朗読少女:乙葉しおりの本の小道 第93回 楠山正雄「浦島太郎」「金太郎」「桃太郎」その1

「日本の昔話 1 (お風呂で読む日本昔話 1) 」著・楠山正雄(フロンティアニセン)の表紙(左)と乙葉しおりさん
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「日本の昔話 1 (お風呂で読む日本昔話 1) 」著・楠山正雄(フロンティアニセン)の表紙(左)と乙葉しおりさん

 美少女キャラクターが名作を朗読してくれるiPhoneアプリ「朗読少女」。これまでに50万ダウンロードを突破する人気アプリとなっている。「朗読少女」で、本の朗読をしてくれるキャラクター、乙葉しおりさんが名作を紹介する「乙葉しおりの本の小道」。第93回は楠山正雄の「浦島太郎」「金太郎」「桃太郎」の3編だ。

ウナギノボリ

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 皆さんこんにちは、乙葉しおりです。

 「翻訳」というと、皆さんはどんな方のどんな作品を思い浮かべますか?

 海外の素敵な作品を気軽に読める機会を作ってくださる翻訳家さん。流麗な文章を日本語にうまく生かして翻訳するには、ただ双方の言葉が分かるというだけでなく、文学的なセンスが要求されます。

 同じ作品でも翻訳者によってそれぞれ異なる解釈で表現されることがあるので、その個性を読み比べるのも面白いですよね。

 そこで今回は最近お誕生日を迎えられた作家さんを、「翻訳」の話題に絡めてご紹介したいと思います。

 まず11月4日は、児童文学者の楠山正雄さんのお誕生日です(1884年生まれ)。

 海外の有名な童話の翻訳を多く手がけられていて、過去当コーナーでご紹介した海外童話の中のいくつかも、楠山正雄さんによる翻訳作品を参考にさせていただきました。

 続いて11月8日は、マーガレット・ミッチェルさんのお誕生日(1900年生まれ・米国)です。

 代表作「風と共に去りぬ」のラストシーンの台詞は「結局、明日は別の日なのだから」というのが本来の訳ですが、おそらく「明日は明日の風が吹く」という訳の方が有名ですよね?

 翌11月9日は、イワン・ツルゲーネフさんのお誕生日(1818年生まれ・ロシア)です。

 代表作の短編集「猟人日記」の一編「あいびき」は、「浮雲」の作家・二葉亭四迷さんの手によって翻訳され、初期の言文一致体の名訳として知られています。

 最後に11月10日は、フリードリヒ・フォン・シラーさんのお誕生日です。(1759年生・ドイツ)

 日本では小栗孝則さんの手で翻訳され、この翻訳作品のひとつ「人質」をもとに太宰治さんの「走れメロス」が誕生しました。

 ではここで、朗読倶楽部のお話……今回からは、私たち朗読倶楽部の部長・丙ゆいさんのお話です。

 私とみかえさんの2学年下にあたる部長さんは、中等部の2年生。

 はじめ文芸部の活動を申請するにあたってメンバーが最低限の人数を満たさなかったため、先生が紹介してくださったのが彼女でした。

 実際は図書館にきてよく騒ぐので、おとなしくしてもらうために入部を勧めていたという経緯は以前にもお話しした通りですが……。

 つまり部長さんといえば、自由奔放、ルールに縛られない、明朗にして快活な人なのです。

 ……ちょっと快活すぎとか、ちょっと強引かもとか、そういうイメージもなくはないのですが、ともかく朗読倶楽部の顔であることは間違いありません。

 そんな部長さんですが、実は二つの顔を持っているのです。

 普段の私たちが見る部長さんの顔と、家で見せる部長さんの顔。

 こちらも以前に少しだけお話ししましたが、部長さんはご両親の前ではとてもおとなしいのです。

 なぜそのようなことになっているのでしょうか……?

 次回からはその理由を少しずつお話ししていきたいと思いますので、よろしくお願いしますね(*^^*)

■しおりの本の小道 楠山正雄「浦島太郎」「金太郎」「桃太郎」その1

 こんにちは、今回ご紹介するのは、おそらく日本で最も有名な三人の太郎さんのお話……楠山正雄さんによる再話(さいわ)文学「浦島太郎」「金太郎」「桃太郎」の3作品です。

 「再話」とは、古くから伝わる昔話を主に子供向けに書き直したもので、例えばあの「グリム童話」もドイツで語り継がれたさまざまな民話・伝承を聞き取りお話に書き起こした「再話文学」ということができます。

 ◇あらすじ

 それぞれの内容は皆さんもよくご存知だと思いますが、念のために書いておきますね。

 ・浦島太郎

 いじめられていた亀さんを助けた浦島さんが、乙姫さまのいる竜宮城に招待されるお話。

 ・金太郎

 熊を家来にするほどの力自慢な金太郎さんが、都のお侍さんにスカウトされるお話。

 ・桃太郎

 桃から生まれた桃太郎さんが、お供と一緒に鬼退治をするお話。

 ◇物語の舞台について

 「むかしむかし、あるところに……」

 ……という場所を特定しない書き出しは昔話の定番ですが、この3人の太郎さんはそれぞれにゆかりの地があります。

 ・浦島太郎

 浦島さんのお住まいは書き出しの部分によると「丹後の国水の江の浦」(京都府北部)になっています。ほかにも香川県、沖縄県、長野県、神奈川県などの広い範囲で様々な言い伝えが残っているんですよ。

 ・金太郎

 「足柄山の金太郎」で有名な金太郎さんのお住まい・足柄山は、神奈川県と静岡県の境にある山脈の一部です。3人の太郎さんの中では一番場所がはっきりしていますね。

 ・桃太郎

 おじいさんの芝刈り、おばあさんの洗濯という、昔話の書き出しでは一際有名なこのお話ですが、舞台がどこなのか作中では示されていません。

 お供の犬・猿・キジにあげた「きびだんご」と岡山の銘菓「吉備団子」の関係が有名ですが、ほかにも香川県、愛知県、奈良県などに縁の神社があります。

 次回も引き続き、3人の太郎さんについて少し掘り下げたエピソードをご紹介していきたいと思いますので、よろしくお願いしますね。

 ※本コラムをしおりさんが朗読する「乙葉しおりの朗読倶楽部」がiPhoneアプリ「朗読少女」のコンテンツとして有料配信しています。

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