食糧生産の現場をつぶさに映し出してロングランヒットを記録した「いのちの食べかた」(05年)を手がけたオーストリアのニコラウス・ゲイハルター監督の最新ドキュメンタリー映画「眠れぬ夜の仕事図鑑」が28日から公開される。夜に活動する人々の姿を、欧州10カ国にわたって撮影した。空港内部などの公共の場から、「ここはどこ?」と思わせる場所まで、国境を見事に消し去り、欧州の深夜の光景を並べている。
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夜の国境。大きなカメラがあたりをグルリと見回している。少しSFチックな風景だ。モニターを監視する人がいる。この冒頭の映像だけですでに、21世紀の社会を見事に映し出している。私たちは監視される社会の中で生きている。監視モニターの前には、画面を凝視する人がいるが、普段の生活で実感することはない。その後、イタリアのロマのキャンプ場、オーストリアの新生児病棟が次々と映し出されていくのだが、「いのちの食べかた」と同様に裏側のみを映し出し、「普段実感していない営みを見せる」という手法を用いている。
そして何も語らない。そこにあるものを映し出しているだけだ。“監視カメラ”と化した監督の目が、昼と同じように働く人々の姿をじっと見据えている。それにしても、一体いつのころから24時間体制が当たり前の時代になったのだろうか。本来、生きものとしては夜は寝て、体を休める時間をとるべきなのに、人間はあくせくと働く。電気など技術の発達がこのような社会を生み出したことはいうまでもないが、自らが生み出した技術に使われている人間の風景が、妙にもの悲しい。「いのちの食べかた」と同様、自然に反して生きる人間の姿を見ながら、心がザワザワとしてくる。だが、自殺を食い止めようと働く人や、老人施設で介護にあたる人が登場すると、夜間の活動への印象もガラリと変わる。風景のチョイスが面白く、気持ちが揺り動かされる。28日からシアター・イメージフォーラム(東京都渋谷区)ほか全国で順次公開。(キョーコ/毎日新聞デジタル)
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