朗読少女:乙葉しおりの本の小道 第73回 H・G・ウェルズ「タイム・マシン」

「タイムマシン」作・ハーバート・ジョージ・ウェルズ(角川文庫)の表紙(左)と乙葉しおりさん
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「タイムマシン」作・ハーバート・ジョージ・ウェルズ(角川文庫)の表紙(左)と乙葉しおりさん

 美少女キャラクターが名作を朗読してくれるiPhoneアプリ「朗読少女」。これまでに50万ダウンロードを突破する人気アプリとなっている。「朗読少女」で、本の朗読をしてくれるキャラクター、乙葉しおりさんが名作を紹介する「乙葉しおりの本の小道」。第73回はH・G・ウェルズの「タイム・マシン」だ。

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 皆さんこんにちは、乙葉しおりです。

 「タイムトラベル」のお話というと、皆さんはどんな作品を思い浮かべますか?

 今まで数多くの作品が発表されてきましたが、日本でよく知られている作品の一例を挙げてみますと……。

 ・30年前の過去に飛ばされた少年が現代への帰還を目指す、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」

 ・未来の軍用コンピューターが人類抹殺のために現代へ殺人ロボットを送り込む、映画「ターミネーター」

 ・自衛隊の一小隊が戦国時代にタイムスリップしてしまう半村良さんの「戦国自衛隊」

 ・以前にご紹介させていただいた筒井康隆さんの「時をかける少女」

 ・現在もテレビで放映されている藤子・F・不二雄さんの「ドラえもん」

 作品の多様さから、一つのジャンルともいえるこの「タイムトラベル」のお話。

 では、それを最初に考えた人は誰なのでしょうか?

 実は複数の作品候補があって明確な答えは出ていないのですが、それらの作品が生まれたのは大体産業革命の時期と重なる18世紀から19世紀ごろといわれています。

 初期の作品で特に有名なのは、H・G・ウェルズさんの「タイム・マシン」(1895年)。

 SF好きの方にはおなじみの作品ではないでしょうか?

 ちなみに、もしタイムマシンが実際に使えるとしたら、どの時代に行ってみたいですか?

 私は宮沢賢治さんの時代に行って直接お話をうかがってみたいなって思うんですけど、きっと今までに読んだ作品の疑問点で質問攻めにしてしまって、ご迷惑をおかけしちゃいそうな気がします……(>_<)

 ではここで、朗読倶楽部のお話。

 今回からは、前回の大会直後から最後の大会の間の1カ月足らずの間、私たち朗読倶楽部がどうしていたのかをお話ししたいと思います。

 大会の翌日から、私たちは練習を再開しました。

 自信を無くして気持ちの落ち込みも大きかったのですが、それ以上に朗読倶楽部存続にかかわる焦りが私たちを突き動かしていたんです。

 当然、そんな状態では上達どころか前にも増してミスばかり目立つようになってしまうのですが、それを練習量で補うため、遅くまで学校に残ろうと思っても、家族に一度「大会まで」と約束してしまった以上、もうできません。

 結局3日とたたないうちに、私たちは行き詰まってしまいました。

 このまま、朗読倶楽部は部になることもできず終わってしまう……そんな未来が頭に浮かび、広がり、膨らんだ気持ちが言葉になって今に爆発してしまいそうになった……そんなとき。

 大会後ずっと何かを考えるように口を閉ざしていた先生が、こう言われたんです。

 「気分転換をしないか?」

 と……。

 ……と、いうところで、今回はここまでです。

 次回もまた、よろしくお願いしますね。

■しおりの本の小道 H・G・ウェルズ「タイム・マシン」

 こんにちは、今回ご紹介する一冊は「SFの父」と呼ばれるイギリスの作家、H・G(ハーバート・ジョージ)・ウェルズさんの「タイム・マシン」です。

 1894年の暮れから全5回にわたって月刊誌に連載され、翌1895年には単行本として出版されました。

 時間旅行を扱ったお話は以前にも存在しましたが、時間を自在に行き来する装置「タイム・マシン」の存在を広く浸透させたのはこの作品と言われ、後世のSF作品に多大な影響を与えています。

 ロンドンのリッチモンドに、さる著名な科学者が住むお屋敷がありました。

 ここでは毎週木曜日に数人の客が訪れ、彼の話に耳を傾けながらささやかな晩さん会を開くのが習慣になっていたのです。

 ある日のこと、晩さんに集まった常連客を前に科学者はこう宣言しました。

 平面の二次元、立体の三次元に続く「第四の次元」は時間をつかさどる世界であり、これを証明する装置「タイム・マシン」を2年の歳月をかけて完成させた……と。

 そして、彼はタイム・マシンの模型が時間のかなたへ消え去る様子を実演してみせたのです。

 しかし、客人たちはその一部始終を目の当たりにしながらも、「自分たちをからかっているのだろう」と考え、誰一人として彼の言葉を信じようとしませんでした。

 その翌週のこと、同じようにお屋敷に集まった客人たちでしたが、主人の科学者はなかなか姿を現しません。

 もしかして、彼は時間旅行に行ったのではないか?……そう冗談めかした話が始まったとき、科学者はあちこちに傷を負ったぼろぼろの姿で現れ、驚く客人たちを前に語り始めたのです。

 「時間旅行家」となった彼が、西暦802701年のイギリスで体験した「未来の回想録」を……。

 このお話は後年、さまざまな作者の手で続編が発表されていますが、実はウェルズさんの子孫「公認」の続編も存在するんですよ。

 「タイム・マシン」出版100周年の1995年、スティーブン・バクスターさんが発表した「タイム・シップ」がそれで、前作以上に壮大な時間旅行が繰り広げられます。

 SF作品は好きだけどまだ読んだことがないという方は、一度お手に取ってみてはいかがでしょうか?

 ※本コラムをしおりさんが朗読する「乙葉しおりの朗読倶楽部」がiPhoneアプリ「朗読少女」のコンテンツとして有料配信しています。

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