ピースボート:実況コメントで話題のドラマ “ニコ動ファン”が贈る「共有の喜び」

実況コメントで話題のドラマ「ピースボート」=日本テレビ提供
1 / 1
実況コメントで話題のドラマ「ピースボート」=日本テレビ提供

 俳優の濱田岳さんのテレビドラマ初主演作となる深夜ドラマ「ピースボート−Piece Vote−」(日本テレビ、毎週月曜午後11時58分)が、視聴者からのコメントをリアルタイムで画面上に反映させるデータ放送サービスをテレビドラマで初めて導入し、話題を集めている。画面上にユーザーからのコメントが反映される動画投稿サイト「ニコニコ動画」などが人気を集める中、テレビでは異例の試みとなった企画の意図を探った。

あなたにオススメ

 「ピースボート」は、一隻の貨物船に連れ込まれた若者たちが、命がけのゲームに巻き込まれていくというストーリー。藤原竜也さん演じる著名な実業家を兄に持ち、「ワキヤククン」と呼ばれ劣等感を抱いてきた大学生の脇谷秀(濱田さん)は、兄の急死とともに現れた謎の男によって睡眠薬を飲まされ、「2」というタトゥーを彫られて貨物船に乗せられてしまう。同じように連れてこられた岩見サキ(平愛梨さん)らと“天の声”からの指示で命がけのゲームに挑むのだが、思わぬ陰謀が隠されていた……というストーリーだ。

 視聴者はドラマを見ながら、デジタルテレビやツイッターなどでインターネットを介してコメントを随時投稿。同局で投稿を取得し、内容を確認したうえでコメントを地デジのデータ放送画面に表示させる。全画面表示されたドラマの映像の上に直接コメントを反映させる「オーバーレイモード」も導入し、よりライブ感覚で視聴者からのコメントを楽しめるのが特徴だ。

 企画した福井雄太さんは入社3年目、弱冠24歳でプロデューサーに抜てきされた新鋭だ。子供のころからテレビドラマが大好きだったという福井さんは、野島伸司さんが脚本を手がけた「未成年」(95年)を見て「心を貫くほどの衝撃」を受けて、ドラマを作りたいと思うようになったという。高校時代には自ら学費をためて日本脚本家連盟のライターズスクールに入学。学生服姿で大人に交じってスクールに通い、大学時代に書いた脚本は「フジテレビヤングシナリオ大賞」の最終選考まで勝ち残った。

 福井さんは「子供のころは、学校での話題は前日に放送されたドラマやバラエティー番組でもちきり。そこに“共有する面白さ”があった」と語る。そんな福井さんは「ニコニコ動画」のプレミアム会員にも入っているほどの熱心な「ニコ動ファン」でもある。「すごく面白いコメントばかりで、自分はおこがましくてコメントできない」と語る福井さんは、「ニコニコ動画」の長所を「発信と共有の喜び」と分析。インターネットなどの普及で視聴者の志向が多様化し、ハードディスクレコーダーなど録画機能の充実で、リアルタイムでテレビを見る機会が減った現在、“共有する面白さ”と“自分の考えを発信する喜び”を再びテレビに取り戻したいという考えから今回の企画を思いついたという。

 投稿されるコメントは1話あたり数千件にも上るといい、話数を重ねるごとにコメント数は増加。掲載数の上限はあるものの「根拠のない否定とか誰もが不幸になるもの以外は基本的に拾おうと考えている」と語る福井さん。「視聴者の生の声を聞ける機会はなかなかないのでキャスト陣も楽しみにしている」といい、「まだ1作目なので勉強させてもらえたらという気持ち。いつかは視聴者の声も積極的に盛り込んだものが作れたら」と熱い夢を語る。新たなテレビの楽しみ方に今後も注目が集まりそうだ。(毎日新聞デジタル)

テレビ 最新記事