またこの受賞を誰に伝えたいですか?
居酒屋で待ってました。受賞すると思ってなかった。すみません、なんか……。岐阜の友だちとか中学・高校の友だちが(別の場所で)待ってくれていて。
−−なんていわれたんですか。
みんなは「おめでとう」。ぼくは「ありがとう」っていう。
−−日焼けされているようですが?
一番聞いちゃいけない質問ですね(笑い)。ちょっと山に芝刈りに、ちゃんと仕事はしてますから大丈夫です。
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−−たくさんの作品を書かれていますが、どうやってクオリティーを保っているんですか。
それは企業秘密に近いんですが、私の原動力というのが、面白い小説を書きたいということです。自分自身がミステリーとかエンターテインメントで読んで育ってきたわけですから、これ読んだら驚くだろうなとか、たぶんこの場面で泣くなとか、感動するなとか。そういうとき自分も泣いたりするんですけど。そういうのがやっぱり書いていて楽しいし、やっぱり楽しくなければ毎月何百枚も原稿を書けない。義務で書き始めたら終わりかなって。引き受ける以上は、自分自身がこの小説の中で感動したり、これいいなって思えるようなシーンを考え、発明に近いところがあるんですけど、思いついてすごいうれしいし、せりふとか。そういうときうまく書けたなとか。そういうのの連続でなんとか締め切りをクリアしてるそんな状況ですね。
−−サラリーマン小説は続けていきますか。
サラリーマン小説はいくつか出る予定あります。企業小説を書くきっかけは、それまでずっと銀行ミステリー(第44回江戸川乱歩賞を受賞した「果つる底なき」)を書いたとき、なぜか企業小説の棚にあった。期待されてるのであれば、企業小説を書いてみようと。意外に自分はサラリーマンの心理って分かってるな、と。この世界にサラリーマン経験者は少ないし、サラリーマンは楽しいと思う。しばらくは書いていようかな。歴史小説、労働組合の争議などいろいろ書いていて、今後どう進むかは分からない。
−−企業小説を書くコツは?
コツはとくにない。企業小説は企業に勤めていればみんな理解できる。勤めた経験がない人に難しいと思われないよう、説明をうまくいれるのがコツといえばコツ。
−−(以前書いていた)決算書の世界に戻ってくることは?
戻った方がいいですか?(笑い) 「小説風 女子大生の決算書」みたいな(笑い)。
−−女性へのメッセージを。
男女差で考えたことはない。単純に普通に楽しめるような構造になっている。女性へのメッセージは、企業小説はあまり読まれていないと思う。そんなに難しくないので、食わず嫌いではなく、恋愛小説やほかのエンターテインメント小説と同じように読んでください。
−−賞金は何に使う?
賞金あったんですか? 全然考えてなかった。ほしいものはない。(会見を生中継している)ニコ動で考えてください。
−−選考委員の伊集院さんに評価されてどう思いますか。
身の引き締まる思い。おろそかに書けない。今後も一つ一つの作品を誠心誠意、100%の力で書いていこうと今までも思っていたけど、今回もそう思った。
−−山本周五郎賞を落ちた作品で直木賞受賞。この違いはどこにあると?
賞のために書いてはいない。でもやっぱり、だめでしたって言われるとあーあって誰でも思うこと。がっかりした。同じ作品で(今回は受賞できたので)格別な思いですね。うれしいです。
−−銀行員を悪者に書いていたが?
銀行が常に中小企業に対して冷たい融資をしているわけではない。実際の現場は、納得できる理由で融資をしたりしなかったりしており、ただ、コミュニケーション不足で、貸し渋りとか、貸しはがしになっている。しょっちゅう銀行の人に会っているが、相手先のために貸したいと思っている銀行員はたくさんいる。銀行の真の姿ではないし、中小企業の発展のために貸してよかったといえる貸し方をしてほしい。
−−今の日本経済などについて、(池井戸さんは)企業カウンセラーの経験もあるのでどうすればいい?
すごく難しい。中小企業といってもいろいろある。一番大事なのは、自分はなぜ生きていられるのか、どこに競争力あるか、どこを伸ばせるか、もう一度問い直して、競争力をもつべきだと思う。
<プロフィル>
1963年6月16日生まれ、岐阜県出身。慶大卒業後、銀行に入行。その後、コンサルタント業のかたわらビジネス書を執筆する。98年に「果つる底なき」で江戸川乱歩賞を受賞。10年に「鉄の骨」で吉川英治文学新人賞を受賞。「鉄の骨」と「空飛ぶタイヤ」は直木賞候補になった。受賞作の「下町ロケット」はWOWOWでドラマ化され8月に放送予定。
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