あまちゃん:音楽担当の大友良英って誰? 人気のOPや「潮騒のメモリー」の制作の裏側

「あまちゃん」の音楽を手がける大友良英さん
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「あまちゃん」の音楽を手がける大友良英さん

 NHK連続テレビ小説(朝ドラ)「あまちゃん」のオープニングテーマが音楽配信サイトのランキングで首位を獲得するなどインストとしては異例のヒットを記録している。さらに、劇中で主人公のアキ(能年玲奈さん)と友人のユイ(橋本愛さん)によるアイドルユニットやアキの母・春子(小泉今日子さん)が歌ったアイドル歌謡曲風の挿入歌「潮騒のメモリー」も人気を集めている。これらすべての作曲を手がけたのが作曲家の大友良英さんだ。大友さんはこれまでヒットチャートにランクインするような楽曲を手がけてきたわけではないため、「誰?」と思う人もいるかもしれないが、ノイズやフリージャズなど実験音楽シーンを代表する音楽家で、サウンドトラックの制作については20年以上のキャリアがある。そんな大友さんに「あまちゃん」の楽曲制作の裏側を聞いた。(毎日新聞デジタル)

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 ◇OPテーマはワイワイとシンプルに

 人気を集めているオープニングテーマは、スカのリズムをベースに、祭りや民謡などで使われるチャンチキという打楽器を使用して日本土着の音楽を取り入れつつ、明るいサウンドに仕上がっている。大友さんは同曲について「ある種のミクスチャーミュージックです。いろいろな人(演奏家)がいて、ワイワイやる音楽を基本にしたいと考えた」と説明し、「ドレミファソラシドの音階で始まるし、面倒なことは一切していないんですよ。シンプルにしようした。それと、見ている人がいろいろな記憶を刺激されるようにしたかった。サビには70~80年代の歌謡曲の典型的なコード進行を使っていて、見ている人は『何かの曲に似ている』となりますよね」と話す。

 オープニングテーマは、5月25日付の着うたランキングとレコチョクランキングのシングル部門でともに首位に輝くなどヒットを記録している。大友さんは「ヒットするとは予想していなかった。自分の手を離れて広がっていくものを作ったのかな?と思ってます。不思議な感じですね。ライブには、いつも僕の音楽を聴いてくれている層じゃない人も来てくれていますし」と喜んでいる。

 ◇作曲はやりたい放題

 朝ドラは、子どもからお年寄りまで幅広い層に支持されてきた歴史のあるドラマ枠であることはいわずもがなだ。大友さんは、そんな朝ドラの音楽を担当することについて「朝ドラは見ていただける人が多いので、朝から『ギャー』って(ノイズを)やるのもなんなので、考えてはいるけど、やりたい放題ですよ。アバンギャルドな音楽をやっているときよりも自由にやっています」と話すように、制作に対して特別に意識したことはなかったようだ。

 これまでの大友さんの音楽は、マニアックなジャンルのファンを中心に支持を集めていることもあり、朝ドラのイメージとは結びつきにくい。大友さんは、自身のキャリアについて「アバンギャルドな世界の人間だと思われがちだけど、劇伴のキャリアが20年以上あるし、並行してやっている。それにコメディーやカンフー映画が好きなんですよ。どうしてもアバンギャルドって暗いイメージで見られがちですが、実際はアバンギャルドの中でも遊びまくっていて、だからコメディーやカンフー映画と似ているんです」と話す。

 「あまちゃん」の音楽には大友さんの言葉のように“遊び”にあふれている。ジミ・ヘンドリックスの楽曲のパロディー「地味で変で微妙」に加え、英国出身の実験音楽家のフレッド・フリスさんらが所属するバンド「マサカー」の楽曲の音列を利用した楽曲があったり、突然、ギターのフィードバックノイズが流れるなど“大友さんらしさ”も魅力で、大友さんは「ボツになると思ったものが、よく使われる傾向があるんですよ」とうれしそうに話す。

 サウンドトラックに実験的なサウンドが使われることは珍しいわけではなく、過去には武満徹さんらがラジオや映画、ドラマのために実験的手法で作曲してきた歴史がある。大友さんは「昔はああいう人(武満さんら)がドラマ用に、そこそこ変な音楽を作っていた。一般の人には分からない……と使われなくなったけど、それは上から目線だし、失礼だと思うんですよね。分かる分からないじゃなくて、作り手だったら『分からせろよ!』という気概がある。(朝ドラのスタッフは)みんなすごいよ。『やってやるぞ!』という感じがすごくあるので」と今回の“実験”に込めた思いを語る。

 ◇「潮騒のメモリー」制作秘話 今後はアイドルチューンも

 オープニングテーマとともに人気を集めているのが「潮騒のメモリー」だ。どこか懐かしいメロディーや脚本家の宮藤官九郎さんが手がけた過去のヒット曲を引用した歌詞が印象的な同曲には、作曲者として大友さんとともに「Sachiko M」さんの名前がクレジットされている。Sachiko Mさんはサイン波を使った前衛的なパフォーマンスを繰り広げる音楽家で、大友さんは“意外な共作”の裏側を「20年近く一緒に仕事をしているけど、メロディーを作るとは思っていなかった。一番びっくりしたのは俺だよ。メロディーを何パターンも作って悩んでいるときに、(Sachiko Mさんが)サラサラと歌ってできたんです」と明かす。

 さらに、24日にスタートする東京編に登場するアイドルグループ「アメ横女学園芸能コース」が歌うアイドルチューン「暦の上ではディセンバー」の作曲も大友さんやSachiko Mさん、江藤直子さん、高井康生さんの4人で担当。大友さんは「アイドルチューンを作りたいなんて普段は思いませんが、求められれば出てくる。普段より自由になれる感じで、自分が予想もしなかったものが出てくる」と楽しみながら作曲しているようだ。また、東京編の音楽については「雰囲気をガラッと変えないといけないけど、別のドラマになってはいけない。そこで、演奏メンバーを代えました。メンバーが代わると同じ曲でもガラッと変わるので」と話す。

 「あまちゃん」のサントラ制作では、多様な音楽を求められているようだが、「中華料理作ってくれといわれて、『今日は和食しか作りたくない!』というワガママなアーティストではない。アーティストではなくて職人かも? 誰かに求められて作るのが好きなんですよ」と話す大友さん。作曲や録音は現在も進行中で「6月末か7月頭までに9割5分が終わりそうですね。最後は300曲くらいになりそう。他の(朝ドラの)場合は100曲前後らしいんですけどね。『あまちゃん』は音楽劇みたいなところがあるので、量が多くなるんですね」と笑顔で話していた。

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