テレビ質問状:ノンフィクションW「大空祐飛 宝塚男役トップスターから女優へ」男役から女優へ

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 WOWOWは、毎週金曜午後10時に「ノンフィクションW」枠を設け、オリジナルのドキュメンタリー番組を放送中だ。この枠では、見る人を新しい世界へと誘うフルハイビジョンの“ノンフィクションエンターテインメント”番組をWOWOWプライムで毎週、テーマを変えて放送している。12月20日に放送される「大空祐飛 宝塚男役トップスターから女優へ」を担当したWOWOW制作部の浦田健司プロデューサーに番組の魅力を聞いた。

ウナギノボリ

 −−番組の概要と魅力は?

 番組では昨年7月に宝塚を退団した元男役トップスターの大空祐飛さんが、今年10月に公演された蜷川幸雄さん演出の舞台「唐版 滝の白糸」で女優デビューするまでを密着しているのですが、これまでに決して見ることができなかった、タカラジェンヌにとって人生で一度しか訪れない男役から女優へ生まれ変わる瞬間はとても感動的です。15歳で音楽学校に入学し、すべてをささげて身につけてきた伝統の芸が新たな形に進化するとき、彼女は20年間の宝塚人生に別れを告げ、トップスターというアイデンティティーも捨てなければいけませんでした。しかし、蜷川幸雄さんのけいこ場で日々、大空さんは女優として芝居の核心に迫り、素晴らしい俳優へと変化を遂げたのです。番組では大空祐飛さんに宝塚退団直後から舞台初日の舞台裏まで密着し、その瞬間をとらえました。彼女が変化の苦痛と向き合い、乗り越えるまでの日々は宝塚ファンならずとも見逃せません。

 −−今回のテーマを取り上げたきっかけと理由は?

 宝塚歌劇は来年、創立100周年を迎えるのですが、これほどまで長年にわたってファンたちを魅了してきたその伝統の芸は一体どのような役者たちが受け継いできているのか? タカラジェンヌたちはどのようなアプローチで役を体に落とし込むのか? これまで誰も見ることができなかったこれらの疑問から企画がスタートしました。夢の世界・宝塚から一転、唐十郎さんのアングラ傑作戯曲で人間味をさらけ出すリアルな演技を身につけていく大空さんの姿は本当にプロフェッショナルそのものでした。それはすべて宝塚で学んだこと。宝塚ではトップであろうとなかろうと全員が本気で役を演じ切る。本当に素晴らしい役者たちの集まりなのだと改めて感じました。

 −−制作中、一番に心がけたことは?

 唐十郎さんの戯曲は本当に難解で、この舞台でドキュメント番組を制作するのならば、しっかりと理解する必要がありました。大空祐飛さんが一体どこで苦しんでいるのか? 蜷川さんはなぜこのせりふでダメ出しをしているのか? すべてを把握するためには過去の作品から勉強しなければならず、安保闘争が激しさを増していった1960~70年代の変革を求める若者たちが生んだアングラ演劇から調べました。今作「唐版 滝の白糸」もまさに“戦う劇場”といわれた激しい時代に生み出された傑作戯曲でしたから……。

 −−番組を作る上でうれしかったこと、逆に大変だったエピソードは?

 宝塚と蜷川幸雄、日本を代表する二つの美しい伝統芸術が共存するけいこ場に連日、カメラを持って入れたことは本当に貴重なことでした。全面的に協力をしてくださった東急文化村の皆さん、蜷川幸雄さん、共演者の皆さん、関係スタッフの皆さんには心から感謝しております。

 −−番組の見どころを教えてください。

 退団後、男役トップスターの大半の方は、キャリアを生かせるミュージカルの世界で女優へと転身していくのですが、大空祐飛さんは1作目から安全策をとることなく、作・唐十郎さん、演出・蜷川幸雄さんという、タカラジェンヌにとっては危険な境界線を越えることを決めました。舞台初日を迎えるまで決してひるむことなく、現実と向き合い、正面切って戦っている姿には、きっと皆さんにも何かが伝わるはずです。人生がガラリと変わる1日なんてそうそう来るものではありませんから、そんな大切な日々に、この番組は密着しています。

 −−視聴者へ一言お願いします。

 きっと大空祐飛さんの舞台を見に行きたくなるはずです。そして、唐十郎さんの、蜷川幸雄さんの、シアターコクーンの演劇を見に行きたくなるはずです。もちろん宝塚にも行きたくなると思います。本当に素晴らしい人たちの集まりでした。良質な演劇はどこからやってくるのか? もしかしたらその答えがこの番組から見えてくるかもしれません。ぜひご覧ください。

 WOWOW 制作部 プロデューサー 浦田健司

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