注目映画紹介:「メランコリア」 破滅を象徴した惑星が接近したときの姉妹の正反対の反応

「メランコリア」の一場面 (C)2011 Zentropa Entertainments ApS27
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「メランコリア」の一場面 (C)2011 Zentropa Entertainments ApS27

 鬼才ラース・フォン・トリアー監督の最新作「メランコリア」が17日に公開された。自らのうつ病体験が基となって脚本を書き上げたという。11年の第64回カンヌ国際映画祭で、主演のキルスティン・ダンストさんが米国人女優として18年ぶりに主演女優賞を受賞した。ラストシーンには多くの人が震えることだろう。

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 ジャスティン(ダンストさん)はマイケルとの結婚パーティーを、姉クレア(シャルロット・ゲンズブールさん)の家を借りて盛大に行っていたが、周囲からの祝福とは裏腹に、心は空虚で混乱していた。結局、パーティーはぶち壊し。その後、クレアの家にやって来たジャスティン。クレアは夫ジョン(キーファー・サザーランドさん)から文句をいわれつつ、かいがいしく妹の世話を焼く。そんなとき、惑星メランコリアが地球に接近。世界が終わるかもしれないという危機を迎えていた……という展開。

 一応断っておくが、これはパニック映画ではない。惑星メランコリアは「破滅」の象徴だ。究極の自己の喪失に際して、人はどういう心の動きをたどっていくのだろうか。憂うつにのみ込まれている妹と常識的でしっかり者の姉のクレア。2人の姉妹の反応は正反対だった。失うもののないジャスティンは開き直り、家庭を守るクレアはあたふたと不安がる。姉妹のキャラクターの成り立ちが緻密に計算されているほか、登場人物の心理が真実味を加えている。トリアー監督の仕事ぶりは、すべてにぬかりない。圧倒的な映像美の中で、ワグナーの「トリスタンとイゾルデ」が鳴り響く。映画館でぜひ体験してほしい。17日からTOHOシネマズ渋谷(東京都渋谷区)、TOHOシネマズみゆき座(東京都千代田区)ほか全国で公開中。(キョーコ/毎日新聞デジタル)

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