クリント・イーストウッドさんが監督、主演した1992年の映画を、渡辺謙さん主演で、「悪人」(2010年)や「フラガール」(06年)で知られる李相日監督がリメークした「許されざる者」が13日から全国公開された。オリジナルでジーン・ハックマンさんが演じた役を佐藤浩市さん、モーガン・フリーマンさんが演じた役を柄本明さん、さらにジェームズ・ウールベットさんの役を柳楽優弥さんが演じ、厳寒の北海道を舞台に濃厚な人間ドラマがつづられていく。
ウナギノボリ
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幕末の世に大勢の藩士を斬り“人斬り十兵衛”と恐れられた釜田十兵衛(渡辺さん)は、今は蝦夷地へ逃れ、畑を耕しながら2人の幼子と暮らしていた。そんな彼のところへかつての仲間、馬場金吾(柄本さん)が賞金稼ぎの話を持ってくる。子どもたちの生活を思い、誘いに乗った十兵衛。途中、沢田五郎(柳楽さん)というアイヌの若者が加わり、3人は目的地の鷲路を目指す。その鷲路の宿場町では、初代戸長兼警察署長の大石一蔵(佐藤さん)が絶対的な権力をふるっていた……という展開。
舞台が北海道で、アイヌが関わってくる以外はオリジナルの流れをほぼ踏襲している。そういった展開に戸惑う一方で、オリジナルが持つテーマの普遍性ゆえに舞台を置き換えても話は十分通用すると最初から見抜いた李監督の鋭い洞察力と感性に感嘆させられる。俳優たちも見事にハマっており、渡辺さんはまねたわけではないだろうが、後ろ姿や所作、顔のしわ一本一本に至るまでイーストウッドさんと重なって見え、金吾役の柄本さんも、一蔵役の佐藤さんも、五郎役の柳楽さんもみな違和感なく溶け込み、憎いほど「日本版 許されざる者」という一つの枠の中にはまっている。
オリジナルは、どこかユーモアとファンタジーをたたえていたが、今作はそういったものが一切なく痛々しさが漂う。だがそれがむしろ人間が背負った“業”を強く意識させ、雪深い北海道を舞台にしたことも奏功した。13日から丸の内ピカデリー(東京都千代田区)ほか全国で公開。(りんたいこ/毎日新聞デジタル)
<プロフィル>
りん・たいこ=教育雑誌、編集プロダクションをへてフリーのライターに。映画にまつわる仕事を中心に活動中。大好きな映画はいまだに「ビッグ・ウェンズデー」(78年)と「恋におちて」(84年)。
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