注目映画紹介:「はじまりのみち」木下恵介監督生誕100年記念 原監督が母と息子の愛を映画化

「はじまりのみち」の一場面 (C)2013「はじまりのみち」製作委員会
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「はじまりのみち」の一場面 (C)2013「はじまりのみち」製作委員会

 劇場版「クレヨンしんちゃん」や「河童のクゥと夏休み」(07年)などの劇場版アニメで知られる原恵一監督が、初めて手掛けた実写映画「はじまりのみち」が1日に公開された。「二十四の瞳」などの日本映画の巨匠・木下恵介監督生誕100年を記念した作品。木下監督を敬愛するという原監督が戦中の疎開先を舞台に、母と息子の愛を温かく描きながら、木下作品へのオマージュとして作り上げた。

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 木下恵介(正吉=加瀬亮さん)は昭和19(1944)年に撮った映画「陸軍」が、戦意高揚の役割を果たしていないと政府当局からにらまれ、次作の製作を中止されてしまう。気落ちしたまま松竹に辞表を出し、脳いっ血で倒れた母たま(田中裕子さん)が療養している浜松市に向かうことにした。母親に「木下正吉に戻る」と宣言する。やがて戦局が悪化。恵介は兄(ユースケ・サンタマリアさん)と一緒に母をリヤカーに乗せて疎開させることにした。便利屋(濱田岳さん)を雇い、山越えをする旅が始まった……という展開。

 生誕100年のメモリアルに、若かりし不遇の時代の木下恵介を描くアイデアが秀逸。どんな時代にもその時代に翻弄(ほんろう)される運命にある若者たちがいるが、木下の姿からは運命にあらがう強さを教えられる。映画監督として失意を抱えた木下が母を連れて疎開先に向かうというシンプルな筋書きの中に、木下監督の原点が宿っている。母への思いと母の息子への思いが、ジンワリとにじみ出るように描かれている。多くの木下作品がはさみ込まれている趣向も楽しく、モノクロからカラーに移り変わる映画の歴史も堪能できる。濱田さんのユーモラスな便利屋がアクセントとして登場し、木下作品のユーモアを継承するかのようだ。日本人顔(「テルマエ・ロマエ」ふうにいうなら平たい顔族か?)の俳優ばかり集めたキャスティングも絶妙だ。1日から東劇(東京都中央区)ほか全国で公開中。(キョーコ/毎日新聞デジタル)

 <プロフィル>

 キョーコ=出版社・新聞社勤務後、闘病をきっかけに単館映画館通いの20代を思い出し、趣味の映画を見まくろうと決心。映画紹介や人物インタビューを中心に活動するライター業のほか、ときどき保育士としてとぼとぼ歩き中。

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