朗読少女:乙葉しおりの本の小道 第61回 ミヒャエル・エンデ「モモ」

「モモ 時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にかえしてくれた女の子のふしぎな物語」作・ミヒャエル・エンデ(岩波書店)の表紙(左)と乙葉しおりさん
1 / 1
「モモ 時間どろぼうとぬすまれた時間を人間にかえしてくれた女の子のふしぎな物語」作・ミヒャエル・エンデ(岩波書店)の表紙(左)と乙葉しおりさん

 美少女キャラクターが名作を朗読してくれるiPhoneアプリ「朗読少女」。これまでに50万ダウンロードを突破する人気アプリとなっている。「朗読少女」で、本の朗読をしてくれるキャラクター、乙葉しおりさんが名作を紹介する「乙葉しおりの本の小道」。第61回はミヒャエル・エンデの「モモ」だ。

ウナギノボリ

 ◇

 皆さんこんにちは、乙葉しおりです。

 「世界一周」というと、皆さんは何を連想しますか?

 飛行機でひとっ飛び? または豪華客船で優雅に? あるいは鉄道で風景を楽しみながら? 自転車、バイク、車……自分で乗り物を操る方法もいいですが、世界中の人との対話を求めてバックパッカーで、というのもロマンがありますよね。

 と、いうわけで、3月6日は「世界一周記念日」。1967年に日本航空による「世界一周航路」が開通したことにちなんだ記念日です。

 ただしこの世界一周、実は同じ飛行機が地球を一回りするわけではなく、東周りと西回りで地球を半周する飛行機を往復させて実現していた上、1972年には中止されてしまったそうです。

 ちなみに私が「世界一周」で連想するのは、「八十日」でしょうか。

 ジュール・ヴェルヌさんの冒険小説「八十日間世界一周」が発表された1872年当時は、まだ旅客機はなく、鉄道も道路も発達していない時代でした。

 このお話に影響を受けて実際に世界一周へ挑戦した方は数多くいたそうですが、作品発表年度に近い記録ですと、1889年にアメリカのジャーナリスト、ネリー・ブライさんがおよそ72日間で達成しています。

 飛行機がある現在では80日間どころか、80時間も不可能ではなくなった世界一周ですけれど、その一方で1993年からヨットを使って世界一周を行うコンテスト「ジュール・ヴェルヌ・トロフィー」が開かれているんですよ。

 乗員以外による手助けを禁止されたこのイベントの最短記録は、2012年1月にフランスの「Banque Populaire」号が達成した、およそ45日間。

 エンジンの力を借りなくても、こんなに速く世界を一周できてしまうなんて、本当にびっくりですよね!

 ではここで、朗読倶楽部のお話……今回は、「朗読倶楽部の家庭訪問」です。

 家庭訪問と言っても、担任の先生がお家にやって来て保護者と3者面談するアレとは違い……顧問の癸生川先生も含めた朗読倶楽部全員で、各メンバーの家にお邪魔しようという企画なのです。

 そんなわけで第1回は、この企画の発案者、甲原みかえさんのお家にお邪魔した時のお話。

 みかえさんのお家は、朗読倶楽部メンバーでは学校から一番遠い都心にあるんですけど、とても大きくて新しいマンションに住んでいてびっくりしました。

 家族構成はおばあさんにご両親、妹さんの5人家族。

 小学6年生の妹さんは、お家の近くにある小学校に通っていたのですが、みかえさんが私たちの学校に入学した後を追って初等部に転入してくるほどのお姉ちゃん子です。

 でも、みかえさんは留学で家族と離れ離れになっていた上に帰国後も遠い学校に通い、しかもクラブ活動に力を入れていますから自然とお家にいる時間は少なくなるわけで、これでは妹さんが寂しい思いをするのも当然ですよね。

 実は妹さんは後ほど朗読倶楽部にも入部することになるのですが……そのお話はまたの機会に。

 ……と、いうところで、今回はここまでです。

 次回もまた、よろしくお願いしますね(*^^*)

■しおりの本の小道 ミヒャエル・エンデ「モモ」

 こんにちは、今回ご紹介する一冊は、ドイツの作家ミヒャエル・エンデさんの「モモ」です。

 「時間泥棒」の副題で日本でも有名な本作は1973年に発表され、翌年にはドイツ児童文学賞のヤングアダルト部門賞を受賞しました。

 1986年にはドイツとイタリアの合作による劇場映画が製作されましたが、実はこの映画、作者のミヒャエル・エンデさんも本人役で出演しているんですよ。

 何世紀も前の小さな屋外劇場の廃虚に、「モモ」と名乗る小さな女の子が住みつきます。

 近くの貧民街に住む人たちは、劇場で暮らしたいと願うモモのため、力を合わせて彼女の世話をすることにしました。

 モモは幸運に恵まれていると思いましたが、同じように街の人たちも彼女に大きな幸せをもらっていました。

 モモに話を聞いてもらうと、どんな悩みや争いごともたちどころに消え、モモがそばにいるだけで、子供たちは次々と新しい遊びを生み出すことができたのですから。

 一方、世間では「時間銀行」を名乗る灰色ずくめの男たちが、自分の人生に疑問を持つ人たちに対し、

 「人生で無駄にしている時間を節約し、貯蓄すれば倍になって帰ってくる」と、売り込みをしていました。

 ところが、この提案に乗った人たちはどんなに時間を節約しても過ぎ去る時間が早くなるばかりで、失った時間を取り戻そうとしてさらに無駄をなくそうとするものですから、どんどん心がすさんでいったのです。

 そんなことはつゆ知らず、最近親しい人たちが遊びに来なくなったことを不思議に思ったモモは、その理由を訪ね歩くことにしたのですが……。

 このお話には、時間に追われて心の余裕を失いがちな現代人への警告が読み取れる一方、利子や投資などで簡単にお金が増えたり、なくなったりするような現代経済への警鐘がメーンテーマだったと言われています。

 既に読んだことがある方も、時間銀行の勧誘部分をぜひ読み返してみてください。

 「ああ、なるほど」と思ってしまうこと請け合いですよ。

 ※本コラムをしおりさんが朗読する「乙葉しおりの朗読倶楽部」がiPhoneアプリ「朗読少女」のコンテンツとして有料配信しています。

ブック 最新記事