「白雪姫」を下敷きに、グリム童話のさまざまな要素を取り入れ、天才闘牛士の少女の数奇な運命をモノクロ&サイレントで描いたスペイン映画「ブランカニエベス」が公開中だ。本国のアカデミー賞と呼ばれるゴヤ賞で最多10部門を制覇し、主要な国際映画祭で50部門以上で受賞。フラメンコや郷愁を誘うスペイン音楽が全編を彩る。グリム童話とスペイン文化の融合が、これまでに見たことのないような面白さを生み出している。
ウナギノボリ
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1920年代、スペイン南部。人気闘牛士アントニオ・ビヤルタ(ダニエル・ヒメネス・カチョさん)は、闘牛場で多くの観衆と身重の妻が見守る中、牛に襲われてしまう。妻は娘を産み落とすと同時に死ぬ。けがから回復したビヤルタは、妻の死にショックを受けて、我が子を置き去りにして再婚。娘のカルメンシータ(ソフィア・オリアさん)は、祖母の愛情を受けて美しい少女に成長し、父と継母の元に引き取られ、父の手ほどきで闘牛士になる夢を抱く。しかし、継母の魔の手がさらに成長したカルメン(マカレナ・ガルシアさん)に伸び……という展開。
影絵のような美しいモノクローム映像の中、おとぎ話が繰り広げられる。運命に翻弄されるヒロインのカルメンは継母に殺されかけて、過去を思い出せない。そんな中、道中で出会った小人たちが彼女につけた愛称が「ブランカニエベス」(スペイン語で白雪姫の意)だった。白雪姫を題材にした強いヒロインというのはこれまでもあったが、今作の「白雪姫」であるカルメンは、闘牛士であった父親のDNAを引き継いだという個性が光る。母の死と引き換えにこの世に生を受けたカルメン。行く先々に細い糸がピンと張っているような、不吉な運命が常につきまとい、緊張感が漂う。「ヒロインがどうなるのか」と心がはやり、闘牛という題材と血湧き肉躍る音楽のリズムのお陰で、なおさら助長される。小人たちとの関係性も個性的だ。ラストの物悲しさがいつまでも脳裏に焼きついて離れない。7日から新宿武蔵野館(東京都新宿区)ほか全国で順次公開中。(キョーコ/毎日新聞デジタル)
<プロフィル>
キョーコ=出版社・新聞社勤務後、闘病をきっかけに、単館映画館通いの20代を思い出して、映画を見まくろうと決心。映画紹介や人物インタビューを中心にライターとして活動中。趣味は散歩と街猫をなでること。
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