テレビ朝日:視聴率好調の理由 “キャストより内容”が時代にマッチ

4月の月間視聴率「四冠王」を獲得するなど好調のテレビ朝日
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4月の月間視聴率「四冠王」を獲得するなど好調のテレビ朝日

 テレビ朝日が4月の月間視聴率で開局以来初めての「四冠王」を達成し、長きにわたって日本テレビとフジテレビの2強体制が続いてきた視聴率争いに風穴を開けつつある。ある業界関係者は「キャストありきではなく、内容重視の番組作りが視聴者に受け入れられた結果」と分析する。同局好調の理由を探った。(毎日新聞デジタル)

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 ◇企画力で勝負「キャストより内容重視」

 テレ朝には「キャストありきでなく内容重視」を象徴するような番組がある。深夜の人気バラエティー番組「お願い!ランキング」だ。09年10月のスタート当初は有名タレントをほとんど出さず、番組ADを出演させるなどしていたが、ひねりの利いた企画の数々で人気を博している。

 同番組の関係者は企画を立てる際には「ちょっとストレートじゃない感覚。どこかエッジが立っているようなものを」と常に内容を重視しているといい、同番組からは、「川越スマイル」の川越達也シェフや「美しすぎる料理研究家」の森崎友紀さんなど人気キャラクターが誕生したり、声優の三ツ矢雄二さんが再ブレーク。また、「関ジャニの仕分け∞」や「白黒ジャッジバラエティー 中居正広の怪しい噂の集まる図書館」などが単独番組として生まれるなど、同局の元気の良さを体現するような番組となっている。

 長年2強の後塵(こうじん)を拝してきたテレ朝が視聴率でトップを取ると宣言したのは11年1月の早河洋社長の年頭あいさつだった。デジタル化への対応の後、14年2月の開局55周年に向け、13年度中にプライムタイム世帯視聴率1位を目標に掲げた経営計画「デジタル5ビジョン」を発表した。計画自体はデジタル化後のコンテンツビジネスを強化するための基本方針だが、「コンテンツ総合企業」を目指す基盤として「『つくる』の強化」いわば企画力の強化を掲げている。

 ◇ゴールデン移行が好循環

 同局が重視する企画力はバラエティー番組でより強く発揮されている。バラエティーは「ロンドンハーツ」や「アメトーーク!」など同局を代表する人気番組が安定しており、「いきなり!黄金伝説。」はもちろん「お試しかっ!」「シルシルミシルさんデー」「関ジャニの仕分け∞」など、企画色の強い番組がここ数年の改編でゴールデン帯に進出し、成長を見せており、深夜で成功した番組をゴールデンへ移行するというモデルが成果を上げている。

 レギュラー番組の好調は、今年の4月期の改編にも如実に表れた。プライムタイムの改編率は05年以来最少の9.8%にとどまり、ゴールデンタイムのバラエティー番組などはほぼ変更せず、内容のリニューアル等で対応した。改編の会見で同局は「レギュラー編成が非常に順調にいっている」と手応えを話していたが、バラエティー番組を中心にレギュラー番組が着実に育ち、“収穫期”に入っているといえるだろう。

 ◇縁の下の力持ち「相棒」

 視聴率向上に最も貢献をしている番組がある。国民的な人気となっている刑事ドラマ「相棒」だ。現在は、新シリーズが放送されていないにもかかわらず、平日午後にリピート放送し、平均視聴率11%台(4月23日時点)を獲得。全日帯の数字を引っ張り上げるとともに、その後の「スーパーJチャンネル」への継続視聴にそのままつながっているとみられ、「Jチャン」は同時間帯1位を長くキープし、4月の平均視聴率も8.8%をマークしている。

 「相棒」は既に「シーズン10」まで放送されており、コンテンツのストックも豊富。いい意味で“大人向け”の上質な骨太ドラマであるため、繰り返しの視聴にも耐えられる。経営計画「デジタル5ビジョン」には、自局の伸ばすべき強みとして「骨太で企画力が高いドラマ」をうたっており、具体例として「相棒」をあげている。早河社長は4月の定例会見で、「『相棒』をずっと編成したいくらい」と称賛しており、他の民放関係者も「全日帯の強さは『相棒』の再放送にある」ととらえているほどだ。

 内容重視の企画力を源泉に巧みな編成で視聴率の上積みを図った同局は、11年度にプライム平均視聴率で3位の12.0%を達成し、トップの日本テレビとの差を0.6ポイントと開局以来最少にまで縮めた。そして4月には、「全日」(午前6~深夜0時)、「ゴールデン」(午後7時~10時)、「プライム」(午後7時~11時)、「プライム2」(午後11時~深夜1時)のすべての時間帯で首位を獲得するに至った。

 ◇通常編成からが勝負 W杯予選に期待

 「現場も非常に士気が上がっている」(早河社長)といい、6月にはサッカーW杯最終予選もスタートする。早河社長は「好調なスタートを切ったと思うが、まだ始まったばかり。今後は山あり谷ありだと思っている。日テレ、フジの2強に離されないように年間を通してチャレンジャーとしてその差を縮めていきたい」と兜(かぶと)の緒を締めている。(毎日新聞デジタル)

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