注目映画紹介:「グスコーブドリの伝記」宮沢賢治の壮大なテーマを幻想的な美しい絵で描き出した

「グスコーブドリの伝記」の一場面 (C)2012「グスコーブドリ」製作委員会/ますむらひろし
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「グスコーブドリの伝記」の一場面 (C)2012「グスコーブドリ」製作委員会/ますむらひろし

 85年公開作「銀河鉄道の夜」を知っている人なら、このネコの絵柄が懐かしい。杉井ギサブロー監督、ますむらひろしさんのキャラクター原案をはじめとする当時と同じスタッフが再び集まった「グスコーブドリの伝記」が7日、公開された。今の日本に最もピッタリな原作・宮沢賢治の壮大なテーマを、幻想的な美しい絵の中に素朴さを宿しながら描き出した。随所に宮沢賢治の他の作品の要素もちりばめられている。

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 ブドリ(声:小栗旬さん)は両親と妹ネリ(声:忽那汐里さん)と、イーハトーブの森で仲よく暮らしていた。しかしある年から冷害が続いて食糧がなくなり、両親は家を出て行った。妹のネリは人さらいに遭い、ブドリは独りぼっちになった。てぐす工場の工場主に拾われたブドリは、仕事に精を出していたが、やがて仕事が終わってまた独りになる。森を出たブドリはしばらく畑で働くが、冷害と干ばつで収穫がなくなり、やがて街に出た……という展開。

 賢治の理想郷「イーハトーブ」が、スクリーンいっぱいに広がる。キラキラとした輝きに満ちた森の風景、どこまでも畑が続く緑豊かな風景。自然豊かな恵みが目に映る一方で、自然災害と人々との闘いが繰り返される。原作通り、肩ひじを張らないブドリの生き方が淡々と描き出されている。目の前にあることを地道にコツコツとやりながら自分の道を歩いていくブドリ。経験をむだにしない生き方で、就職先も紹介でゲット! ブドリは「僕はどんなことでもやります」という。本当に強い人というのは、こういう生き方のことをいうのだと気づかされる。

 柄本明さんが声を担当した、とぼけた味わいのクーボー博士が絶妙。映画音楽を初めて手掛けたというバンドネオン奏者の小松亮太さんの音楽も印象深く、作品の世界観を深めている。7日から丸の内ピカデリー(東京都千代田区)ほか全国で公開中。(キョーコ/毎日新聞デジタル)

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