トム・クルーズさんの最新作「アウトロー」が1日に全国で公開された。今作は「ミッション:インポッシブル(M:I)」シリーズでおなじみのクルーズさんの、新たなシリーズとうたわれている。PRのために先日、クルーズさんとともに共演のロザムンド・パイクさん、脚本も担当したクリストファー・マッカリー監督が来日。会見のあと、マッカリー監督に話を聞いた。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)
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映画「アウトロー」は、英作家リー・チャイルドさんによる人気小説「ジャック・リーチャー」シリーズが原作。クルーズさん演じる元米陸軍の捜査官ジャック・リーチャーが、白昼起きた銃による射殺事件の真相を解明していくハードボイルドアクションだ。マッカリー監督にとっては、「誘拐犯」(00年)に続く2作目の監督作。監督としての経験は浅いが、脚本家としては「ユージュアル・サスペクツ」(95年)や「ワルキューレ」(08年)などを世に送り出してきた実績がある。クルーズさんの前作「ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル」の脚本も、ノークレジットながら彼が手掛けている。このインタビューの直前に開かれた会見では、クルーズさんから「ミッション:インポッシブル5」の監督だと紹介されていた。
−−これまであなたが表立って手がけてきた作品は、ハリウッドが好むアクション超大作とは異なりますね。
僕は自分を“アンチハリウッド”とは思っていないけれど、王道とはあえて逆をいくタイプかもしれない。僕が信じているのは、ストーリー性と論理。ハリウッド映画において、それらの優先順位は必ずしも高くない。だから、トム(・クルーズさん)と仕事をすることになるとは、夢にも思っていなかった。だって僕は彼のことを、最もハリウッド的な人間だと思っていたからね。ところが会って話をしたら、映画の好みは一緒だし、しかもその理由が同じだったから驚いたよ。彼は、僕が持っている感性を殺さずに、むしろもっと多くの観客にそれが伝わるようにしようとしてくれる。現場で対立や口論もなかったし、映画作りを楽しんでできた。彼と出会えたことを幸運に思うよ。
−−西部劇がお好きだそうですね。今作の一場面では、テレビの中に映画「大いなる西部」(1958年)が映っていましたが、なぜあの作品を選んだのでしょう。
「大いなる西部」は、僕にとってとても重要な作品なんだ。グレゴリー・ペックが演じたキャラクターが特にね。まず、あの映画を見たとき、なぜ、誰もが知っている古典的な西部劇のストーリーではないのだろうと思ったんだ。ペックが演じるジェームズは、いわゆる、西部劇のキャラに“型”があるとしたら、それを全部壊したような男。そういう役を演じたからこそ、彼は偉大な俳優になったんだ。彼は劇中、非常に重要なせりふをいいなずけにいう、「他の人が何を思うのかに責任はとれない。でも自分自身には責任をとる」というようなことをね。これは、彼という人間が、真に強いキャラクターであることを表している。規律を重んじていないとそうはいえない。そして、ジャック・リーチャーも、ジェームズと共通する規律を持っているんだ。
−−映画を見ながら、なぜかシドニー・ポワチエさんの主演作「夜の大捜査線」(1967年)を思い出しました。
実は、(今作に登場する)エマーソン刑事の役は、最初、別の役者を考えていた。でも、デビッド・オイェロウォに会って、その存在感に圧倒され、彼に決めたんだ。カメラを通して彼を見たとき、まさに「夜の大捜査線」のシドニー・ポワチエを見ているような気にさせられたよ。彼が着ているスーツ。あれには特殊なカットが施されていて、それによって、ポワチエに似るようになっているんだ。衣装デザイナーのスーザン・マシスンのアイデアなんだけど、興味深いことに、彼女とはそれについて話し合いをしていない。つまり、彼女も僕同様、最初から直感で、デビッドがポワチエに似ていると思ったんだろうね。それで、徐々に「夜の大捜査線」をほうふつとさせるような撮り方にしていったんだ。現場ではデビッドに、(ポワチエさん演じる刑事ティッブスがいう名せりふの)「They call me Mister Tibbs!(みんな私をミスター・ティッブスと呼んでいる!)」と声を掛けていたよ (笑い)。
−−そうだったんですか!
実は、「夜の大捜査線」の続編を作るという話が持ち上がったことがあって、そのときにデビッドをティッブスの息子役にどうかという話があったぐらいなんだ。その後、その話がどうなったか分からないけれど、とにかく衣装デザイナーが、ポワチエ的な特殊なカットをスーツに入れ、それによって「続編を」というところまで話がいったというのは、すごく面白いよね。
−−「ユージュアル・サスペクツ」のとき、真っ先に思い浮かんだビジュアルをポスターにしたと聞いています。では、この「アウトロー」で真っ先に思い浮かんだビジュアルはどんなものだったのでしょう。
最後のシーンだ。スタジオからこの仕事をオファーされたとき、一つだけ条件を出されたんだ。リーチャーをできるだけ神秘的にしてくれとね。で、どうやって彼を紹介すればいいのかと考えていたら、エンディングのあのビジュアルが、パッと浮かんだんだ。
−−先ほどの会見で、クルーズさんに、「ミッション:インポッシブル5」の監督と紹介されていました。この「アウトロー」もシリーズ化が期待されます。そうした現実を、いま、どう受け止めていますか?
僕はこれまで20年間、ずっと苦難続きだった。映画を1本完成させるということは、5本の企画がボツになるということ。正直、映画なんてやめてしまえと思った時期もあった。そのとき決めたんだ、僕から企画を出すのではなく、頼まれたら作ろうとね。だからこれからも、僕から企画を上げて撮らせてもらうということはしない。オファーが来たら受ける、そういうスタンスでいようと思っているよ。
<プロフィル>
1968年、米ニュージャージー州生まれ。高校卒業後、各地を放浪。ロサンゼルスに移るまで探偵事務所などで働いた。高校の同級生であるブライアン・シンガーさんから持ちかけられ、「パブリック・アクセス」(93年)の脚本を執筆。このシンガーさんが監督した映画は、サンダンス映画祭で審査員大賞に輝いた。95年、シンガーさんと組んだ2作目「ユージュアル・サスペクツ」が米アカデミー賞の脚本賞を獲得。00年、自身で脚本を書いた「誘拐犯」で監督デビュー。ほかに手がけた脚本に「ワルキューレ」(08年)、「ツーリスト」(10年)がある。13年に公開予定の「ウルヴァリン:SAMURAI」の脚本も担当している。
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